落馬して思う事
乗馬をしていて、落馬はつきものだと思っている。私は特段、運動神経が良いわけでもないからそう思うし、大学生の頃、ウィンドサーフィンをやっていたからかもしれない。ウィンドサーフィンをしていて沈(チンと読む。要するにうまく乗れずに海に落ちること)を経験しないなんてことはあり得なかった。まぁ海に落ちるから、そこまで痛くはない。ただ冬に沈をすると寒くてたまらないので(海水の方が温かいので、海の中はまだ良いのだが、上がってきた後、凍える)、落ちたくないからこそ、上手くなりたいと心底思って練習をする、気づくと落ちなくなっていると言う実体験が役立っているのかもしれない。
骨折
愛馬に出会い、乗るようになって今7年目だと思う。軽井沢の乗馬クラブで乗っていた日々より、浦河で乗っている年月の方が長くなった。軽井沢で生まれて初めて乗馬をし、週末だけ、とにかく馬に乗れるようになるためのレッスンを受けていたが、落馬を数回経験し、1回は打ちどころが悪くて、足のくるぶしにひびが入り、全治するまで1か月以上かかった経験をした。その時は、松葉杖をついて仕事に行った(クライアントにものすごく驚かれ、気を使わせてしまったが、仕事に支障はなかった)。インストラクターが見守る中での出来事だったし、すぐには気づかずにそのままその後も乗った位で、すごい怖い経験をしたとは思わなかった。自分が変なことをしたから落ちたという認識。馬への理解が不足してたんだなぁと今振り返ってもそう思う。
障害飛越
まもなく恒例の町民乗馬大会があるので、障害飛越の練習をしている。私も愛馬も障害を飛ぶようになって、ちょうど3年目に入ったところ。1年目は駈歩もうまくできないのに、クロスに挑戦し、一度練習中に落馬したとき、放馬してしまった。
浦河には夏と秋の年に2回、乗馬大会がある。昨年の秋と今年の夏に低障害に出たので、今回ステップアップして、もう少し高い障害を飛びたいのだが、秋の大会はなぜか低障害(60㎝)の次が90㎝(夏だと80㎝というクラスがある)なので、90㎝に出るために日々練習している。
一番上の写真はおそらく80㎝くらいのオクサーを飛んでいる私と愛馬の写真。愛馬は体の使い方も上達して、うまく飛べるのだが、90㎝を正規のスピードで飛ぶとなると、障害と障害の間の歩数が少なくなって(馬の一完歩が大きくなって)、スピードが増し、私の体の方が付いていかれない。愛馬はうまく飛んでくれ、障害にぶつかったり、落としたりはしないのだが、着地点で私がスピードより若干遅れ気味で、馬上でのバランスがあやしい(つまり鐙に左右均等に体重がのっていない)ため、一昨日はうまく飛んだ後にバランスを崩し、しがみついて落ちまいと耐えてみたりしたけど、何度か落馬した。最後は慣れて、落ちなくなったが、ふと気づいたことがある。
以前だったら、私が落ちたら、愛馬は私をおいて走っていってしまった。が、一昨日の練習では何度落ちても、たとえ手綱を放してしまっていても、落ちたところでピタッと止まって待っていてくれた。足をジタバタすることもないから、踏まれる心配も全くなかった。すぐに指導者の方に足をあげてもらって、練習を続けることができた。
なんだそれだけって思うかもしれないけど、私にとっては愛馬が私を受け入れてくれていると感じた瞬間で、心の底から嬉しく、幸せを感じた。
馬からのサインは見逃しがちで、人間の方が気づけるかどうかが重要なのだと思う。馬と通じ合えているか、馬が受け入れてくれているか、それを感じ取れたら、乗馬をする喜びは倍増すると思う。たとえば、駈歩が初めてできたとき、もちろん嬉しかったけれど、それは私だけが嬉しい感じ。馬にとって駈歩はごく自然な動きで、駈歩ができないのは上に乗っている人の問題だからねぇ。
私が愛馬に乗っていて、もっともっと嬉しいと感じたのは、たとえば止まって指導者の話を聞いているとき、愛馬が首を急に下に思いっきり下げたり、上下にぶんぶん振ったり(つまり、止まるまでの手綱の持ち方がちょっと嫌だと思っているサインなのだと思う)、もじもじ動き回ったりせずに、耳も私の方に向けたりしながら、とにかく動かずに本当に静止してくれるようになったとき(まるで一緒に指導者の話を聞いているようで、ペアを組んでいるって思えた)。もちろん、うまい人が乗れば、いつだってそうなるのだろうけど、私のような下手な乗り方でも、愛馬が私が乗っていることを受け入れてくれていると感じた瞬間で、ものすごくうれしかった。今の乗り方、嫌じゃないよと馬が私に反応を返してくれている、そう思えた。だからもっともっと自分がどう乗っているかを考え、観察し、自分ができる努力はできる限りしようと思った。裏返して言えば、その時点まで、自分のことに精一杯で、馬のサインをたくさん見逃し、全く気付いていなかったのだと思う。今もたくさん見逃し、うっかり見落としていると思うし、技量的に馬に負担のない乗り方ができないことも多々あるが、1つでも2つでも気づけるようになりたい。
もちろん、落馬をしないに越したことはないし、新しい事に挑戦しない限り、落馬することはそうそうないように思う。私は愛馬とこれからも少しずつ、それまでできなかったことができるような挑戦を続けたい。だから落馬することもあると思う。落馬に備えて、私の方でできることはないかと考え、実は1年以上前から、上手に落馬できるための柔軟体操(?)を毎日欠かさず行っている。その努力が報われたのか、一昨日指導者から、落馬のしかたは満点と言われたほど。誇れた話ではないけれど、落馬してもケガをすることなく、翌日も通常通り乗れる、これこそ私が求めることであり、私が望む安全だなぁと思うのです。
<参考までに>
下は今夏のオリンピック障害飛越予選のコースプランだが、丸で囲んだSpeedというのがある。これが正規のスピード。オリンピックともなると、1分間に400mというものすごいスピードで障害を飛びつつ、コースを駈け抜けないと、規定タイムを超えてしまい、タイムオーバーの減点がついてしまう。(余談だが、オリンピックの障害飛越の競技で一番高いのは165㎝! そしてオリンピックの総合馬術競技クロスカントリーのスピードは1分間に570m。)
障害飛越では競技場の広さによって、スピードが定められており、2500㎡以上の競技場では375m/分、2500㎡以下の競技場では350m/分というのが一般的な速さ。上を見てわかるように、障害と障害の間の距離も開示されるので、そうなると、その距離を正規のスピードであれば、馬の一完歩から、何歩かを割り出す事ができ、そこを意識して練習をする。障害を落とさず飛び、なおかつ規定タイム内にフィニッシュすることが求められるからだ。