仔馬の離乳
馬の一生の中で、生まれてから母馬と一緒に過ごす6か月が馬にとって一番幸せな時ではないかと思ったりする(馬に確認したわけではないからわからないけど)。上の写真は先月9月に撮ったもの。安心しきって寝ている仔馬を見守りつつ草を食む母馬。自分の顔が緩んでいるのを認識しながら写真に収めた。
ついに離乳
幸せが続かないのは人も馬も同じ(?そんな悲観的な話ではないが、紆余曲折があるものよね)。やがて母馬と別れる時が来る。母馬はたいてい次の子がお腹の中にいて、次の出産に備える。生まれて来る前の数か月に急に大きくなると聞いた。母乳をあげながらでは必要な栄養が蓄えられないという意味もあってなのか、仔馬が生後6か月くらいで離乳をし、母馬と仔馬は離れた放牧地にそれぞれ放牧され、お互いの姿は見えないし、離れた分場で声さえ聞こえないというのがほとんどのようだ。
映画にも離乳のシーン
映画「優駿ORACION」を観た人なら、狂ったように泣き叫ぶ馬のシーンを覚えているかもしれない。かつては声が聞こえる他の厩に移動しただけだったのかもしれない。いつ、どのようにやるか、生産牧場にとっては重要な決断だし、必死に嘶く母の声も子の声も、心に訴えて来るものがあり、聞いている人間は切ないというか、耐えるんだよ、と心の中で呟きながら、こちらも必死に耐える感じではないかと思う。
作戦というか戦略
生産牧場にとって、出産ももちろんだが、この離乳はケガをしたりと結構危険が伴い、色々と試して、毎年試行錯誤している。今では分場を離れたところに持って、母馬たちもしくは仔馬たちを放牧することが多いようだ。1頭大人をいれて、寮母のような役割をしてもらうところもあるが、そう期待しても、実際にその役割を果たすとは限らない。
隣の牧場は、今年は慣れ親しんだ放牧地に仔馬3頭を残す作戦。世話係なのか、1頭、今年子供を産まなかった大人の馬と一緒に放牧している。昨年は仔馬が1頭だけだったので、道を挟んで反対側の放牧地に仔馬を放し(見ていてこちらが心細くなった)、母親たちがいつもの放牧地に残った。本当に毎年、どこの牧場も色々と考えて離乳を断行する。
隣の牧場は昨日がその初日だったのだが、訳が分からず、厩舎の方へ走って行っては、お母さーんと嘶く仔馬たち。諦めて草を食べ始めるものの、またお母さーんと探す、走り回る、嘶くの繰り返し。
それでもずっと3組の親子で過ごしてきて、仔馬たちはいわば友達だから、1頭が嘶くと、そばへ飛んで行って、何も言わないけど、大丈夫だよとでも励ましあっているかのようだった。
愛馬がお世話になっている牧場も生産牧場だが、今年はまだ1歳の馬がわずかな頭数残っているため、離乳が遅れていると言っていた。離乳の仔馬の嘶く声に反応して、愛馬も頻繁に嘶くこの時期。最初の年は、そんなこと知らないから、愛馬が嘶くたびにびくびくしたことを思い出す。今年はそういうものだと予想がつくから、愛馬が嘶いても、大丈夫ではないかと思う。
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