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産後の恨みは一生!?

SNSで話題になっている産後の恨み

先日、Xを見ていたら「産後の恨み」についての投稿が目に入った。
妊娠中や産後にパートナーに対して感じた恨みは、子どもが20歳になっても消えていないというものだった。

お腹の中に命を宿し、10ヶ月の間元気に生まれてくるように守りながら生活をするって、想像を絶する大変さがある。ましてや、初めての妊娠だったり、つわりがひどかったりしたら、その大変さは×何倍にもなる。いや、どんな妊娠も比べることではなくてどれも大変。

そして、産後はホルモンが乱れまくった自分に戸惑いながら、一人では何もできない赤ちゃんのお世話を寝不足の中続けていく日々。
「なんじゃこれ~!」となってしまうのは当然。

そんなときこそ頼りにしているパートナーが、悠々と自分のことしか考えていない行動をとったり、横でグーグー寝ていたら恨んでしまう気持ちはわかる。

妊娠から出産まで大変の連続

Xで、産後の恨みは一生という投稿を見て、自分の出産のことを思い出した。

私は、妊娠がわかる前からつわりがはじまり、安定期に入るまでは文字通り、トイレに住んでいるような生活をしていた。
便座を閉めたトイレにつっぷし、吐き気が来たら吐く。
部屋に戻っていたら間に合わないので、1日のほとんどをトイレで過ごした。
ようやく安定期に入ったと思ったら、今度は切迫早産と診断され、張り止めを飲みながらほぼ寝て過ごす日々。
36歳での初産。ハイリスク妊婦ということで、予定日の3ヵ月前には実家に戻り、里帰り出産に備えた。

予定日までまだ2週間近く残っている、ある朝。
トイレに起きたら、あきらかに尿ではないものが流れ出た。
「ん?」と思いながらも、1度ベットに横になり2度寝をしようとしたけど、気になってスマホで、「破水」「どんなかんじ?」と検索。

調べてみると、先ほど起きたことが検索結果に当てはまった。
時間はまだ朝の5時半。寝ている母の部屋まで行き、
「破水したみたいなんだけど……」と声をかけると、当時60代の母が漫画のようにベットから飛び起きた。
「何分間隔? 痛みは? どのくらい?」
ものすごい勢いで質問をしながら、着替えをしている。

「痛み?」
聞かれて初めて気づいたけど、その時点で陣痛はなし。
病院に電話をして、夫に「破水しました」とLINEをし、入院バッグを持って病院へ。

破水しているけど、陣痛はなし。
そのまま入院になり、陣痛待ちという状態に。

待てど暮らせど来ない陣痛。
陣痛より先に東京から夫が到着。

「明日まで様子を見ましょう」
破水したらすぐ生まれるんじゃないんだ! と驚きながら、夫は私の実家へ帰っていった。

翌日は、朝から2時間おきに陣痛誘発のお薬を飲んでみようということに。
ドキドキしながら薬を飲むも、まーったく陣痛はこない。
暇すぎて夫と売店に行ったら、「破水しているのに歩かないで!」と看護師さんに怒られた。

破水から2日目も陣痛がこないまま終了。この日も夫は私の実家へ。

そして、破水から3日目。朝10時から陣痛誘発の点滴開始。
「今日も来なかったりして」なんて話していたのに、点滴を打ったら30分もしないうちにお腹が痛み出した。
さらに30分後には、「これが陣痛!? 信じられないくらい痛いんだけど!」
ものすごい痛みに襲われる。
届けられたお昼ごはんなんて食べられる気がしないくらい痛い。
そこへ担当医が登場。
モニターを見るなり夫に、
「赤ちゃんの心拍が落ちているので、このまま緊急帝王切開をします。書類にサインをお願いします」
と言った。

へ? と思っているうちに、看護師さんたちがきて、手術の準備がスタート。
「この陣痛は? 止めてもらえます?」
「無理です」
みたいな会話をしながら、あれよあれよという間に手術室へ。

わぁおう! 帝王切開! 
天井のライトにうっすら自分の腹部が写り、「赤ちゃんが出てくるところが見えるかも!」と思っていたら、気づいた看護師さんに目隠しされた。

「赤ちゃん出すよ~」
と言われ、下半身を引っ張られるような感覚があった後、顔の横に登場した娘。
「はい、出たよ~!」と言われた瞬間、妊娠発覚前から続いていた吐き気が消えた。
「気落ち悪くない! 先生! 私、気持ち悪くない!」
私が産後最初に発した言葉はこれだった。

そして、娘を見て、「ちっちゃ!」という声が出た。2460gで生まれてきた娘は、これまで見てきたどの赤ちゃんよりも小さかった。けど、泣き声は誰よりも一丁前だった。

出産プランに、カンガルーケアとか、赤ちゃんの体に名前を書くのは夫が良いとかいろいろ書いたけど、それは全部諦めましょうという感じで手術室から出た。
ゴロゴロとベットで運ばれていると、心配そうな顔をした夫が近づいてきた。
「おつかれ、おつかれ。ありがとう」
たしか、夫はあの時そう言って、私の肩をポンポンとしてくれた。
出会って10年くらい経つけど、こんな顔初めて見たなぁと思った。

産後の感謝も一生

産後の恨みは一生と言うけども、産後の感謝も一生だと私は思う。
夫は、産後10日ほどで東京へ戻っていった。

産後は、ホルモンが乱れまくる。普段から泣き虫な私がより泣き虫に。
眠っている娘を見て、かわいい~と思うだけで、ボロボロ涙が出てくるなんてすごい。
「私ってこんなタイプだっけ?」と思うような感情の変化に、自分で戸惑いながらも、初めての育児の日々を夫と離れて過ごしていた。

ある日、夜中の授乳をしながら、「ナイティナインのオールナイトニッポン」を聞いていた。
同じ時期に、矢部っちにも赤ちゃんが誕生していて、その日の放送では、奥さんの出産に立ち合ったときのことを話していた。

「奥さんのことすごいなぁと思ったね。かなわんなって思ったよ。ほんまに」
みたいなことを矢部っちが言ったとき、突然私の涙腺が崩壊してボロボロ涙が出てきた。

「私は、普通に産めなかったなぁ。夫に立ち合ってもらって、娘が産まれるところを見せてあげることができなかったな……」
そんな気持ちになってしまった。
矢部っちが悪いとかではない。あくまで、産後のホルモンがそうさせただけなんだけど、立ち合いをして奥さんをすごいなと思ったという話を聞いたら、自分はダメだっていう気持ちになってしまった。

泣きながらミルクをあげたあと、私はその思いを夫にLINEした。
ラジオでそういう話を聞いたら、自分がすごくダメなお母さんに感じてしまったと。
「ちゃんと生んであげられなかった」と。
真夜中なのに、送った瞬間既読がついたと思ったら、夫からすぐに返信がきた。

「そんなことないよ。俺は、お前が妊娠してからこれまで頑張ってきた姿をずっと見てて、絶対こいつにはかなわないなって思ってる。すごいと思ってるよ」

その返信を見た瞬間、”自然分娩で生めなかった”という私の中の後悔は浄化された。
あのとき、自分の気持ちを伝えて、それに対して夫が思っていることを伝えてくれたことで、私はその後一度も生み方について後ろめたさを抱くことがなかった。

帝王切開も立派なお産。大切なのは、赤ちゃんが元気に生まれてくることであって、それ以外のことは取るに足らないことだ。
生み方にこだわることに意味はない。
今になればそう思える。けど、産後のホルモンバランスの乱れは、本当にいろいろなことを負として捉えてしまうのだ。

だからこそ、この時期のパートナーの発言や行動は、一生ものになってしまうのだろう。

夫は決してお喋りなタイプではない。
大切なことだって言葉にしないことの方が多い。
でも、ここぞ! というときは、ビシッと決める。
夫婦になって13年。
私は、ここぞというときの夫の一言に何度も救われてきたからこそ、こうして今も、仲良く夫婦として生活ができているんだと思う。

過去最高に長くなってしまった。
ここまで読んでくれる人はいるのだろうか……(笑)。



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