本当にあったよくわからない話「パブロンの袋」
私が上京してきたのは30前後のころで、その少し前ぐらいは、おもにコミティアという同人イベントに出るために年に何度か東京に行く、という生活をしていました。そのころに始まったことです。
コミティアは国際展示場で開かれるわけですが、ある時期から、そこに行くたびになぜか必ずパブロンの袋が落ちているのを見かけるようになりました。パブロンの袋というのはパブロンゴールドの粉薬が入っている金色の袋です。
その時書いたマンガでパブロンをネタにしたりしたことがあったので、おもしろい偶然だなーと思ってました。別に人が集まるイベントで風邪薬の袋が落ちてるぐらい変ではない。たとえそれが毎回であっても。
それから上京するんですが、その後も日常でたびたびパブロンの袋が落ちてるのを見かけるようになりました。たとえばちょっと買い物に新宿行ったら落ちてるとか、ネットで知り合った人に会ったら落ちてるとか、バイトというかお手伝い的なことで人に呼ばれて行ったら落ちてるとか。
東京ってやたらとパブロンの袋が落ちてんなあ。と思ってたんですが、そのへんで「なんか偶然にしても落ちてすぎだろ」などと思うようになりました。回数は数えてないんですけど、20回とかは行くはずです。行く先々でパブロンの袋が落ちてるので、意味わかんないなーと。
まあようするに偶然行く先々でパブロンの袋が落ちてたってだけの話で超常的なことはまったくないんですが、これを人に話すと「いやそんなに落ちてないよ。見たことない」って言われるんで、なんなんだって思ってました。
あと「そういうことはあるけど、あんまりそういうものに意味を見いだすとおかしくなるから気をつけたほうがいい」と言われて「なるほどそうだな」と思って、気にしないようにしていました。
この話の極めつけは、潮干狩りでのことです。そのころ私は貝をとるのにハマっていました。海岸だとけっこうどこでも牡蠣はとれるので、わたしは時期になると潮干狩りに行き、とれないなって時は岩に張り付いた牡蠣をはいで持って帰って料理とかしてたんですが、そんなあるときのこと。岩にくっついて塊になった牡蠣に目をつけ、その中の大きめの牡蠣をはがしたとき。
あったんですよ。パブロンの袋が。
牡蠣の間にどこかから流れ着いたパブロンの袋がはさまってたんですよ。この時はちょっとゾッとして「なんかあるんじゃないか」と思いましたが、なにしろパブロンの袋ですからね。意味わかんないよね。なんかあるとしても、意味が分からない。
そんなこともあってから、しばらくすると、今度はパブロン以外の風邪薬の袋をやたら見かけるようになりました。それまでは袋が落ちてると必ずパブロンゴールドだったんですが、今度はそれ以外の風邪薬の袋が落ちてるのをやたら見かけるようになりました。
それがつづいてさらにしばらくすると、あまりそういうことも起きなくなりました。潮が引くみたいに風邪薬の袋が落ちてるのを見かけなくなりました。前はちょっと電車に乗るような遠出をするとどっかに落ちてたのに。
意味がわかりませんが、とにかくわたしの「パブロン期」はそんな形で終わりを迎えました。意味が分からないでしょう? わたしも本当にわかりません。でも実話なんです。完全に実話。なんか意味があったんですかねこれって。なにか似たような経験とか、意味がわかる方はぜひ教えてください。