就労継続支援A型事業所ドンマイについて
昨日は、株式会社ドンマイの10周年を記念し、就労支援についてのセミナーを開催しました。
継続就労支援事業所A型ドンマイの管理者と、卒業生の元メンバーさんのお話の後、障碍者雇用を行っている企業(Hightideさん)のスタッフさん、ドンマイの統括責任者である黒岩でディスカッションを行いました。
卒業生のお話は、どのように自分の問題を受容し、一般雇用への歩みを進めていったかという内容でしたが、決して簡単なものではなかったことが自分のことのように感じられ、こちらも涙が出そうな程、感動するものでした。
心の問題から、就労がうまくいかない場合、時間通りに勤務できない自分、思った通りに作業を進められない自分と向き合わないといけません。一般就労であれば、そこに理解を示してもらえず責められたり、自分自身を強く責めたりして、より一層心の問題が悪化し、就労に対して回避的になることもあります。
一方、就労支援では、思い通りにいかない弱い自分を、スタッフから理解され支えられるという体験をしながら、少しずつ「仕事でうまくいかない自分」という体験を「できた」という体験で上書きしていきます。その歩みの中で、自分の問題と向き合い、自分を十分に理解し、自分に合う働き方を見つけられると、一般就労に近づいていきます。
昨日のお話の中で、元メンバーさんからの「手取り足取りではなく、責任を持たされる体験がよかった」、「障碍者だからと言って配慮されることが当たり前になってしまうと社会の中で気持ちよく働いていけない」という言葉が印象的でした。
私が診察している小児患者さんたちの中には、小学生の時から支援学級だったり、不登校で自分のペースでの登校を行ったりなど、配慮された中で過ごしている子が少なくありません。もちろん配慮は必要ですが、今のこの配慮が永遠に続くものだという感覚を持ってしまうと、一歩踏み出せないし、配慮のない現実に直面したとき、社会に出られなくなってしまいます。過度なプレッシャーにならない程度に、ちょっとできないかもしれないけれど、フォローできることはあえて失敗させつつ、責任を持たせていく経験を幼少期からしていくことが重要だと、改めて思った次第です。
就労継続支援A型事業所ドンマイは「生き直し」の場だと考えていますが、スタッフの立場としては、子育てとも共通する部分があると感じました。
今後、ドンマイはIPS (個別就労支援プログラム)を採用する方針です。IPSについて過去の文献報告をみると、就労率の高さに驚かされます。ただ一方で、心が成長するのには時間がかかるものです。背中を押すタイミングの見極めには留意する必要がありますし、担当者はより一層、メンバーさんと向き合い理解を深めなければいけない難しい役割だとも思います。
昨日は雨の中、会場に来て下さった参加者の方々と、しばし名刺交換や情報交換をする時間にも恵まれました。
ドンマイは精神分析の理念を背景に、支援を行っている事業所です。ドンマイだからこその学びを発信することで、地域に貢献できる部分もあるかもしれません。10周年を迎え、今後の会社としての方針を掲げたセミナーで、地域の一員としての役割を考える時間となりました。
ご参加下さった皆様、どうもありがとうございました。
今後もどうぞ宜しくお願い致します。