レアジョブの経営成績に思う オンライン語学学習ビジネスも厳しい?
私が初めてオンライン英会話でお世話になったサービスが「レアジョブ」だった。結構、馬の合う先生方がいらして、1年ほど楽しんだ。最近はAI英会話アプリにすっかりお世話になって、オンライン英会話から遠ざかっていた。すると、先月、レアジョブの株価ストップ安のニュースがあり、少し驚いた。
投資家の心のうちは推測は難しいが、数字を追いかけることで、レアジョブの今の姿が見えてくるだろうと思い、なんちゃって経営分析を試みた。
1 連結損益およびセグメント別売上比率
2023年度より、ALT派遣事業を開始したことにより、売上は約倍増の100億越え。本業の儲けを示す営業利益率は6.8%と決して悪くない。しかし、純利益がマイナスとなってしまった。これは、損益計算表の特別損失の項目内にある「減損損失」が主な要因だ。特に、2021年に連結子会社化し、2023年に吸収合併した「株式会社資格スクエア」の資格サービス事業の業績が当初計画に満たないことによるのれんの減損処理(624百万)が大きい。資格取得といえば、「スタディング」も有名だが、レアジョブも新たな事業を開始したものの、なかなか厳しいのですね。
しかし特別損失は1年限りのもの。ALT派遣事業を伸ばすことができたなら、企業全体としては喜ばしいはずだ・・・と思う。
2 祖業が伸びていない?
しかし、セグメント別に成績を見ると、祖業である「リスキリング事業」の成長鈍化という新たな課題が見えてくる。株式会社矢野経済研究所の調査によれば、オンライン語学学習市場は右肩上がりに拡大している。2018年比で倍増以上の規模拡大である。一方、レアジョブは2021年度をピークに、その後、売上はダウントレンドにある。2024年3月期決算短信にも「ユーザー数は硬直的」と記載があるのだ。
それゆえ、営業利益が出ている今のうちから、リスキリング事業の一環として、英会話コーチング事業である「スマートメソッドコース®」だったり、オンライン英会話にもAIアプリを補助的に加えたり、はたまた先ほどの「資格スクエア」といった新たな試みを始めているのだろう。また、株式会社ボーダーリンクの買収による、文教事業への事業拡大加速も成長の種を探そうとする試みに違いない。
3 「オンライン英会話」をめぐる環境はますます厳しくなる?
オンライン語学学習サービスは今後どうなるのか。今のところ、拡大を続けているようだが、競合や代替サービスも開発され、厳しくなっていくのではないか・・・。
上記の図にあるように競合は既に多い。また、自社とその業界を巡る外部環境を分析するフレームワーク「5フォース分析」で考えてみても、オンライン語学学習サービスに、今さら新規参入する企業もさすがにいないと思うが、chatGPTを代表とするAIの発達により英会話アプリも精度が上がり、従来のオンライン英会話、いや、それだけでなく語学ビジネスの多くの部分が駆逐され、パラダイムが変わる可能性さえ感じる。また、それだけ、顧客の交渉力も高くなり、選ばれるのも大変だ。また、サプライヤーの交渉力から見ても、海外の人件費の高騰、そこに輪を加えた円安の進行も企業の損益に重くのしかかる。
また、もしかしたら、レアジョブにおけるオンライン語学学習(リスキリング事業)を始めとした事業ポートフォリオの位置づけは、以下のようになっているのかもしれないねえ。リスキリング事業は経営の効率化を徹底的に図り、利益を生み出す。その利益を新事業へつぎ込むという形。。。まあ、優秀な経営陣が揃っていそうなレアジョブさん、がんばってくれい!