インティメート・ボランティア 14


今日も志穂は、星野のマンションを訪ねている。このごろは、星野のところで、午後のほとんどをすごし、ときどき夕食も二人で食べるようになっていた。志穂が作ることもあったし、ヘルパーさんが作りおきしてくれているものを温めて食べることもあった。

二人でテレビを並んで見ているときに、志穂は、「星野さんは、セックスはできるの?」と今まで気になったが、遠慮して聞かなかったことを何気ないようすで聞いてみた。

「セックスもいろんな方法があるからね。方法を問わなかったらイエスだよ。何なら試してみるかい?」ちょっと沈黙のあと、笑いながらいった。

志穂は、そうですね、と曖昧なようすでいった。それを、肯定ととった星野は、手を伸ばしてきた。ミヤケよりもすべすべとした、生活感を感じさせない大きな手だ。その手は、まるで苦労を知らないように見えた。

「今日はやめときます」

志穂の口から頭で考えるよりも早く言葉が出てきた。星野は、そう、と軽くいうと、別に気を悪くしたようすでもなく、また並んでテレビを見始めた。しかし、先ほどまで流れた二人の間の空気と今の空気は、明らかに微妙に変化して、志穂は敏感にちょっとだけ重くなった雰囲気を痛いほど感じた。

誘いを拒んだわけを、そっと志穂は考えた。なぜミヤケとのように、気楽にできないだろうか。ただの行いなのに、何を自分は躊躇しているのだろう。

ふっと頭をかすめたのは、何か根本的なものが自分が星野と違うということだった。しかし、それが何なのかが、わからなかった。

志穂が帰るとき、星野はいつもと違う真剣な眼差しでいった。

「志穂ちゃんが気持ちの整理がつくまで待っているよ」

その言葉は、志穂の心に重くおいかぶさり、そのとき初めてミヤケの関係を後ろめたく感じた。





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