インティメート・ボランティア 20
履歴書を送付してから1カ月たったが、来るのは不採用の通知ばかりだった。負けずに次の週に、また10通程度出したが結果は同じで、不採用通知の山が溜まるばかりだった。
志穂は、以前の同僚のコネでも使おうかと迷ったが、止めることにした。単純に借りを人に作りたくなかった。会社で何かあったら、それだけでも惑わしいのに、コネで就職したらそれこそ逃げ場所がなくなってしまう。
明日が週末で、星野のマンションに行くことになっていることだけが、自分にとって多少心が浮き立つことだった。
今になっては、星野がただ一人のボランティア先になり、ますますボランティアという感覚は薄れてきた。あいかわらず星野とは、茶のみ友だちの関係から発展せず、あれ以来、星野の方も自分から、志穂に対して真面目な話に持っていこうとはしなかった。
敏感な男だから、ミヤケのことを知らなくても、何か感じとったたのかもしれないと志穂は心の中で思った。
ミヤケがこの世からいなくなって、志穂に影響したことがいくつかあった。
ひとつは、セックスの相手がいなくなったことだ。それは、志穂にとって意外と重要なことではなかった。あればあれでいいし、なければなくても構わないものだった。他の女のことはわからないが、自分は、淡白といわれるタイプなのだろう。
もうひとつは、ミヤケとのセックスで自分の存在価値を確かめていたが、それができなくなったことだ。こちらの方が志穂にとって、深刻なことだった。
満足のはけ口のようなものが、ごっそりとなくなってしまった。そんな状況なので、星野からの、ときどき発せられる誉め事は、志穂にとって貴重だった。ミヤケのときほどの満足感は得られないが、ちょっとした温かい言葉を志穂は、むさぼるよう要求した。
しかし、それでも物足りなくなると、志穂は自分から星野に対して、結婚話をほのめかした。少しほのめかすと、星野は話題を違う方向にもっていこうとする。タイミングよく自分が話を進めなかったので、自尊心を傷つけたかもしれないと志穂は思った。
それでも自分に対して好意は感じ取られるので、志穂は、駆け引きを楽しむように、ときおり星野にしなだれ、時間をすごした。
しかし、二人に、身体を合わせる機会がやってこなかった。星野も別段そういうそぶりも見せないし、志穂もどうでもいいことだと感じていた。もし、単純な肉体の快楽を感じたければ、星野とは違う相手で、その日限りのセックスをしてもいいと思っていたが、今のところその必要性も感じていなかった。