インティメート・ボランティア 6
ボランティアを始めて2カ月後に結局、志穂は2つのボランティア先に落ち着いた。星野とミヤケのところだ。近ごろは、毎週末、2人の家を訪ねている。
星野のところでは話し相手だけをしているが、ミヤケとはあるきっかけで、それだけでなくなった。
ミヤケはまだ65歳だが、寝たきりの生活をしていた。30年連れ添った妻に数年前に先立たれ、ミヤケもその介護つかれで病に倒れていた。まだらであるが、認知症も入っている。
ミヤケとのインティメートなボランティアのきっかけは、ある日、突然始まった。
いつものようにミヤケの家を訪問し、彼が寝ている6畳間の和室で、志穂は、日本茶を淹れて飲ませようとしていた。
ミヤケは、夏でも冷房を嫌い、扇風機をつけるので、真夏の和室は、蒸し返すような熱さだった。志穂は、前回訪問したときに、顔が蒸気するぐらいに汗だくになったので、その日は薄手のキャミソールと膝たけのスカートを着ていた。
いつもは生気のないミヤケの顔が、その日は何となく違った。
お茶を飲み終え、再び横たわったミヤケに志穂が掛け蒲団を直そうとした。ミヤケの上体に近づくと、遠慮がちながら、ぬっとしなびた手が伸びてきた。そして、意外な力強さで志穂の大きめの胸を鷲づかみした。
志穂は、突然の出来事に驚いてミヤケの顔を見た。
いつもの生気のない蒼白い顔が、ほのかに赤みをさしている。口元も緩んでかすかに笑みを浮かべているようだ。表情のない顔しか見たことがなかったので、微妙な気持ちながら気持ちがざわりと動いた。
半分死んだような男が、自分の女の部分に対して興味を持つことで、表情がこんなに変わるのに驚く。
相手が抵抗しないのを見てとると、ミヤケは胸をつかんでいた手を、ベージュのキャミソールの下から滑り込ませ、ブラのなかにまで、じわりと手を入れた。そればかりか、ゆっくりと志穂の胸を弄くりはじめた。
「ミヤケさん、こんなことしたらダメですよ」
さすがにここまでされると、志穂はあきれて、やんわりと叱りつけ、ミヤケのいくらか火照った手を、薄い掛け蒲団のなかにもどした。
次の瞬間には、ミヤケは、まるで何もなかったように、またいつもの蒼白い、ちょっとボケが入っているようなようすに戻っていた。
志穂は、それが照れを隠すためのミヤケの演技かどうかわからなかった。