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寝る前にはアメコミを読もう!!
0.小噺
突然だが、皆さんには「体質」というものはあるだろうか。例えば、
・牛乳を飲むと必ずお腹を壊す
・季節の変わり目には体調を崩す
・ご馳走を見ると人差し指が動く
といったものだ。最後のはちょっと趣旨が違くないか?と思わなくもないが。
かくいう私にも「体質」というものがある。それは”寝つきが悪い”というものだ。かれこれ二十年以上生きてきたが、デフォルトで寝つきが悪い。聞くところによると、布団に入ってから30分以上寝つけないと、医学的な名前がつくらしい。私も大体それくらいかけてる気がする。
とはいえ、寝つきが良かろうが悪かろうが、睡眠が大事なのは変わりない。何とかならんもんか…、と考えて編み出したのが、寝る前の読書週間だ。普通だが、これくらいしか思いつかなかった。よくわかんないし。そして、こういう時に読むのは大体一回読んだ本である。だって面白くて読み込んじゃったら本末転倒じゃん?本だけに。とにかく睡眠導入には、「いい感じに内容を忘れていて」、「そんなに長くない」本を斜め読みするのがちょうどいいのである。
そんなこんなで、「むかし一度読んだ本を少し読んでから寝る」というのが私の最近のナイトルーティンになっている。そしてそんな入眠のための読書のレパートリーに、最近アメコミが入り込んできた。
自慢するわけではないが、うちの本棚の半分くらいは多分アメコミである。腐ってもアメコミファンだからな。うちのアメコミストックはなんだかんだ種類が多く、そもそもマンガなので読みやすい。そしてなにより、いい感じに内容を忘れた本がそれなりにあるのだ。睡眠導入の本にはもってこいなのである。しかし、ただ読んでおしまいにしてはもったいない。
というわけで、今回は備忘録がてら、寝る前に読むのにおすすめなアメコミを簡単に紹介していく。
1.シルバーサーファー:ブラック
この時代に党派性なんて持ち出そうものなら、ネットの片隅で永遠にレスバすることになりそうなものだ。しかしあえて表明しておくと、自分はDCの党派である。ただそんなに拘りは強くないし、面白けりゃなんでもいいので普通にマーベルのコミックも読むし、映画も見る。そしてそんな中でも結構好きなキャラがシルバーサーファーである。
シルバーサーファーというと、もとはプラネットイーター:ギャラクタスの先触れとして数々の星の滅亡を見届け、役目を降りてからはその罪を背負いながら銀河を駆け巡る高潔な漢として知られるキャラだ。オタクはやっぱりこういう影を抱えた高潔なキャラクターが好きだよね。わかるわかる。
そして、そんなシルバーサーファーに触れられる数少ない邦訳がこの本だ。しかも、ヴェノム:ザ・ラストダンスで最近銀幕デビューした(と言えるのだろうか…)キング・イン・ブラックこと邪神:ヌルが今作のヴィランときた。地味にタイムリーな作品である。
この本のいいところは、なんといってもアーティストのトラッド・ムーアだ。アメコマーならだれもがひれ伏すレジェンドこと、ジャック・カービーのエッセンスを感じさせつつも、現代アート風の独自のタッチが見ごたえ十分。そしてこの独特の雰囲気が、主役のシルバー・サーファー、異形の神・ヌル、若かりし頃のエゴ・ザ・リビングプラネットたちが紡ぐスペースオペラと実にマッチしている。パラパラと見るだけでも読み応えのある作品になっているのでお勧めだ。しかもコンパクトにまとまってて良い。睡眠導入という点では、ここも大事な要素なのだ。
2.ネメシス
内容を知ってる人からすれば「寝る前に読む本じゃなくね?」と思うかもしれないが、できればぐっと飲みこんでほしい。俺もそう思う。これに関しては「ページ数が少なめで読みやすい」というだけでピックアップした。スマン。
ライターを見ればわかるが、これは『キック・アス』なんかで知られるマーク・ミラーの作品だ(噂では最近ちょっとやばい方向に向かってるらしいが…)。一時期実写化の企画が立ち上がるも(正気か?)実現せず、最近続編が出たという。まだ読んでないけど。
主役は見てのとおりこのネメシスってやつ。超人的な肉体と抜群の頭脳、莫大な富をフル活用して大暴れするスーパーヴィラン。さながらスペックはバットマン、頭脳はジョーカーといったところ。その説明だとバットマン・フ―ラフズじゃね?と思うかもしれないが、それもぐっと飲みこんでほしい。俺の貧相な語彙で一番うまく説明できる言い回しがこれしか浮かばなかったし、そもそもアメコミのキャラクターのレパートリーが豊富すぎるのが悪い。なので俺のせいじゃない。
そうはさておきこのネメシス、とにかくやることがえげつない。名探偵コナンの劇場版ばりの爆発をポンポン起こすし、こいつが動くと数百人単位で死人が出る。とにかくおっかねえやつだ。そしてそんなやばいやつに目をつけられてしまったとある警官が、本作の実質的な狂言回しにあたる。俺の貧相な語彙を駆使するとゴードン本部長みたいな人だ。
色々書いたが、基本的にはネメシスと警官の騙しあいがストーリーの軸なので構造はシンプルだ。時折えげつない所業が入り込むけど。そしてその上でラストにはちょっとしたどんでん返しがあったり、かなり面白い。おすすめである。
3.JLA:逆転世界
これもまた面白い。NEW52!世代としてはクライム・シンジケートがメインを張ったイベントというと、どうしてもフォーエバー・イービルを浮かべてしまう。これはその源流ともいうべき作品だろうか。なのに極めてコンパクトにまとまっていて面白い。寝る前に読むにはちょうど良いボリュームで、さすがはモリソンといったところか(そんなつもりで書いてないだろ)。
物語の始まりはこう。墜落寸前の飛行機を間一髪で救出したJLAは、乗客の内臓が左右逆に配置され、持っていた紙幣もどこか見慣れないデザインであることに気づく。そう、この飛行機は善悪が反転した鏡の世界からこの世界に迷い込んだのであり、とある人物は既にその対存在と入れ替わっていたのだ…!というもの。
とまあ、あらすじだけだとちょっとFRINGEっぽさもあり、昨今はやりのマルチバースものにありがちな展開の臭いがするが、(刊行はこちらの方が先なので、ある意味逆転した指摘である)ここで終わらないのがモリソンの手腕。ひとひねりあるちょっとビターなオチが絶妙で、なかなか面白い作品なのである。
ちなみにクライム・シンジケートの中だったら私はオウルマンがイチオシ。蝙蝠を食らうフクロウを模したコスチュームに身を包み、犯罪都市:ゴッサムを裏で操る男なのだが、スーパーウーマン(悪のワンダーウーマン)に手を出してウルトラマン(悪のスーパーマン)ににらまれたり、実は中身はブルース・ウェインではなかったり、とバットマンの対存在で終わらせるには惜しいくらい深みのあるキャラクター。作中終盤では、正史世界を訪れた仲間たちがヒャッハーする裏でとある場所を訪れていたり…と、元ネタと同様独自の立ち回りで反転世界に深みを生み出してくれる絶妙なキャラクターなのである。ちなみにオウルマンが大活躍する話として、ダークナイツ・デスメタル:マルチバースズエンド(仮)があるのだが、これは邦訳がないので原書をあたってほしい。バットマンのパチモンが幅を利かせるイベントで、「それは俺の役割だろうが!」と爪痕を残すオウルマンの雄姿は必見だ。
4.おわりに
とまぁとりとめもなくならべてみたが、こんな感じである。大体こういう記事って「面白いから読んでね!」ってテイで出すもんだろうが、三分の二は絶版手前(Amazonで簡単に手に入る範囲だが)というラインナップなんだからどうしようもない。許してくれ。備忘録みたいなもんだし。
最後に近況を報告すると、最近自分は現行タイトルのAbsolute BatmanとAbsolute Supermanを読み始めた。
タキオンさん、最近買ったコミックだよ pic.twitter.com/dShylgPd2M
— SS.マローン (@DC_mrMalone) December 6, 2024
これはこれでまた面白い。久々にオンゴーイングを読む楽しみをかみしめているところである。この辺は気が向いたときに感想をまとめるかもしれないし、まとめないかもしれない。
ともあれ、みんな、
コミックを読もう!
おわり