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【小説】 桃の女 ①

・あらすじ
大学生の桃は、いかにも大学生らしい日常を送る。そんな中で、大切な友達杏奈との関係に変化が訪れる。

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杏奈が笑った。
その様子はいつも私に、花が開くのを思い起こさせる。きゅっと閉じた静かな状態が解かれ、美しい色と、その中身がぱっと開かれる。花の本質って一体どこなのだろうか。
「桃ってほんと、人の恋バナ好きだよね」
杏奈が笑いながら言う。高校の同級生が奇妙な恋愛をしているらしい、という話をした。
中学・高校が一緒の私たちは、大学生になっても割と会えている。上京して3年目の夏、ようやく東京は知っている街になってきた。
今日の杏奈も華やかで整った顔立ちに黒く艶やかなストレート、素材の良い白Tシャツにデニムのミニスカートを合わせていた。いつも通り顔も髪型も服装もパーフェクトだ。
「桃はさ、自分の恋バナはないわけ。最近あんま聞いてないけど」
「あー、ないね。残念ながら。彼氏ほしいなあ」
 私は言い慣れた言葉と共に、最後の一口のチョコケーキを口に運ぶ。私が真剣に彼氏を求めているわけではないということは杏奈もわかっているはずだ。はっきりとした理由はないが、なんとなく今は一人でいい。
カフェを出たが、夏の夕方はまだ明るかった。杏奈は夜にレストランでのバイトがあるというので、解散することになった。親しい友達と、明るいうちにバイバイするのは寂しい。私のそんな気持ちは杏奈に言ったことはあるが、杏奈はそれを覚えていないかのようにあっさりと言う。
「じゃあ、またね」
開きかけの花の微笑みを湛えながら





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