名前のない想い
少し心が疲れた日。
そんなとき、私を包んでくれる懐かしい温もり。
君は、本当に不思議な人だった。
出会いは、最悪。
すかした態度が気に入らなくて、出会ったその日に大喧嘩をしたはずなのに、気が付けばいつも私の隣には君がいた。
それからずっと
何をするわけでも、何を話すわけでもない。
君は、ただ私の隣にいた。
よくあるドラマと違うのは、君の笑った顔はいつもにやついていたし、話すことは意味不明。どんなに一緒に時間を過ごしても、何を考えてるのかさっぱりわからなかった。もちろん、優しい言葉なんて1つもかけてくれなかったけど、つらいときや悲しいときはいつも、不思議と隣に君がいた。
どうして君があんなに、私の隣にいてくれたのかは今でもわからない。
けど君はいつも、私の心を包んでくれた。
薄暗い夜に静かに輝く月明かりのように。その光に温度はないはずなのに、それは不思議と、どんな光よりも温かかった。
君と離れてずいぶん時間が経つけれど、私は今でも時々、あの温もりを思い出す。
きっとそれは、これからも変わらない。
恋でも、愛でもない。
名前のない、けれど大切な大切な想い出。
雨の日の君との思い出なんて、ちっとも覚えていないのに、
不思議と雨が降ると思い出す、そんな想い出。
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