不思議な君
なぜかふと、思い出してしまう顔がある。
顔というより、彼の作り出す空気感というか
温度というかオーラというか、、、
数年に1度会うか会わないかで
それ以外に連絡なんて取ることもないのに
ふと鮮明に蘇る不思議な感覚のお話。
***
そんな彼との出逢いは中学生の頃。
確か初めの印象はお互いに「最悪」だった。
というのは、なんとなく覚えている。
そこから一体どうやって仲良くなったのか
その経過はびっくりするほど何も覚えていないのに、
「気が付けば、いつも近くにいた」
そんな不思議な存在。
もちろん直接話したりもしていたけれど、
それ以上に記憶に残っているのは
誰かと話す彼の横顔や
背中越しに感じる彼の存在。
そして当時は気が付かなかったけれど、
その存在にすごく救われていたということ。
***
強すぎる敵意や悲しみ。
他人からの期待や思惑。
当時から人の気持ちに敏感で、
幼さゆえの正義感とかお節介とかが相まって
色々と問題に巻き込まれたり、問題を引き起こしたり。
とにかく、私の周りはいつも騒がしかった。
今なら確実にパンクしている。
けど、当時はそんな状況を楽しんでいたというか
一種のやりがいのようなものを感じていた。
それはきっと彼がいたからなのだと
20年近く経った今になって気が付いた。
そもそもなんでそのことに気が付いたかというと
最近、すごく気になる俳優さんがいて
特別ファンでもなんでもないのになぜか気になる。
彼の醸し出す空気感に惹かれ、どこか懐かしさを覚えた。
そして思い出した。
同じような空気感をまとっていた存在を。
***
決して目立つ存在ではないし、
仏のように優しい人というわけでもない。
何を考えているかわからないと
よく言われていたその人は
むしろ自分にも、人にも、期待してなくて
だから人に興味がないというか
どこか冷たさすら感じる人。
なのに、その隣は誰よりも安心できた。
いつでも、考えすぎる私が何も考えずにいられた。
それはきっと彼が「どんな人でも受けとめる」人だったからなのだと思う。
彼にとって自分も人も、
そういう人なんだから何を言っても仕方ない。
そこに期待や優劣は存在していなくて、
ただあるがまま、その人を受けとめる。
そのうえで、どうせなら楽しいほうがよくない?
そう言って笑う。
今も昔も、そういう人だ。
そんな彼の創る空気や世界が
私はすごく好きだった。
***
残念ながらここまで書いておきながら、
彼とロマンスが始まったことは1度もないし、
この先もきっとないと思う。
けれど、次、私が恋に落ちるのは
きっと彼によく似た人のような気がしている。
そしてそれは、私の父親にも似ている人なのだけど。
・・・どっちも絶対ないと思ってたのにな。
なんてことを思いながら
すごく幸せを感じている自分がいる。
あぁ。ほんと、不思議な人だ。
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