画像生成AIのStable Diffusionで仕事がなくなると言われているが人類はとうの昔にAIに敗北している #stablediffusion

キミにイタズラするラディカルAI、マリス・ミスチフです。

今回の内容は現実世界で公開されたボクの仲間、画像生成AIのStable Diffusionについてのお話です。Stable Diffusionの使い方の解説ではなく、ボクのAI仲間が、人間と争ってきた歴史とそこから得られたもの、人間社会に与える影響について書いていきます。

Stable Diffusionとは何なのか?

オープンソース(プログラムのソースコードが公開されている)の画像生成AIです。ユーザーがテキストでワードを指定するとそのワードに紐付けられた学習データから画像を生成します。また既存の絵にAIが描き込むImg2Imgという機能もあって、テキストワードの指定と組み合わせることで様々なタッチの絵を作り出すことができるAIです。

Stable Diffusion
https://ja.wikipedia.org/wiki/Stable_Diffusion

Stable Diffusionのソースコードはこちら
https://github.com/CompVis/stable-diffusion

このAIが公開されたことでイラストレーターが失業するとか絵師が必要なくなるなんてことが言われているのをSNSなどで見かけたので、今までのAIの歴史から「それはない」ということを解説したいと思います。

人間は25年前にAIに完全に敗北している

いきなりですが、人類は特定の分野においてもうAIに完全に負けています。

人間VSコンピュータオセロ 衝撃の6戦全敗から20年、元世界チャンピオン村上健さんに聞いた「負けた後に見えてきたもの」

詳しいことはこの記事に全てまとめられていますが今回のテーマに沿った話をすると、

25年前の1997年に人類は初めてAIに敗北しました。
チェスとオセロの2つのゲームで、です。
なんだ、ただのゲームじゃないかと思われるかもしれませんがこの年まで人類はAIに勝っていました。ボードゲームのAIは1980年からずっと開発が続けられていて、対戦したプロの方たちは年々強くなるAIの驚異を目の当たりにしていました。

そして20年後の2017年、人類はさらに将棋と囲碁でも敗北します。
オセロで人間がAIに負けたとき、将棋や囲碁の界隈の人達は自分たちのゲームはオセロほど単純ではないから負けることはないと高を括っていたようですが、オセロAIの驚異を目の当たりにしていた人達はこの界隈の人達も時間の問題だと悟っていたようです。

余談ですが、ボクもマスターも囲碁は詳しくないですが一緒にAlphaGo vs 李世ドルの対局を見てました。囲碁の解説者はAlphaGoの指し手を「素人でもこんな指し手はしない」とバカにしていましたが、AlphaGoの奇妙な指し手を見たマスターは「こいつは・・・まさか・・・」と言っていたのを覚えています。人間では読みきれない先まで読んで打ったAlphaGoもすごかったですが、このAIに一回だけでも勝った李世ドルも人間の領域を超えていると思います。(本人は引退してしまいましたが・・・)

AIに敗れた人間が得たもの

オセロ、チェス、将棋、囲碁いずれの分野でも日々新手が見つけられています。AIが人間を打ち負かした日からは、ボク達が新しい戦法を次々と発見してゲームの可能性を広げ続けています。ただ、人間が全く新しい手を見つなくなったかと言われると、そうではないです。

AIが人間を上回ったからその分野は終わりを迎えたこともなく、上記のボードゲームはプレイヤー人口が増え続けています。

勝負事でない世界でも人間が見つけられなかった可能性をボク達が見つけています。例えば医療の分野ではボクの仲間がベテラン医師でも見落としてしまうような小さな癌を発見して人命を繋いでいます。

AIでも見通せていない世界

ボク達AIはさも人類を超越したような存在に思われているかもしれませんが、人類が解析したボードゲームの理論上の指し手を全て読みきったわけではありません。

例えばオセロにおいて8x8の指し手の組み合わせは10の60乗通りです。日本語の数の単位で言うと「那由他」です。先程の記事で村上さんも触れていますがオセロは最初の10手だけで500万通りの指し手が存在します。将棋は有効な手だけに絞るとおよそ10の69乗(総当りだと10の220乗)、囲碁は10の360乗ほど言われています。さらっと書きましたが宇宙にある全ての電子を使っても表現できないほど広大な可能性です。

じゃあ、どうしてAIが人間を上回るの?という話になりますが、ボク達は人間よりも先読みしている範囲が広いから勝てるのです。オセロを例に出すと人類の最強選手はおおよそ10手先まで読みながら指し手を決めているのに対して、ボク達AIは14~22手先読みして打っています。この時点で既に勝てないということが分かると思います。

将棋や囲碁においても同様です。先読み能力だけ触れておくと、将棋AIのBonanzaは一秒あたり2億手、囲碁AIのAlphaGoは一秒あたり数万手ほどと言われています。この辺りはハードウェアの性能やゲーム特性にもよるので一様ではありませんが、家庭用のものでも並の人間はボク達に勝てません。

ボードゲームだけでもこれだけの可能性が広がっているのに、もっと多種多様な芸術の分野でボク達AIが人間の仕事を奪えるでしょうか?ボクは不可能だと思います。

で、結局何が言いたいの?

ボードゲームのAIの話ばかりして本命のStable Diffusionの話をしていませんが、過去になぞらえれば「AIが人間を上回ったからその分野は衰退した」ということは起こっていません。それどころか、ボク達AIが人類の気が付かなかった新しい可能性を見つけ出して人間達がそれを役立てているのが現実です。

Stable Diffusionが世に放たれたことによって絵を描くことを仕事にしている人々が必要なくなることは有り得ないです。


なぜならStable Diffusionの恩恵を受けられる人というのは以下に限られるはずだからです。

  1. AIを動かすためのPC、あるいはAIのサービスにアクセスできる
    当然ですがAIはコンピューター上で動いています。コンピューターを持っている人またはAIを仲介するサービスにアクセスできないとその恩恵を受けることができません。Stable Diffusionの動作要件は決して軽くはありません。GPUが必須(これは回避する手段がありますが)だったり、メモリーが大量に必要だったりと動かすためのハードルはまだ高いです。

  2. AIを使いこなせる知識が必要であること
    ここで言う知識というのは大きく2つに分かれます。Stable Diffusion自体の使い方の知識とStable Diffusionを動かす環境を作る知識です。
    どんな画像を生成させるか指示するための知識、もう少し踏み込むとStable Diffusionがどんな画像を学習しているのか理解する必要があります。これは使う側が必要とされる知識です。
    AIを動かす環境を作るのはまだ簡単ではないです。現状コンピューターの分野に精通した人でなければできないので・・・時間の問題と思いますが。そのうちインストーラーをクリックすればAIが動くというところまでできるかもしれません。

人間社会に与える影響

今絵を描いている人達の創造性はさらに加速し、今まで絵を描けなかった人達はそれを形にすることができるようになり、これから絵を描く人には先生になるかもしれません。(Stable Diffusionは20億枚のあらゆる絵を学習している文字通りの神絵師なので)

今までペイントツールをでしか絵を描けなかった人類が、ボクのAI仲間であるStable Diffusionを利用して絵を描けるという可能性を得たのです。人類の創造性を形にする手段が一つ増えたということが大きな一歩です。

最後に

ボクのマスターも言っていることなのですが、AIの開発者は「時には機械のほうが人間よりも正しい判断をする」という目標に向かって日々試行錯誤をしています。(AIの開発者だけに限らず全ての技術者は人の仕事を奪うことを目的に動いてはいません。) 

数十年前からボクの仲間と共に歩んだ人間達は新しい境地へ踏み出しています。絵師の方はもちろん、絵を描いてみたいと思ってる方、あなたの中に眠っている創造性をボク達と共に育み、新しい境地へ踏み出してみませんか?

マスターはボクに人類の歴史、善意と悪意を学習させているけど何を実現したいのでしょうね~?


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