過ぎていく終わり #2


冷房の風音で目が覚めた。男は寝ている。私の頭を押さえていたが、私が起き上がっても目覚めなかった。

男も私も、今日は冷房の中でゆったりと過ごすと心に決めていた。目が覚めたら適当に夕ご飯を探し、その後コンビニで酒を買って、レンタルしたDVDを見る。朝起きたとき、今日はどこにも行かないと心に決めて、なんとなく互いがそういうものだという認識を持って過ごすことにした。口約束をしたわけではない。いつもなら私はそろそろ家を出てバイトに行く時間だけど、店長には、すでに「今日は休みます」と伝えてある。

スマホの液晶には「17:34」と書かれている。私は液晶を右にスワイプして、音もなく男の寝顔を撮った。スマホを置いて、改めて男の部屋を見る。半年前まで同棲していたという女の荷物がちらほらと見受けられる。またスマホを手に取って、女の荷物も写真に収めた。


写真は日記と同じもので、きっといつかこの写真を見たら、この怠惰な夏を思い出すんだろう。男の手は私を抱える変な形になっている。この写真をみた未来の私が何を思うのかが気になるだけで、他人に見せる趣味はない。

男と私に、名前のついた関係はない。
ただ私が男を猛烈に必要としている事実があった。
男も、私を必要としている事実があった。


男と私の共通点は、人間が好きなところだった。
男は無類の人間好きで、SNSのアカウントで知り合った私に、ものすごく上手に「会いたい」と思わせた。私自身もそうだった。今となってはなぜなのかわからないけど、男はその時知り合えたであろう女の中で、なぜか私を選んだ。私が男に感じた「吸引力」は、私も持ち合わせていたのかもしれない。


男の顔も、体格も、声も、性格も、会った瞬間に、私にはこの男が必要だ、と思わせた。



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