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過ぎていく終わり

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#小説

過ぎていく終わり #2

冷房の風音で目が覚めた。男は寝ている。私の頭を押さえていたが、私が起き上がっても目覚めなかった。

男も私も、今日は冷房の中でゆったりと過ごすと心に決めていた。目が覚めたら適当に夕ご飯を探し、その後コンビニで酒を買って、レンタルしたDVDを見る。朝起きたとき、今日はどこにも行かないと心に決めて、なんとなく互いがそういうものだという認識を持って過ごすことにした。口約束をしたわけではない。いつもなら私

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過ぎていく終わり。#1

過ぎていく終わり。#1

出会ってから、ずっと終わっていくのに、出会った瞬間はいつも気づくことができない。

まだまだ、関係が一生続くような気がしていた。いつまでも。終わりを予感したり、想像したことは何度もあった。まさか、自分の手で終わりを招き入れるとは思わなかった。目の前にいる男が、私と離れることを悲しんで涙することなんて、ほんの10分前ですら想像できなかった。
目の前にいる男は、初めて見る泣き顔を隠すことなく、私の服を

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