「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第72回 共産主義は時代遅れなのか?
2022年、日本共産党は結党100周年を迎えました。これは凄いことです。1922年と言えば、まだ大正時代です。そう考えると日本共産党は、大正デモクラシーから昭和初期の軍国主義、さらに高度経済成長期、そしてバブル経済とその崩壊などの時代を生き抜いてきたことになります。確かに日本共産党は現存する国政政党の中で最も長い歴史を有しており、世界的に見ても、政党としてかなり長い歴史を有する部類に属するに違いありません。
一方でこの間に、共産主義を取り巻く環境は劇的に変化してきました。戦後は東西冷戦の期間が長く続きましたが、ベルリンの壁崩壊やソ連の解体により、共産主義の勢いは一気に衰えました。その後は旧共産圏の国々が次々と民主化・資本主義化したことから、現在において共産主義は風前の灯火の如く衰えたように見えます。
しかしながら、最近は再び共産主義的な考え方が幅を利かすようになっています。例えば「脱資本主義」や「脱成長」を謳う学者も現れ、彼らがメディアでも重宝されています。これらの背景にあるのが、「グローバリズムが社会を駄目にした」という考えです。この考えに賛同する人々は世界中で増えており、それに伴って共産主義についても再評価する人々が増えている状況です。それで一度立ち止まって、私たち一人一人が共産主義の現況と未来について再考するのは良いことと言えます。
ではどうすればその実態が分かりますか?この点で歴史は重要です。日本の歴史を調べれば、共産主義がどのようにして日本に浸透したのか、そしてその功罪にはどのようなものがあるのかを理解できます。これにより、過去の共産主義の歩みと共に、現在の日本社会が抱える問題も同時に明らかになるかもしれません。
一方で日本の歴史だけでは不十分です。海外の情報も重要です。日本において、政治形態に共産主義が取り入れられた時代は存在しませんが、海外においては過去に多くの国が共産主義という政治形態を試みました。しかし今に至るまでに、それらの国々のほとんどは共産主義を放棄しており、それを今も政策として取り入れている国はごく僅かです。この点で、それぞれの国の経済は、どのように発展もしくは衰退してきたのでしょうか。こういった点を調べるならば、共産主義の持つ魅力と脆弱性を理解できるでしょう。それ故に海外についても調べる事は大切です。
ただ歴史や統計からは理解できない分野もあります。それは当事者たちの「生の声」です。共産主義に共感する人達は、総じて正義感が強く、社会の不条理に強い憤りを抱いているものです。これ自体は良いことですが、逆にそれが軋轢の原因にもなります。現に共産主義に対してアレルギー反応を示す人は、共産主義に共感する人よりも遥かに多いのが現実です。ただ仮に批判しあっても、そこからは何も生まれません。相互理解というものは、お互いの話に耳を傾けて初めて生まれるものです。ですからそれぞれの「生の声」に耳を傾けることは重要と言えます。
この点で私は当然ながら、共産主義者ではありません。とはいえ身内には日本共産党の党員がおり、彼らの考え方の良い面も悪い面も、小さい頃から観察してきました。一方で私が今住むマレーシアにおいては、歴史的背景から共産主義は非合法であり、思想を流布すれば2年以下の懲役および約15万円以下の罰金が科されます。国民の間における忌避感情も極めて強く、日本のような共産主義を掲げる国政政党が現存する国とは対照的な状況が見られます。このように私は日本においても海外においても、共産主義と向き合う人たちの「生の声」を聞いてきましたので、この問題について語る上で確かに有利な立場にいます。
それで今日は「共産主義は時代遅れなのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の歴史を通して、日本における共産主義の隆盛を振り返ります。次に海外の統計を通して、過去に共産主義を取り入れた国や、また現在もそれを国是とする国を対比し、その特性に迫ります。最後に私自身の海外における会社経営の経験も踏まえながら、共産主義の今後の在り方について考察を述べたいと思います。
ご留意いただきたい点として、私自身は政治的に中立の立場であり、共産主義を賞賛も批判もしていません。むしろこのコラムは、共産主義の特に「経済的な側面」に焦点を当てたものであり、この情報を通して、読者の皆様の一人一人にとって、考える材料を提供したいと願っています。現在の政治体制に疑問をお持ちの皆様には、特にお読みいただきたい内容です。長文になりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
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ちゃん社長のコンテナ・海運業界・マレーシアの裏話。
香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…
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