「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第1回 日本は本当に貧しい国になってしまったのか
「日本は貧しい国になってしまった」。この様な論調の話を最近良く耳にします。実際に給料は上がらない、ワーキングプアは多い、それなのに税金は上がる、確かにテレビや新聞でもその様な報道は多くなっていますし、それこそSNSには、こういった情報が溢れかえっています。
しかし立ち止まって考えてみて下さい。もしも日本が貧しい国になってしまったのだとしたなら、「何と比較して」貧しい国になったのでしょうか?それは過去の日本でしょうか?それとも海外との比較でしょうか?また日本が貧しくなる間に、海外は豊かになったのでしょうか?それとも同じく海外も貧しくなってきており、それと比較して日本の貧しくなるスピードが速いというだけなのでしょうか?
こういった点を論理立てて話せる人は余り多くはありません。なぜならメディアの殆どの情報は、「貧しくなった」というのを個人の主観で述べているに過ぎないからです。もしかすると「貧しくなった」という感覚自体、その人の思い過ごしなのかもしれません。
ではどうすれば正しい理解を得る事ができるのでしょうか?この点で統計は雄弁です。日本の過去の統計を調べるなら、いつから日本人の所得が停滞し始めたのかを理解できます。そしてそれを精査すれば、その契機となった出来事も知る事ができるかもしれません。
更に日本の統計だけを見ても余り意味がありません。世界の統計を見る必要があります。何故なら仮に日本の所得が上がっていないとしても、世界の所得も同じ様に上昇していないなら、それは大きな問題とはなりません。一方で日本の所得が上がらない中で世界の所得も上がっているなら、そこには何か深刻な問題があるはずです。世界の統計を調べるなら、それを推察できるかもしれません。
ただ統計では見えて来ない面もあります。例えば「所得が上がっていく実感」というのは、なかなか統計だけでは分からないものです。つまり所得が上がっていく中で物価も上がれば、それは裕福な生活ができる様になる事を意味する訳ではありません。特に新興国においては賃金上昇率と共に物価上昇率も非常に高いため、そこで暮らす人々の金銭感覚や苦悩というものは、統計からでは見えて来ないものです。
この点で当方は経済学者ではありませんが、複数の国にまたがる会社を経営しており、仕事上非常に多くの国の方々と取引があります。例えばマレーシア人・香港人・中国人・シンガポール人・インド人・イギリス人・オーストラリア人・パキスタン人・バングラデシュ人の方々とは、毎週打ち合わせを行っており、こういった国々の方々の「生の声」を聞くことができる立場にあります。この生の声を通して、先進国・新興国共に物価が上がっていく中で彼らが対峙している問題についても頻繁に耳にしています。
それで今日は「日本は本当に貧しい国になってしまったのか」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の統計を通して、過去の日本人の所得がどの様に推移してきたかを分析します。次にIMFやBloomberg社の最新の世界の統計を通して、先進国や新興国の近年の所得の傾向を分析していきたいと思います。更に私自身の海外での会社経営での経験で得た「生の声」を通して、今後の世界経済の展望と共に、日本人の給与所得か今後どうなっていくのかに関して、考察を書いていきたいと思います。長文ですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。
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ちゃん社長のコンテナ・海運業界・マレーシアの裏話。
香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…
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