「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第34回 富裕層は一体何を考えているのか?
日本は30年にわたり賃金の停滞が続いています。一方で税や社会保障費の負担額は増え続けてきた為、実質的な手取り賃金は逆に減少を続けてきました。その間にも諸外国は経済成長を続けてきましたので、今や日本の平均賃金はOECD加盟国の中でも下位に沈むようになっています。これは本当に残念な傾向です。
この状況に対して、「日本は格差が拡大しており、それを是正すべき」と叫ぶ政治家や有識者も少なくありません。実際に非正規雇用者の多くは年収200万円台であり、彼らの人数も増え続けています。これは確かに憂慮すべき事態です。しかし一方で「格差が拡大している」と主張するからには、収入の下限の人達だけに注目しても余り意味がありません。収入の上限の位置にいる人達、つまり富裕層にも同じく注目する必要があります。なぜなら富裕層の経済的影響力は非常に大きく、それが収入の下限にいる低所得者層にも影響を及ぼすからです。
ではどうすれば富裕層の実態を掴む事ができますか?この点で統計は有用です。統計を調べれば、日本の富裕層について正しい理解を得る事ができます。例えば彼らの人数はどのように推移してきたでしょうか?またその資産額はどう変化してきましたか?統計はこういった質問に対する答えを明らかにしてくれます。統計は過去における富裕層の歩みと共に、将来の彼らの行く先についても教えてくれるかもしれません。
しかし日本の統計だけを見ても余り意味がありません。世界の統計に注目する必要があります。この「一部の富裕層が社会の大部分の富を抑えてしまう」という傾向は全世界に見られる傾向であり、アメリカの様な先進国は勿論の事、東南アジアのような新興国でも同様の傾向が強く見られます。そういった国の統計を精査する事で、世界の中での日本の正確な立ち位置が見えてくるでしょう。
ただ統計だけでは見えて来ない分野があります。それは実際の富裕層たちの「生の声」です。例えば富裕層は生活の中で何に重きを置いていますか?彼らは資産をどのように用いていますか?こういった質問に対する答えというものは、当然ながら統計からは見えてきません。富裕層の生の声に耳を傾けて初めて理解できるものです。特に富裕層は低所得者とは異なり、人数も少なく、普通に生活をしている低所得者層であれば殆ど接点がありません。更に富裕層は目立つ仕方で自分の意見を主張する事を嫌います。特に日本ではそういう事をすれば、一般市民からの妬みの対象になる事を彼ら自身良く理解しているからです。ですから富裕層の生の声に意識して耳を傾ける事は非常に重要と言えます。
この点で私は前職において、世界の富裕層を相手に仕事を行ってきました。コンテナリースというビジネスは、富裕層の税金の繰り延べスキームとして知られています。特に前職の顧客の殆どは金融資産が日本円で10億円以上あるような超富裕層でした。私は彼らとの付き合いを通して、彼らの考えに耳を傾け、彼らが人生の中で何を大切にしているかを毎日の様に見てきました。ですから富裕層というテーマを考察する上で、私は確かに有利な立場にいます。
それで今日は「富裕層は一体何を考えているのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の統計を通して、日本の富裕層の人数やその資産額がこれまでどのように推移してきたかを振り返ります。次に世界の統計を通して、日本の富裕層の特異性について迫ります。更に私自身の海外での経験を踏まえながら、日本の富裕層に対する税制の改善点などについて私見を述べていきたいと思います。長文になりますが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。
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ちゃん社長のコンテナ・海運業界・マレーシアの裏話。
香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…
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