「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第25回 日本はミャンマーとどう付き合うべきなのか?
2021年2月にミャンマーでクーデターが勃発してから、早いもので1年以上が経過しました。実権を握る事に成功した軍部は、「ミャンマー経済は正常化している」とアピールしていますが、現実はそれとは程遠い状況になっています。加えて国連のまとめによれば、クーデターが生じてから2022年4月の間に、軍の弾圧の影響で亡くなった方は1750人に上り、60万人以上が国内外に避難していると言われています。
確かに日本はこれまでミャンマーと親密な関係を築いてきました。それは1988年に軍事政権が樹立される前もそうでしたし、そこから2011年まで続いた軍事政権中もそうでした。更にミャンマーが民主化されて以降はその関係がより強固になり、これまで多額のODAも注ぎ込まれてきました。確かに日本とミャンマーは経済的にも固い絆で結ばれており、日本以上にミャンマーを援助してきた国は他にないと言っても過言ではないでしょう。
一方でロシアとウクライナの戦争が起きて以降、日本におけるミャンマーに関する報道は明らかに下火になっています。ウクライナからは大勢の難民が日本に来て、彼らには生活費が支給される一方で、ミャンマーからの難民が注目されることは殆どありません。ロヒンギャ問題もスルーされています。本来ならば日本という国は、ウクライナよりもミャンマーの方が遥かに歴史的な繋がりも深いはずですが、このような差が見られるのも紛れもない事実と言えます。
このような状況ですから、私たち自身が意識してミャンマーの情報を得る様に努める事は大切です。大手のメディアでは殆ど扱われないからです。ではどうすればミャンマーの実態を知る事ができますか?この点で統計は有用です。統計を調べれば、日本とミャンマーが過去にどのような関係を築いてきたのか、更にその関係はクーデターを機にどのように変化したかを知る事ができます。
一方で日本の統計だけを見ても余り意味がありません。世界の統計を調べる必要があります。確かに日本は長年にわたりミャンマーを支援してきましたが、ミャンマーへの支援は日本だけが行ってきた訳ではありません。実際ミャンマーには多くの外資系企業が進出してきましたし、特に中国の存在感は年々増してきていました。この点でミャンマーに対する開発援助に関して言えば、日本はこういった諸外国ともライバル関係にある訳ですから、世界の統計を調べる事も重要と言えます。
翻って統計だけでは見えて来ない分野もあります。それはミャンマーの人々の生活やビジネスの商習慣です。当然の事ながら、こういった生活や商習慣というものは統計には現れません。実際にミャンマー人やミャンマーの会社と接点を持つ事により、初めて知る事ができます。そして言うまでもなく、昨年のクーデターはミャンマーの生活や商習慣にも大きな影響を及ぼしています。ですから生の声を聞く事は非常に重要なのです。
この点で日本はミャンマーと物理的な距離がありますが、私が住んでいるマレーシアは実際の距離も近く、大勢のミャンマー人がマレーシア国内には住んでいます。また日本では余り知られていませんが、マレーシアは世界屈指のロヒンギャ受け入れ国であり、クアラルンプールの街中にも大勢のロヒンギャ難民が暮らしています。
更に私自身も港湾の会社を経験する中で、ミャンマーの会社とは定常的に取引があります。ミャンマーのヤンゴン港は東南アジアから南アジアにかけての海運の要衝の一つであり、そこには多くの海運関連企業が軒を連ねています。この点でクーデター以降は多くの日系企業がミャンマーとの取引を停止しましたが、マレーシアでは継続して取引している企業が多いため、彼らから最新の情報がリアルタイムで入ってきます。ですから私はミャンマーとのビジネスを語る上で、確かに有利な立場にいます。
それで今日は、「日本はミャンマーとどう付き合うべきなのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の統計を通して、日本とミャンマーのこれまでの関係を振り返ります。次に世界の統計を通して、ミャンマーが国際社会の中でどのように経済成長を遂げてきたのかを俯瞰します。加えて私自身の経験も含めながら、クーデターが起きてしまったミャンマーと日本は今後どのように付き合っていくべきかについて、私見を述べたいと思います。長文になりますが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。
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ちゃん社長のコンテナ・海運業界・マレーシアの裏話。
香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…
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