「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第77回 日本で副業はどこまで広がるのか?
2023年10月16日、政府は規制改革会議を開きました。その中で主な議題となったのが、「副業」です。政府は副業が幅広い業種で直面している人手不足を解消する手がかりになることを期待しており、副業がしやすいように労働時間に関する規制を緩めることも検討しています。
確かにこれまでの日本では、副業禁止の企業が大半でした。しかし近年は政府が副業を推進していることもあり、解禁する企業も増え始めています。逆に企業の側としても、フルタイムワーカー以外の就業者を積極的に受け入れることで、人手不足を解消できると共に、企業や産業の垣根を超えたイノベーションの創出にも期待しているところです。
しかしながら、副業には良い面もあれば悪い面もあります。まず日本では未だに副業を禁止している企業が多くあり、その大きな理由の一つが機密情報の流出リスクです。また社員の側にとっても、副業が長時間に及ぶと十分な休息をとることができず、体調を崩す可能性が高まります。こう考えると、企業側・社員側、どちらにとっても、副業のリスクとベネフィットを考慮するのは大切なことと言えます。
では収入を上げる上で、副業は本当に有用なのでしょうか?また今後それはどこまで広がるのでしょうか?この点で統計は重要です。統計を調べれば、日本においてどれだけの企業が副業を解禁しているのか、またそれが労働力不足の解消に繋がっているのかを知ることができます。それは現在の雇用政策の課題を明らかにすると同時に、今後の向かうべき方向性も教えてくれるかもしれません。それ故に統計は大切です。
しかし日本の統計だけでは不十分です。海外の統計にも注目する必要があります。確かに副業を解禁している国が多いのは事実ですが、実際にどの程度の人が副業に携わっているのでしょうか?またそれによって企業の生産性に変化が生じているのでしょうか?海外の統計を調べれば、こういった質問に対する答えを得ることができます。それにより、日本の国際社会における正確な立ち位置も見えてくるでしょう。ですから海外の統計も肝要です。
ただ統計からは見えてこない分野もあります。それは実際に副業を行う人たちの「生の声」です。例えば副業収入が本業収入を上回り、最終的に独立起業した人もいます。一方で副業が上手くいかず、そのストレスが本業にまで悪影響を及ぼした人もいます。こういった副業に携わる人たちが直面する悲喜こもごもは、統計からは見えて来ず、彼らの話に耳を傾けて初めて理解できるものです。そう考えると、確かに「生の声」も重要と言えます。
この点で私は30歳まで横浜の港湾で働いた後、香港の外資系企業で働き始めました。香港人の多くは終業後や週末に副業を行っていましたが、私の場合は就労ビザの関係で副業が容易でなかったことに加え、本業の仕事が超激務で、副業に時間を割く余裕はありませんでした。ただその反面、成果を出せばサラリーは上がっていくので、副業よりも遥かに効率的に稼ぐことができたと感じています。一方で現在はマレーシアで会社を経営していますが、この国も副業に取り組む人が非常に多く、弊社の社員でもかなりの割合の人が何かしらの形で副業に携わっています。私はこういった状況を実際にこの目で見てきましたので、副業についての「生の声」を聞くという点で、確かに有利な立場にいます。
それで今日は「日本で副業はどこまで広がるのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の統計を通して、日本では実際にどこまで副業が広まっているのか、またその収入レンジはどの程度なのかを俯瞰します。次に海外の統計を通して、諸外国の副業事情を考えます。最後に私自身の海外での会社経営の経験も踏まえながら、副業を含む日本の雇用政策の課題を考察すると共に、ビジネスパーソンが「より稼げるようになる」ためには何をすべきか、具体的な提言を述べたいと思います。副業を検討中の方に加えて、将来的に転職を考えている方にも、特にお読みいただきたい内容です。長文になりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
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ちゃん社長のコンテナ・海運業界・マレーシアの裏話。
香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…
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