「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第86回 日本の物流は本当に持続可能なのか?
昨今はニュースでも、「物流2024年問題」が提起されるようになりました。これは働き方改革関連法によって、2024年4月1日からトラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用されることによって生じる問題のことです。例えばこれまでの労働基準法では、トラックドライバーの労働時間に上限はありませんでしたが、今後は時間外労働を年間960時間以内に収める必要があります。このように一人当たりの労働時間が短くなると、需要に人手が追いつかず、物流の停滞が懸念されています。
ただこれは問題の序章に過ぎません。21世紀に入り、物流の量は加速度的に増えてきました。例えば30年前はネット通販など存在しませんでしたが、今ではワンクリックで注文した荷物が玄関先まで届きます。一方でその物量とは反比例するように、トラックドライバーは不人気の業種となっており、人数の減少に歯止めがかかりません。これは極めて深刻な事態です。
ここで一つの重要な疑問が浮かび上がります。日本の物流は本当に持続可能なのでしょうか?これを知る上で、統計は有用です。日本の貨物量はどれだけ増えてきたのでしょうか。その一方で運送業従事者の人数や賃金はどのように推移してきたのでしょうか。統計を調べるならば、こういった疑問に対する答えを得る事が出来ます。それはこれまでの物流業界の歩みを教えてくれると共に、今の日本が抱える構造的な問題も明らかにしてくれるかもしれません。それゆえに統計は重要です。
一方で日本の統計だけでなく、海外の統計も重要です。物流量の増加は日本だけの問題ではなく、世界全体が抱える課題となっています。例えば日本のネット通販でも、海外から荷物が国際発送で届きますし、逆に日本からも海外に発送が可能です。このように物流というものは、国内だけでなく全世界と繋がっていますので、海外の統計も有用だと言えます。
ただ統計からは見えて来ない分野もあります。それは物流に携わる人たちの「生の声」です。物流ドライバーは3K労働の代名詞とされていますが、昭和や平成の初期ならば、佐川急便のドライバーで一儲けして、それを元手に独立起業したような話が無数に転がっていました。しかしそれも今となっては昔の話で、逆に物流ドライバーは「稼げない仕事」と認識されるようになっています。こういったドライバーたちが抱える悲喜こもごもは、統計からは見えて来ず、彼らの話に耳を傾けて初めて理解できるものです。ですから「生の声」も大切なのです。
この点で私は10代後半から横浜で港湾労働者として働き始めましたが、特に海上コンテナのトレーラードライバーとは毎日顔を合わせてきました。今でも定期的に連絡を取る友人が複数います。また今はマレーシアのポートクランで事業を営んでいますが、ここでも物流ドライバーたちと常に顔を合わせています。そして仕事やプライベートでも時間を重ねる中で、彼らの悩みや喜びに耳を傾けることができており、それがビジネスを営んでいく上での貴重な財産にもなっています。こういった点を考えてみますと、私は物流ドライバーの「生の声」を聞くという点で、確かに有利な立場にいます。
それで今日は「日本の物流は本当に持続可能なのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の統計を通して、日本の貨物量の増加や、ドライバーの待遇の変化を俯瞰します。次に海外の実例を通して、日本の物流の特異性を考察します。最後に私自身の海外における会社経営の経験も踏まえながら、日本の物流の構造的問題を浮き彫りにすると同時に、21世紀の物流に対して、事業者だけでなく消費者はどのように向き合うべきなのか、具体的な提言を述べたいと思います。日ごろネット通販などで買い物をされる方や、物流関連業への株式投資に関心をお持ちの方には、特にお読みいただきたい内容です。長文になりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
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ちゃん社長のコンテナ・海運業界・マレーシアの裏話。
香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…
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