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Container from Malaysia(コンテナ フロム マレーシア) 第31話 現代の海賊の蛮行

前回の話はこちらから
 
https://note.com/malaysiachansan/n/n13810f59bc00
 
 この話は2022年1月まで遡る。この日、マレーシアのポートクランでコンテナリース会社を営む氷堂律(ひょうどうりつ、通称ちゃん社長)は、タワウという街の空港にいた。マレーシアの国土は西側のマレー半島と東側のボルネオ島に大きく分かれているが、このタワウは東側のボルネオ島の中でも最東端に近い場所にあり、海を挟んだ反対側にはもうフィリピンが迫っている。

 
 氷堂がここに来たのは、年始の休暇を過ごす為だった。2021年は本当に沢山の災難に見舞われた年だった。港湾で共に働く多くの仲間がコロナウイルスに感染し、残念ながら亡くなった人たちもいた。それに伴い厳しいロックダウンがあったため、海上物流は混乱の極みに陥った。更に年末には50年に1度と言われる大洪水が起き、ポートクランの港も水没した。そのような幾多の苦難があったにもかかわらず、ポートクランの港湾事業者たちはそれを乗り越え、年末には遂にコンテナ取扱量が過去最高を記録した。それに伴い氷堂の会社も過去最高益となった。本当に大変な、しかし本当に充実した1年だった。それで氷堂は自分で自分をねぎらいたいと思い、3日ほどの休暇を取ってバカンスに出掛ける事にした。今回氷堂がタワウにいるのはその為だ。
 
 氷堂の最終目的地はシンガマタ・リーフ・リゾートというリゾートホテルだ。そこはマレーシアとフィリピンの間のスールー海の沖合にあるプライベートアイランドで、ダイビングやシュノーケリングのメッカとして知られている。
 

 
 まずこのシンガマタ島へ行くためには、島の対岸にあるセンポルナという街まで移動する必要がある。調べたところ空港からセンポルナまでは車で約2時間の道のりで、バスは走っているものの時間通りに来ることは殆どないらしく、本数も非常に少なかった。それで氷堂はタワウ空港でレンタカーを予め手配しておき、車でセンポルナの街へと向かった。氷堂は信号すらない田舎道をひたすら走り続けた。そして遂にセンポルナに到着し、そこからは専用のフェリーに乗り換えた。
 
 センポルナの港周辺の海は少し濁っていたが、フェリーが少し沖合に出ると、海の透明度がどんどんと上がっていく事に氷堂は気付いた。それで氷堂は身を乗り出して海を覗いてみた。恐らく水深は20メートル程度あると思われるが、その海底にあるサンゴまで肉眼で確認する事ができた。こんなに澄んだ海を見るのは本当に久しぶりだ。
 

 
 そして遂にフェリーはシンガマタ島へと到着した。氷堂が自宅を出てから、既に10時間が経過していた。確かに氷堂は長旅で疲れていたが、それでもそこから見える美しい海は、その疲れを癒して十分に余りあるものだった。「これでようやくゆっくりできる」。氷堂は一人そう呟いた。しかしその後に氷堂がこの島で目にしたものは、想像とは大きくかけ離れた悲しい過去だった。実はこの島は海賊に急襲された事があったのだ。それも遠い昔の話ではなく、わずか数年前に。

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マガジンは毎週1回、月4回更新します。コンテナ業界の裏話を含んだ自伝的小説「Container from Malaysia(コンテナ フロム マレーシア)」と、日本の構造的問題を海外の経営者の視点で統計と共に読み解くコラム「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」を隔週で更新。貿易に関心がある方、海運やコンテナ関連の株をお持ちの方、またマレーシア在住者を含む海外移住者やそれを目標にしている方、更には日本の行政や教育システムに疑問をお持ちの方に有用な情報をお届けします。

香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…

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