「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第33回 イランは一体どこへ向かうのか?
2022年8月8日、EUはイランと米国との間の核合意交渉に関して、イラン側に最終案を提示しました。ご承知の通り、イランは核開発を巡ってアメリカから経済制裁を受けており、それが今回の交渉で合意に至る事が期待されています。もしこれが合意に至れば、イラン産の原油が国際市場に再び供給されるため、原油価格の安定に繋がる可能性があります。
確かに近年のイランの歴史は、制裁の歴史そのものと言っても過言ではありません。2006年頃から米国や国連はイランの核開発に対して疑念を持ち始め、その結果、度重なる経済制裁が課されてきました。その後2015年には交渉の合意が近づきましたが、2018年になるとトランプ前大統領により再び経済制裁が強められます。そしてイランは国際銀行間通信協会(SWIFT)からも締め出される事になり、深刻な外貨不足に陥るようになりました。確かに今もイラン国民は経済苦境に喘いでいます。
このように現在のイランの国際社会おける立ち位置は非常に厳しいものとなっていますが、一方で日本との関係を振り返ると、両国は長年にわたり良好な関係を続けてきました。しかし近年の日本はアメリカの経済制裁に追従する立場を取ったため、現在ではその繋がりも希薄なものとなってしまいました。
では日本は今後、イランとどのように向き合うべきでしょうか?この点で統計は有用です。統計を調べれば、日本とイラン、両国の関係がこれまでどのように推移してきたのか、正確な情報を得る事ができます。それは過去の両国の繋がりを理解すると共に、現在の両国が抱えた問題点も浮き彫りにしてくれるかもしれません。
しかし日本とイランの二国間だけの統計を見ても余り意味がありません。世界の統計に注目する必要があります。特にイランは世界随一の制裁を受けている国であり、その経済は大きな打撃を受けています。一方でそれでも経済破綻に至っている訳ではなく、政治体制も維持され続けています。これはイランを支援している国が複数あるからであり、それは統計からも読み取る事ができます。こういった統計を精査する事によって、イランの世界における正確な立ち位置を理解する事ができるでしょう。
ただし統計だけでは明らかにならない分野があります。それは当事者たちの「生の声」です。例えばイランは経済制裁が続いている訳ですが、それにより国民の生活はどのように変化したのでしょうか?また彼らの商習慣はどのような影響を受けましたか?こういった質問の答えというものは、当然ながら統計には現れません。当事者たちの生の声に耳を傾けて、初めて理解できるものです。ですから生の声は重要なのです。
この点で弊社は今もイランと間接的に取引があります。恐らくですが、元々イランと取引を行っていた日本企業の99%は、米国が経済制裁を課したのを機に現在は取引を停止しているものと思われます。一方で私が今いるマレーシアは、今もイランと友好関係にあります。そして多くの企業で商取引が続けられており、その中には弊社の取引先も含まれます。そのため私は取引先を通じてイランの最新の情報を定期的に仕入れる事ができており、更にイランの会社と直接と連絡を取り合う事もできています。ですからこのイランの問題を俯瞰する上で、私は確かに有利な立場にいると言えます。
それで今日は「イランは一体どこへ向かうのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本とイランの統計を通して、両国の関係がこれまでどのように推移してきたのかを振り返ります。次に世界の統計を通して、イランを陰で支援している国々の実態に迫ります。最後に私自身の経験を踏まえながら、将来的に日本はイランとどのように対峙していくべきかについて、私見を述べていきたいと思います。長文になりますが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。
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ちゃん社長のコンテナ・海運業界・マレーシアの裏話。
香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…
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