「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第44回 日本の公務員制度のどこが問題なのか?
2022年12月、政府は2023年度の国家公務員の定員に関する発表を行いました。それによりますと、2023年度は子ども家庭庁や財務省を中心に7966人の増員を行う予定との事ですが、一方でシステムの改修による業務改革も行い、同時に7104人の減員も計画されています。結果として2023年度の定員は2022年度と比較して、862人の微増になると予定されています。
このように毎年年度末には新年度の公務員数が定められるのですが、近年は「公務員不足」が社会問題になっています。ただ上述の通り、増やされる部署もあれば減らされる部署もある為、なかなか大幅増員とはなりません。これは国家公務員だけでなく地方公務員も同様です。
にもかかわらず、公務員はいつの時代も一般市民の目の敵にされてきました。「公務員は楽な仕事だ」「公務員のくせに高い給料を貰うな」。このような声を耳にされた事のある方も少なくないでしょう。この様に公務員を敵視する人々は常に存在するため、私達市民一人一人が公務員に対してバランスの取れた見方を持つ事は非常に重要です。
ではどうすれば公務員の実態を知る事ができますか?この点で統計は有益です。統計は嘘を付きません。確かに統計は公務員の人数や賃金がこれまでどのように推移してきたかを教えてくれます。これにより国家公務員および地方公務員の過去の歩みを知ると同時に、今の日本が抱えている構造的な問題点も浮き彫りにしてくれるかもしれません。
一方で日本の統計だけでなく、海外の統計にも注目する事が重要です。海外の統計を調べれば、日本の公務員の数や賃金水準が世界と比較して高いのか低いのかを知る事ができます。特に日本経済はこの30年間停滞を続けていますが、公務員というものはどの国においても経済の根幹を成すものです。ですから世界との比較を行えば、そこから日本の経済停滞の要因に関するヒントも得られるかもしれません。故に海外の統計も重要と言えます。
とはいえ統計だけでは見えて来ない分野があります。それは公務員の方々の生の声です。実際、日本では公務員自身の主張が大きく取り上げられる事は余りありません。それもそのはずです。日本は公務員が自ら声を上げにくい社会構造になっているからです。例えば日本国憲法15条2項には「公務員はすべて国民全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではない」と明記されています。この「奉仕者」という言葉があるためか、公務員が声を上げる事を嫌う市民は大勢いますし、公務員自身もメディアで過度な主張をしない傾向にあります。しかしながら現場を最も理解しているのは、他でもない公務員自身です。そしてこういった貴重な生の声というものは、なかなか統計には現れないものです。ですから統計だけでなく、生の声に耳を傾ける事は肝要なのです。
この点で私は海外の複数の国で会社を経営しています。それ故に各国の公務員の方々と話し合う場面が多々あります。特に弊社は海運関連会社なので、輸出入や物流の為に関係国の税関や国交省との折衝が必須となります。そのような交渉を通して、私は各国の公務員の働き方や賃金、更には彼らの考え方をこの目で直に見る事ができています。ですからこの公務員制度という問題を俯瞰する上で、私は有利な立場にいます。
それで今日は「日本の公務員制度のどこが問題なのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の統計を通して、日本の公務員の人数や賃金がどのように推移してきたのかを振り返ります。次に海外の統計を通して、日本の公務員制度が世界と比較してどんな点が異質なのかを考えます。最後に私自身の海外における会社経営の経験も踏まえながら、日本の公務員制度に対して提言を述べていきたいと思います。長文になりますが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。
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ちゃん社長のコンテナ・海運業界・マレーシアの裏話。
香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…
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