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「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第60回 日本の高齢者医療は持続可能なのか?

 2023年5月、後期高齢者医療制度の「保険料上限額引き上げ」に関して、改正案が成立しました。この改正により、保険料の上限額が今の66万円から、2024年度には73万円に、2025年度には80万円に引き上げられる予定です。この改正案の影響を受ける人は少なくなく、2年間で後期高齢者全体のうち、約4割の人の保険料が増える見通しとなっています。
 
 一方でこの改正案には野党が反対に回りました。また党派に関係なく、高齢者医療の自己負担増に関しては、「立場の弱い高齢者からの搾取だ」と批判する人も少なくありません。ただ高齢者の数が増え続けているのは紛れもない事実であり、一方で彼らを支える生産年齢人口は減り続けています。そして統計を見るならば、現役世代以上に高齢者世代の貯蓄額は多く、世代間の富の偏在が生じているのもまた事実です。それでこういった状況を鑑みるならば、程度の差こそあれ、日本の高齢者医療が調整すべき過渡期に入っている事に異論の余地はないでしょう。
 
 ではどうすれば現在の高齢者医療について、その実態を知ることができますか?この点で統計は有用です。統計を調べれば、日本の高齢者人口の推移や、それに伴う医療費の増大について、正しい理解を得ることができます。それは過去における日本の保険医療制度の歩みを知ると共に、現在抱える問題も教えてくれるかもしれません。
 
 一方で日本だけでなく、海外の統計に目を向けることも重要です。私たちは頻繁に「少子高齢化」という言葉を使います。これは「少子化」と「高齢化」を結合した言葉ですが、「少子化」に関して言えば、日本と同じかそれ以上に深刻化している国も存在します。ただ「高齢化」に関しては、日本ほど深刻化している国は世界でも存在しません。つまり日本は世界最先端の高齢化国家の訳ですが、近年は他の先進国でも高齢化の兆しが見え始めています。それらの国々は、どのように医療費の抑制を試みているのでしょうか?こういった点に関する考察は、日本の統計からは分からないため、海外の統計に注目することも大切と言えます。
 
 一方で統計からは見えて来ないものもあります。それは当事者たちの「生の声」です。例えば終末医療や高齢者の介護に関しては、それに携わったことのある当事者でないこと分からないことが多いものです。加えて「高齢者医療にどれだけのリソースをかけるか」という点に関しては、各国によって考え方が大きく異なります。日本のように手厚い医療を施す国もあれば、そうでない国もあります。そして医療従事者や身内を含めた介護従事者の辛苦というものは、統計からは見えて来ず、当事者の声に耳を傾けて初めて理解できるものです。それゆえに「生の声」に耳を傾けることも重要です。
 
 この点で私は香港とマレーシアで会社を経営しています。両国は非常に対照的な国で、例えば香港の平均寿命は非常に長く、いつも世界一の座を日本と競い合っています。一方のマレーシアはかなり短命な事で知られており、男性の過半数は70代前半で亡くなります。そして両国ともに、それぞれの国の事情に応じた高齢者医療の体制が敷かれています。私はこういった状況を実際にこの目で見ているため、「生の声」を聞くという点でも有利な立場にいます。
 
 それで今日は「日本の高齢者医療は持続可能なのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の統計を通して、これまでの高齢者人口、およびその医療費がどのように推移してきたのかを振り返ります。次に海外の統計を通して、各国の高齢者医療の在り方を俯瞰すると共に、日本の特異性を浮き彫りにします。最後に私自身の海外における会社経営の経験も踏まえながら、高齢者医療を支える現役世代の適切な負担額に関して、考察と提言を述べたいと思います。特に給料から天引きされる社会保険料の高さに不満を抱えている方には、是非お読みいただきたい内容です。長文になりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
 

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マガジンは毎週1回、月4回更新します。コンテナ業界の裏話を含んだ自伝的小説「Container from Malaysia(コンテナ フロム マレーシア)」と、日本の構造的問題を海外の経営者の視点で統計と共に読み解くコラム「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」を隔週で更新。貿易に関心がある方、海運やコンテナ関連の株をお持ちの方、またマレーシア在住者を含む海外移住者やそれを目標にしている方、更には日本の行政や教育システムに疑問をお持ちの方に有用な情報をお届けします。

香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…

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