「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第56回 日本の社外取締役制度は機能しているのか?
2023年6月5日、政府は男女共同参画会議を開催し、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023」の原案を発表しました。その目玉の提言が、「東証プライム市場の上場企業は女性役員の比率を30%以上に引き上げるべき」というものです。日本は欧米と比較して女性役員の登用が遅れていると言われていますが、今回の提言を通して政府はそれを強く後押しし、女性が社会で活躍できる環境整備を進めることを目指しています。
そしてその中で注目を集めているのが、他でもない「社外取締役」です。日本の大企業の社員構成はどうしても男性に偏りがちであり、生え抜きの女性役員を輩出するのも簡単ではありません。そのため女性役員を社内から生み出すよりは、社外から招聘した方が難易度も高くないでしょう。実際ここに来て、多くの上場企業が著名人の社外取締役を選任しています。例を挙げれば、スズキの高橋尚子さん、JPホールディングスの水野真紀さん、Kids Smile Holdingsの内田恭子さん、四電工の中野美奈子さんなどです。今後もこのような形での女性取締役の増加は続くことが予想され、これが日本の上場企業における大きなムーブメントを形成すると考えられます。
ただこれが健全な姿かと聞かれると、必ずしもそうとは言えません。本来であれば、社外取締役はコーポレートガバナンスを強化するために設置されるものです。ところが著名人の多くは経営者としての経験に乏しく、単なるお飾りになってしまう危険性があります。加えて経験の乏しい社外取締役が、既存の取締役の決断にNoを突きつけるのも簡単な事ではありません。ですから今一度、この機会に日本の社外取締役制度について考えるのは適切な事と言えます。
ではどうすればそれが分かりますか?この点で統計は有用です。統計を調べれば、日本の社外取締役制度の成り立ちや、その人数の推移を知ることができます。さらにこの制度が日本企業のコーポレートガバナンスを強化するうえで、どれだけの成果を上げてきたかを理解することもできるでしょう。確かに統計はこれまでの日本の歩みを明らかにすると共に、今の日本が抱える問題も浮き彫りにしてくれるかもしれません。
一方で日本の統計だけでなく、海外の統計も重要です。確かに社外取締役の選任の分野で、日本が欧米と比較して遅れをとってきたことは事実です。ただこの点で、海外ではどのような制度設計がなされてきたのでしょうか?またそれにより、企業価値はどのように向上してきたのでしょうか?海外の統計を調べれば、こういった疑問に対する答えを得ることができます。そしてそれは日本の市場の特異性も明らかにしてくれるでしょう。ですから海外の統計を調べることも重要と言えます。
それで今日は「日本の社外取締役制度は機能しているのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の統計を通して、日本市場が抱える社外取締役制度の課題を抽出します。次に海外の統計を通して、海外の社外取締役制度が企業価値にどのような影響を及ぼしているのかを考慮します。最後に実例を交えながら、今後の日本における社外取締役制度の在り方について、考察と提言を述べたいと思います。個人で投資を行っている方にも是非ご覧いただきたい内容です。長文になりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
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ちゃん社長のコンテナ・海運業界・マレーシアの裏話。
香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…
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