「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第19回 日本にとって台湾はどれほど重要なのか?
2021年12月、安倍晋三元首相は講演で、「台湾有事は日本有事だ。日米同盟有事でもある」と発言しました。この発言に対して中国政府は強く反発し、中国外務省は北京駐在の日本大使を呼びつけました。その結果、中国の主要公式メディアが安倍氏を名指しで非難する事態に発展しました。中国側がここまで大きな抗議をする事は稀であり、この一件は、台湾に対する関心が中国・日本ともに非常に高まっている事の証左でした。このように台湾を巡る国際情勢は、現在東アジアにおける火種となっており、日本・中国のみならず、様々な国の思惑が渦巻いています。
確かにこれまで日本は、台湾と特別な関係を築いてきました。台湾は世界屈指の親日国として知られています。またコロナ禍の日本の潮流として、「台湾の防疫から学べ」とマスコミでも報道されてきました。実際に台湾は新型コロナウイルスの感染拡大に首尾よく対応しており、同じ島国である日本は台湾の防疫から学べる事も多かったでしょう。特にデジタル担当の政務委員であるオードリー・タン氏は日本でも非常に知名度が高く人気もあり、彼の様な若手で実力のある人達が活躍できる土壌が整っているという点でも、日本は台湾から学べる事が多くあります。
ただ台湾という国について、政治面やコロナ対策の面で注目を集める事はあっても、日本の大手メディアがその「経済面」にフォーカスする機会は余り多くありません。多くの日本人にとって知っている台湾の経済情報といえば、シャープが台湾企業である鴻海に買収された事くらいかもしれません。
しかし政治と経済は密接に結びついています。国際政治を正しく理解したいのであれば、経済についても正しい理解を得る事は必須です。特に近年は、経済が安全保障と直結している事から、日本と台湾の経済面での繋がりを正しく理解しないなら、政治や外交について幾ら学んだとしても、それは「絵に描いた餅」の様になってしまうでしょう。
ではどうすれば台湾の経済について知る事ができますか?この点で統計は有用です。過去の統計を調べれば、日本と台湾の経済がどのように繋がり、どのように発展してきたか、正しい理解を得る事ができます。そしてその統計からは、現在両国の経済が抱える課題点や、将来の行方なども推察する事が出来るかもしれません。
しかし一方で日本の統計だけを見ても意味がありません。世界の統計を見る必要があります。それを調べる事で、世界における台湾の正確な立ち位置を知る事ができるからです。この事は彼らの最大のライバル国である中国の動向を考えると、特に重要と言えます。現在中国は全世界で一帯一路構想を推進しており、その影響力は日増しに強くなっています。この様な国際情勢の中で台湾が中国に対抗するには、経済面でも強くなる必要があります。故に世界の統計を調べる事も重要なのです。
ただし統計だけでは見えて来ない分野もあります。それは「ビジネスの実際の習慣」です。台湾は歴史的に中国と密接な繋がりがありますが、中国企業とはかなり異なる企業文化を有しています。一方で欧米の企業哲学とも相容れないものがあり、独自の価値観や習慣が形成されています。このような「ビジネスの実際の習慣」は統計からは見えて来ないもので、実際に台湾に足を運び、台湾企業とビジネスを行った人にしか理解できないものでしょう。
この点で弊社は海外で港湾の会社を経営しており、複数の台湾企業と実際に取引があります。特に台湾南部の高雄港は東アジアを代表する巨大港で、太平洋航路の玄関口のハブターミナルとして機能しています。ここには世界中の海運関連の会社が集まっており、私自身も何度も足を運んでいます。ですから台湾の経済を外から俯瞰する上で、私は確かに有利な立場にいます。
それで今日は、「日本にとって台湾はどれほど重要なのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本と台湾の統計を調べる事で、両国の経済面での繋がりを確認します。次に世界の統計を調べる事で、台湾経済の世界における立ち位置を理解します。加えて私の台湾企業とのビジネスの経験を通して、これらの統計を裏打ちしていきたいと思います。長文になりますが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。
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ちゃん社長のコンテナ・海運業界・マレーシアの裏話。
香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…
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