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「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第93回 中年はZ世代とどのように向き合うべきなのか?

 最近メディアでは「Z世代」という言葉が頻繁に聞かれるようになりました。Z世代とは1990年代半ばから2010年代序盤に生まれた世代の事で、2025年現在では13~28歳前後の年齢層にあたります。彼らの特徴としては、デジタルネイティブであることやSNSに精通していること、さらにはタイパ(タイムパフォーマンス)を重視する効率主義であることなどが挙げられます
 
 Z世代の特徴は、仕事への向き合い方にも現れています。例えば厚生労働省の調査によれば、2021年に大学を卒業して新卒で就職した学生のうち、34.9%は3年以内に離職していることが明らかになっています。これは過去15年で最も高い離職率ということです。
 
 このようなZ世代に対して、年長者、とくに私のような中年世代の中には、「接し方が良く分からない」と感じている人も少なくないでしょう。しかしながら、日本のZ世代の人たちは生まれた瞬間から不景気で、好景気の時代を全く経験していません。それ故に社会を達観しているところもあり、価値観が異なるのは当然のことです。加えてあと10年もすれば、Z世代の人たちが企業、ひいては社会の中核を成していくことになります。それで色眼鏡で見ることなく、お互いに理解を深めるように努めることは極めて大切です。
 
 ではどうすれば彼らの実態を理解できますか?この点で統計は有用です。統計を調べれば、Z世代の人口や彼らの進路、また賃金の傾向などをより正確に理解することができます。これは過去の日本経済の歩みと共に、現在の日本が抱える世代間格差などの構造的な問題も明らかにしてくれるかもしれません。ですから統計を調べることは大切です。
 
 ただ日本の統計だけでは不十分です。海外の統計にも注目する必要があります。そもそも「Z世代」という言葉自体が、「Generation Z」という英語から派生した言葉で、その語源は海外にあります。では海外のZ世代には、どのような特徴があるのでしょうか?何が日本と異なるのでしょうか?こういった点を調べるならば、日本社会が持つ異質性もさらに理解することができるでしょう。
 
 ただ統計だけでは見えて来ない分野があります。それは「生の声」です。Z世代と一口で言っても、当然ながら一人一人は人格を持った個人であり、彼らの多くは十把一絡げで扱われることを嫌います。逆に中年世代は中間管理職になっている人も多いですが、業務上Z世代の人たちと接する必要があり、その思考パターンの違いに苦慮する人も少なくありません。こういった現実は、統計からはなかなか見えて来ず、当事者の話に耳を傾けて、初めて理解できるものです。それ故に「生の声」は重要です。
 
 この点で私はZ世代と向き合う機会が多くあります。私は就職氷河期世代で、卒業後、約10年間はブラック企業で辛酸を嘗めました。その後は香港の外資系企業で勤務し、プライベートの時間を全く持てないほど仕事に打ち込みました。そして現在ではマレーシアで会社を経営していますが、社員の中にはいわゆるZ世代の人たちも相当数います。私自身、彼らの思考パターンを理解するのに苦労することがある反面、彼らから学ぶものも多くあると感じています。こういった経験をしていますので、確かに「生の声」を聴く点で、私は確かに有利な立場にいます。
 
 それで今日は「中年はZ世代とどのように向き合うべきなのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の統計を通して、この世代の人口構成や雇用傾向を俯瞰します。次に海外の統計を調べる事で、世界のZ世代の潮流を考察すると共に、日本の特異性を浮き彫りにします。最後に私自身の会社経営の経験も踏まえながら、我々中年がZ世代と共存・共栄していくにはどうすれば良いのか、具体的な提言を述べたいと思います。20代の部下がいる方、さらには中間管理職の方には、特にお読みいただきたい内容です。長文になりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
 

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マガジンは毎週1回、月4回更新します。コンテナ業界の裏話を含んだ自伝的小説「Container from Malaysia(コンテナ フロム マレーシア)」と、日本の構造的問題を海外の経営者の視点で統計と共に読み解くコラム「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」を隔週で更新。貿易に関心がある方、海運やコンテナ関連の株をお持ちの方、またマレーシア在住者を含む海外移住者やそれを目標にしている方、更には日本の行政や教育システムに疑問をお持ちの方に有用な情報をお届けします。

香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…

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