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ショーロク!! 5月ー2

2.ワンダーホーゲー

 さて、5月と言えばゴールデンウィークだ。GWなんて言うらしい。

 ゴールデンウィークはほとんどサトチンと過ごした。

 ある日、サトチンのお母さんがオレたちを山へ連れて行ってくれた。
 遠足の定番の生駒山だった。
 ここはある程度楽に行けるし、遊園地もあるのでサトチンの弟、大くん(だいくん)も喜んでついてきた。

 大くんは来年小学校に入学する予定の幼稚園の年長さんだ。
 サトチンとは7歳差ということになるのだろうか。
 体も小さく、話も何を言っているのか分からないので、オレとサトチンはつきまとう大くんをあまり快く思っていない。

 去年は近所のプールに一緒についてきたのだが、あまりにうるさいので、途中でまいて帰ったことがある。
 もちろん、大事になってしまい、オレとサトチンは後でこっぴどく叱られた。オレは親父にびんたまでされたのだ。

 大くんは電車が好きなので、生駒山への道中は上機嫌だったが、山道を歩いたとたんに不機嫌になった。
 「母ちゃん、だっこ」
 と、3歳児のように甘えだしたが、オレは無理もないな、と思った。

 サトチンのお母さんが選んだコースというのは、バリバリの登山コースで、あまり舗装されてないような道を、木々をかき分けて進むようなコースだったからだ。

 何でもサトチン母は、ワンダーホーゲー?部とかいう山登りばかりしている馬鹿の集まりみたいなクラブに昔いたそうで、オレたちにも苦労して登った後の爽快感を教えてやりたいからあえてこの道を選ぶんだ、などと言っていた。

 当然、大くんが泣こうが叫ぼうが、サト母はずんずん先へ進んでいった。
 オレたちすら振り切られそうな速度だったので、大くんには地獄だっただろう。

 それでも最初の休憩地点まで泣きながらでも小走りでオレたちの最後尾をついてきたのだからすごい。人間多少突き放された方が底力を発揮するものなのだろう。

 休憩地点で飲んだ麦茶は、めちゃくちゃおいしくてオレとサトチンはワンダーホーゲーの威力に驚嘆するばかりだった。
 その後オレたちは、『何妙法蓮華経』のリズムで『ワンダーホーゲーゲーキョー』と唱えながら歩くと、ちょっとしんどさが和らぐということを学習したので、道中はずっとこれを唱えていた。

 大くんも最初は真似をしていたが、すぐにやめてしまった。疲れたのか飽きたのかは分からない。
 途中、同じ登山をしているようなおっちゃん、おばちゃんたちとすれ違う時には挨拶をしないといけなかった。これはサボるとサトチンのお母さんに怒られた。
 めんどくさかったが、オレたちはできるだけ変顔で「こんにちは」を言うことで、この退屈を乗り切った。

 約2時間くらい歩き続けて、やっと山頂にたどり着いた。
 遠足で行くのとは違う場所だというのは一目瞭然だったし、何より達成感が違った。

 「さあ、ご飯にしよか」
 と、サト母が言ってくれたときにはオレたちは狂喜乱舞だった。
 途中の麦茶同様、へとへとになって食べる昼ごはんはやはりうまかった。

 もともとオレはサトチンのお母さんの作るごはんが好きなのだ。

 家ではばあちゃんの作る古臭い煮物ばかりがメインだったので、唐揚げやエビフライなどが入った弁当はまるで宝箱のように見えた。
 もっとも、オレは食べるのが遅いうえに食も細いので、食べる量では大くんにすら負けていたのだが・・・

 帰りの電車ではサトチンのお母さんと大くんは泥のように寝てしまった。

 オレとサトチンは電車内を歩き回って、ミニスカートのお姉さんの前に陣取って、できるだけ浅く座ってどっちが先にパンツが見えるかを競い合ったりした。

 これは『いろはにほう作』という漫画で主人公のほう作が電車内でやっていたことを真似たのだが、お姉さんにすごい勢いで睨まれてしまった。

 漫画では許されていることも現実の世界だとシャレですまない場合もあるんだと、何となくではあるがオレとサトチンは学ぶことができた。

 そんな感じでゴールデンウィークはあっという間に終わってしまったのだった。



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makuta-takuma
いつか投稿がたまったら電子書籍化したいなあ。どなたかにイラストか題字など提供していただけたら、めちゃくちゃ嬉しいな。note始めてよかったって思いたい!!