ショーロク!! 6月前半ー2
2.横山家玄関鍵破壊事件
親父の言っていることがよく分からずに固まっていると「ちょっと来い!」と、オレは首根っこをつかまれ玄関まで引きずっていかれた。
ドアをチェックしてみると、なるほど鍵がまわらなくなっている・・・
何かが差し込まれたようで、それが障害物となり錠が回せないのだ。
「しゃあないから今から壊すけど、よう見とけよ!」
と言って、親父は鍵周辺の解体を始めた。
木製の扉の一部が破壊され、ゴロンと鍵が取れた。まるで昔そうやってどこかに忍び込んだのではないかと思わせるほど、親父は手際よかった。
まあ、そんなこと今はどうだっていい。問題の鍵である。
「ほら!やっぱりな!」
と、親父は怒りつつもどこか楽し気にオレの目の前に鍵を突き付けた。
そこにはアイスキャンディーの棒ががっちりと突き刺さっており半分くらいのところでポッキリと折れていた。
「これやったん誰や?見当つくか?」
親父がオレに詰め寄る。見当はつきすぎる位つく。サトチン以外なら誰でも可能性はあるのだ。
今はまだ11時。ふだんならオレが寝ている日曜日の時間帯だ。
サトチンはそれを知っているので昼の1時を過ぎないと遊びには来ない。
3組メンバーが午前中に遊びに来て、オレが出てこないと分かって忍び込もうとした。アホなあいつらのことだから鍵穴をアイスキャンディーの棒でこじ開けようとする・・・これは十分考えられる。
「明日、誰か分かったら連れて来いよ!」
親父はそう言って、再度オレの頭をはたいた。とばっちりもいいところだ。
明日まで待っていられない!
オレもまた怒りがこみ上げてきたので、さっそく着替えて犯人探しに出かけることにしたのだった。
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「で、オレはワトソン役なん?」
と、サトチンがめんどくさそうにつぶやいた。
オレはすっかり『横山家玄関鍵破壊事件』の犯人を見つけるべく探偵気分になっていた。ただホームズではなく明智小五郎の方だ。サトチンは少年探偵団のノロちゃん、小林少年はもったいない。(詳しくはポプラ社の少年探偵団シリーズを読んでください。)
「そう、助手や!まずお前が探りを入れてくれ」
「めんどくさいなあ、お前が直接聞いたらええやん」
「いや、さすがにオレが直で聞いたらあいつらもシラを切るやろ」
あいつらとは『キタン、ブーヤン、テッつん、クリちゃん』の3組おもろメンバーズのことだ。最初から犯人を決めてかかるあたり、オレもどうかと思うが。
「そうかなあ?たいしたことないと思ってるから、普通に言うんちゃう?」
と、サトチンは気楽に言ってのけた。人の家の鍵壊すのってたいしたことないのか!?
「うるさいなあ、とにかくやってくれや!頼むで」
そう言ってオレは物陰に隠れた。
サトチンはめんどくさそうにキタンを呼んだ。
「北山くーん、あーそーぼー」
この呼びかけはずっと変わらない。いい加減子供っぽくて恥ずかしいとも思うのだが、呼び鈴のある家もそうそうないので、こう呼びかける以外に方法がないのだ。
「お!サトチン、珍しいな」
顏を出したのはキタンではなくブーヤンだった。どうやら遊びに来ていたらしい。
「今日、お前ら朝のうちに横っちの家行った?」
サトチンが聞く。オレは一応、ドキドキしながら聞き耳をたてた。
ブーヤンが言った。
「何で、横っち本人が聞けへんの?そこにおるのに」
・・・ばれていた。
興覚めも甚だしい。
オレはため息をつきつつ、姿を現した。
「ほらな、だから言うたやん、このひと手間、マジでいらんって!」
サトチンがやれやれと肩をすくめてみせた。
「ほんで、俺ら横っちの家行ってないで。朝からビックリマン整理してたし」
と、ブーヤンが続けた。
後ろから上半身裸にグンゼパンツのキタンが出てきて「どうしたん?何かあったん?と呑気に聞いてきた」
オレがかいつまんで事情を話すと、二人とも俄然犯人探しに乗り気になった。
かくして『横山少年探偵団』は4人となって、次の目的地へと足を運ぶのだった。
次の目的地はキタン宅からほど近いクリちゃんの家だった。