ショーロク!! 7月前半ー1
7月前編 修学旅行の裏表、バスの後部座席での作文は最悪な件
1.短縮授業って意味あるの?
低学年が春先から育てていた朝顔が一気に開花するといよいよ夏本番である。
7月だ!
7月の町はどこへ行ってもアスファルトが焼けていて、まるで逃げ場のない銭湯のサウナのようだ。じっとしているだけで汗ばんでくる。
密閉され扇風機も使えない教室の中は灼熱地獄さながらだ。
実際7月なんて暑すぎて皆パッパラパーになっているのに終業式まではちゃんと学校があるからやってられない。
とはいえ終業式前の登校日なんて夏休み前の消化試合みたいなもんだ。
オレたちは1学期の全てのイベントを終え、すっかり燃え尽きて抜け殻みたいになってしまった。
授業があるにはあるが、小学校の時間割なんてあってないようなものだ。
おまけに3組はキシモトが担任なので、ドッジボールをして歌ってばかりいる。時間つぶし感満載だ。
今日だって、思い出したように漢字のテストなんかやらされたが、採点してるキシモトを皆で取り囲んで
「これ、マルでええやん」
「ちゃんと点、ついてるって!」
「これも読めるって、ちょっと崩れてるだけやん!」
などと、やいのやいの言ってるうちにクラスのほとんどが満点になってしまった。いい加減なもんである。
さて、そんなくだらない日常はさておき、7月の大きな行事と言えば修学旅行である。
正直、どこへ行ったかも記憶に残らないような場所だったのだが、バスであちこちの寺やら山やらを巡らされた。
一応、メインの行き先としては修禅寺というところになるみたいだ。静岡県というキャプテン翼でしか名前を見たことがない場所まで行かされた。
何でも『小京都』などと呼ばれ有名とのことだ。大阪からなら本当の京都に行った方が近いではないか。アホなのか、うちの教師たちは。
修学旅行から帰ると、キシモトはオレたちにやたらと作文ばかり書かせた。
そんなある日の一コマだ。ちょっと紹介させてもらおう。
「あぢー」
昨日の席替えでオレの後ろになったブーヤンが情けない声をあげた。
あだ名の通りブーヤンは人より太っていて、発汗量が多い。
見ていても暑苦しいのだが、そばによると電気ストーブ並みのじんわりした嫌な熱気を発するので、できるだけ夏場は接近したくない友達の一人だ。
そのブーヤンが
「なあなあ横っち」
といってべたついた手でオレの肩をゆすってきた。
うおう、気持ち悪い。
口をついて出かけた言葉を飲み込んで笑顔で振り返る。このあたり我ながら大人になったもんだと感心してしまう。
「どうしてん、ブーヤン」
「もう書けた~?」
「いや、まだ・・・」
「いっつも思うけど、何かイベントあった後って、センセーらしばらく引きずるよなあ」
「そやな、これで修学旅行関係の作文3回目やもんな」
「ぶっちゃけ、テーマ変えられても書くこと同じやねんけどなあ・・・」
「あれちゃう、これやらせといたらキシモトも楽できんねんって。絶対」
「そうなん?」
「そらそうやん。読んだふりしてハンコ押したらええだけやし、実際読んでるとしても、クーラーきいてる職員室で読むんやから・・・」
と、話しこんでいると、キシモトがおっさんハンカチを片手にやってきた。
「お前らは。しょうもないことばっかり言ってんと早よ書け!」
キシモトはハンカチのことをハンケチという。
どうでもいいことだが、こういう瞬間に思い出してしまうとなぜか腹が立つ。
「でもセンセー、書くこともうなくなってきたで」とオレが言うと。
「文句言うな!いろいろ思い出せ」と無茶を言ってきた。
「だいたい何やねん、今日のテーマ『修学旅行での後悔』って・・・」ブーヤンが怒った。ごもっともな怒りだ。
「何か見落としたこととか、ガイドさんに聞かれへんかったこととか・・・あるやろ?」
「そんなん・・・あ!・・・」
適当なことだけ言って、キシモトは話を切り上げて他の連中のところへ行ってしまった。
キタンとクリちゃんたちがでかい声で話しているんで、注意しに行ったんだろうが、こっちは逃げられたみたいで消化不良だ。
「まあ、ええやん横っち。適当に書いて違うことしようぜ」ブーヤンが言った。
「そやな」とオレは答えた。
いつか投稿がたまったら電子書籍化したいなあ。どなたかにイラストか題字など提供していただけたら、めちゃくちゃ嬉しいな。note始めてよかったって思いたい!!