ショーロク!! 7月前半ー2
2.作文の時間
適当に書くにせよ、真剣に書くにせよ、オレは学校で書かされる作文で困ったことなんて、実は一度もなかった。
自分で言うと嘘くさいが、どうやらオレは作文に関してはなかなかの才能の持ち主らしい。
4年生のときにサトチンの代わりに読書感想文を書いてやったのだが、何とその作品がある出版社主催のコンクールの最優秀作品になってしまい。オレではなくサトチンが学校で表彰されたという過去もある位だ。
だから、今回もブーヤンに背を向けて5分もたたないうちに仕上げてしまった。
読むのはキシモトだから、ちょっとキシモト好みに仕上げてみたつもりだ。
『修学旅行の後悔
まず僕はこのタイトルが気に入らない。せっかく楽しかった修学旅行だったのに、無理やり後悔したことを思い出さないといけないなんて、あのときの僕たちの笑顔に申し訳ないと思ってしまうからだ。
それでも頑張って後悔したことを探してみると、友達の栗田君に対して申し訳ないことをしたことを思い出した。
みんなで大浴場に入ったときのことだ。栗田君は体を洗うのに時間がかかっていたので、僕と北山君は先にあがるよ。と言って扇風機で遊んでいた。
そのうち脱衣場で水のかけあいが始まって、お互い防御のためにタオルを使った。
タオルだけでは防御しきれなくて、仕方なく近くにあった栗田君のジャージや下着を盾代わりに使わせてもらった。
僕たちは栗田君が戻ってくるまでに部屋に帰ったが、部屋に帰った栗田君は風呂を出てさっぱりしたあと、びちょびちょの服を着ることになり大変だったそうだ。
もちろん、彼はまだ犯人を知らない。
ごめんな、クリちゃん。』
まあ、こんなもんでいいだろう。
最後の一行で友達をついつい愛称で呼んでしまったという設定がいかにも小学生らしくて、単純なキシモトが好感を持つには十分だ。
現実は、水のかけ合いなんてなかった。
単にクリちゃんを待つのが退屈で、皆で奴の着替え一式を氷水づけにして遊んだのだ。
このレベルのイタズラで言うなら、マグロ(黒丸恵一)のパンツをそっとクラスの女子のカバンに入れたり、早く寝たブーヤンのパンツに茶色のマジックでカピカピウンコをリアルに描いたりした。オレたちがするイタズラの中では可愛いものだろうが、まあ作文には書けない。
ちなみにオレもオレで寝ている間にチンポをゾウにされるなどの被害を受けた。
サトチンなんて髪を半分ほど切られた。それよりはだいぶマシだ。
サトチンは変なモヒカンみたいな感じで朝食に行ったので、こっぴどく担任の先生に怒られていた。被害者のうえに怒られるのだから踏んだり蹴ったりだ。
そんなことを思い返しつつ、まるで出まかせのような提出用の作文を仕上げた。
「はい、修学旅行の『後悔』編終わりっと」
別に誰かに自慢するように言ったつもりはなかったけど、ブーヤンが前を向いたまま「横っち、はやっ!」と言ってくれたので、ちょっと嬉しかった。
本当は心のどこかでこういう反応を待っている自分がいるのかも知れない。
我ながら何だかいやしいと思う。
ちなみにキシモトが最初に書かせた作文は『修学旅行の楽しい思い出』、2つ目は『修学旅行で学んだこと』だった。
この二つも一応、『よそ行き』バージョンと『真実』バージョンを、覚えている限りで紹介しておこう。
まずは『修学旅行の楽しい思い出』から振り返ってみたいと思う。
『修学旅行の楽しい思い出 横山卓也
その日は目覚ましが鳴る前に目が覚めた。待ちに待った修学旅行だ!
前日に先生方がチェックしてくださった修学旅行の荷物を持って、僕は2組の佐藤君と集合場所へ向かった。
新幹線に大勢で乗るのは初めてだったので、皆楽しそうだった。もちろん僕もついついはしゃいでしまった。
岸本先生からご注意をいただき、深く反省した。これからは公共の乗り物でのマナーを忘れないようにしたい。
新幹線を降りるとクラスごとに分かれて大型のバスに乗って、観光をしながらホテルへ向かった。
僕は岸本先生から学年代表としてホテルに着いたときに挨拶を述べるように頼まれた。
バスの後部座席で友達の助けを借りながら作文をしていたが、少し気分が悪くなって吐いてしまった。
そのときは辛かったけど、皆が助けてくれたので、今となってはいい思い出だ。
ホテルでは少人数で小さな部屋に泊まったが、翌日のお寺での宿泊は大広間で男子全員で泊まれたので嬉しかった。
夜はクラスに関係なく皆でプロレスごっこをして盛り上がった。盛り上がり過ぎて、先生方に何度もご注意を受けた。
最後にはお寺の住職の方々も注意しに来られたので、少しやり過ぎだったかもしれない。でも、それも含めて楽しい思い出だ。
帰りの新幹線では疲れて寝てしまったので残念だ。もっと皆と遊びたかったけど、充実した2泊3日の旅だった。
素敵な修学旅行に参加できたことで、家族や先生方への感謝の気持ちが一層深まった』
(キシモトのコメント)
『横山、ホテルでの挨拶ありがとう!
途中、体調崩したから心配したぞ!
思い出がいっぱい出来たのはよかったけど、
観光について触れていないのが残念!
バスや宿泊の話もちょっと内容が薄いかなあ。
もっと色々教えてほしかったぞ!
これからも学級委員として皆をまとめてくれな!』
・・・
・・・何が学級委員として、だ。
えらそうに担任ぶったコメントを上から書くな。
と思いつつオレは返却された作文を受け取った。
ビックリマークだらけなのも何だか気に食わない。
何をそんなに驚いたり強調したいのだキシモトは。
観光について触れてないのは本当に心に残ってないからだ。
内容が薄いのは・・・
本当のことなんて学校の授業では書けるわけがないからだ。
さて、『修学旅行の楽しい思い出』本気バージョンを書くとするか・・・
いつか投稿がたまったら電子書籍化したいなあ。どなたかにイラストか題字など提供していただけたら、めちゃくちゃ嬉しいな。note始めてよかったって思いたい!!