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コンゴ民主共和国🇨🇩における紛争に長い影を落としている奴隷貿易の歴史

 4年前(2020年)にテラ・スタイル東京のオンラインイベントで華井和代さんと小川真吾さんの「コンゴの紛争資源問題と新型コロナの影響」と題した講演会と対談を聴いた時の印象が深かったのを思い出したので、書き留めておきたい。
 コンゴの紛争問題は、鉱物資源という経済利権が全面的に影響を与えているのと同時にエスニック・グループの対立の問題も複雑に絡み合っていて、複合的な要因の中で解決が難しい状況が続いているようですが、より根源的には、奴隷貿易の時代に遡る歴史的背景の落とす影が想像以上に大きいということを思い知らされました。自分の認識は甘かったですが、アフリカの部族間での憎悪や対立を煽るような形での奴隷狩りの手法や、現地住民の藁葺きの家を燃やして中から人が出てきたところを一網打尽に捕らえて、抵抗すると容赦なく虐殺したり、また奴隷船で運ばれる間に劣悪な環境下で多くの人が亡くなるというような形で、奴隷貿易の時代に亡くなった人は、正確な数字は分からないそうですが、1億5千万人とも言われており、18世紀初頭の世界人口の4分の1に当たるそうです。それぐらい大きな、歴史上かつてなかったほどのインパクトを与えた人道危機だったということが、いわゆる先進諸国の人間にはなかなか理解されていない、という指摘はなるほどと思いました。その後のベリリン会議によるアフリカ分割から始まる植民地統治の歴史の中で、奴隷ではなく今度は資源・原料の獲得のためにヨーロッパ人がどんどんアフリカの内陸に入っていって、植民地時代以降、今に至るまで、資源というものがアフリカの人々を痛めつけているという非常に長いスパンで捉えるべき歴史的課題だということを再認識しました。Black Lives Matter運動が世界中に拡がって、イギリスで王立アフリカ会社の奴隷商人コルストンの銅像が引き倒されたり、オックスフォード大のセシル・ローズ像が撤去されましたが、近代世界システム総体が根源的に問い直される時機の到来を感じます。日本にはそういう機運が全く感じられませんが、広いスパンで堀田善衛の言う「歴史の長い影」を捉える必要を改めて感じます。

参考文献①:布留川正博『奴隷船の世界史』

参考文献②:マーカス・レディカー『奴隷船の歴史』

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