マレーシア🇲🇾の映画監督ヤスミン・アフマドの遺作『タレンタイム~優しい歌』視聴メモ
2009年7月に亡くなったマレーシア🇲🇾の監督ヤスミン・アフマドの遺作で最高の音楽映画と言われる『タレンタイム~優しい歌』を観た。マレーシアの高校の一大イベントである音楽コンクール「タレンタイム」に出場する高校生たちとその家族を切なく描き出した映画で、それを包み込むようにして流れる歌や音楽がよかった。ドビュッシー「月の光」も効果的に使われていた。
主軸をなすのは、ムルー(マレー系の裕福な家の長女で、ピアノの弾き語りが上手い女子高校生。父親は英国系)とマヘシュ(インド系の母子家庭の男子高校生。聴覚障害を持つ)の異性愛主義的メロドラマですが、他方において、多民族・多言語・多宗教で知られるマレーシアのマレー系、中国系、インド系といった民族間の関わり合いや葛藤、反目、ムスリムとヒンドゥーの諍い(というより、個人的な争いが起きると、それが民族や宗教の名前で語られてしまう、という側面もある)などの社会の現実を描き出しながら、それを乗り越えるような契機を通して、決して順風満帆ではないが多民族共生のありようを監督は示しているように思いました。
この映画を知ったそもそものきっかけは、2022年1月に開催された南・西アジア文化芸術研究会「シャヒーンの会」第4回オンラインセミナー「アラブ、イランの女性映画監督 ~イスラーム映画祭7の上映作品を中心に~」の時に、シャヒーンの会を一人で立ち上げた主催者の毛利奈知子さんが愛してやまない映画として紹介していたのがこの『タレンタイム』で気になっていた。