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敗戦直後、日本政府によって作られたRAA(Recreation and Amusement Association;特殊慰安施設協会)などの占領軍「慰安所」の実態

RAA(特殊慰安施設協会)についての基本情報がうまくまとまっているブログ記事がこちら。

http://shibari.wpblog.jp/archives/6937

   特殊慰安施設協会。敗戦後直ちに始められた国家事業。こういったことは、ほとんど知られていない。まさにこの時、広島、長崎の被爆者は、焼け跡の草を毟り、雨水を飲むなどして、地を這って生きていたというのに。敗戦から僅か3日後の8月18日、東久邇内閣は、国営の慰安施設設置を決定、設立に向け動き出した。生きるため…食糧支給の言葉につられ、「慰安婦」募集に集まった女性の多くが素足だった…。慰安所の設置は、"華族や財閥など、特権階級の女性達を占領軍から守るため" だったとされる。
『戦後日本の性風俗産業は、政府主導で構築されたと言ってよく、下っ端の警察とヤクザが癒着していたなどという性質のものではない。』
『今でも、日本の体制は、売春・人身売買というテーマに敏感な性質を持つ。それは体制の歴史のうち、枝葉というよりむしろ、根幹だったからである。』


ドウス昌代さんが取材されたドキュメントは重要な著作だろう。

作家の乃南アサさんもRAAを題材とした小説『水曜日の凱歌』を書かれている。

http://www.shinchosha.co.jp/book/371015/

前田陽一監督のデビュー作『にっぽん・ぱらだいす』(1964)にもRAAが出てきたように記憶している。

視聴メモ📝:売春防止法成立前後の時代を描いている。女郎屋(業者)の息子役(倉本さんの2代目)を長門裕之が演じる。「水揚げ」という用語が普通に使われてた。玉割(ぎょくわり):芸娼妓が所得する玉代の割前。一週間目とか十日目ごとに抱え主から抱え妓へ玉代の分け前をすることをいう〔花柳界〕。「2号」は情婦、妾という意味?映画の中で「がめつい奴」という言葉が使われていた。桜原の性売買女性(売春防止法が出来るとおっぽり出されるから防止法に反対)が、全学連によって赤線を残すよう協力を要請するシーン。長門裕之は最初は親父の商売を恥じていたが、親父の死後は商売を継ぐ、しかし親父の商売が不幸な女たちから搾取したとの認識あり。それを償うために更生させてやりたいと語る。トルコ風呂に改装工事。左頬にホクロのあるミッちゃん。組合の役員のハルミが店の12人で、アメリカ軍基地にできたトルコ風呂で契約して前金貰った。トルコ風呂は新しい売春の形態。ミツコは最後に毒で自殺。


2024年8月16日に放送されたNHKスペシャル「グランパの戦争〜従軍写真家が遺した1千枚〜」では、オランダ人従軍写真家ブルース・エルカスの遺した写真の中からRAAの内部と見られる写真が発掘されていた。

この番組は、オランダに暮らす写真家のマリアンさんが、太平洋戦争に従軍した祖父ブルースが遺した1千枚の写真に向き合い、日本で調査する姿などを追ったドキュメンタリー。ブルースの遺した写真には硫黄島での兵士たちが経験した悲惨な戦場の姿が、生々しく映し出されていた(番組前半)。さらに占領下の日本で撮影された写真には、進駐兵向けに設置された慰安施設の内部と見られる写真も含まれていた(番組後半)。1千枚の写真は、不都合なものは覆い隠されてしまう、戦争と占領の現実を私たちに教えてくれる。

意欲的な素晴らしい番組だったが、1点気になったところがあった。それは、進駐軍のために作られた慰安施設の写真を見せた後、マリアンさんが専門家の平井和子さんを訪ねるシーンで、マリアンさんの発言のみが使われて平井和子さんの発言が全く出てこないことである。このような編集は通常あり得ない。何か特別な事情があったのではないか。

以下、そのシーンのナレーションと、テロップ。
(ナレーション)
兵士と裸の女性の写真。専門家によると、占領下の日本に存在した進駐兵向けの慰安施設とみられる。性行為を行なう施設内部の写真はこれまで見つかっておらず、占領の内実に迫る写真と注目されている。この写真は神戸の慰安施設にあったとみられるダンスホール。料金表にはダンス代やビール代に加えて、時間あたりの女性の金額が明記されている。さらにブルースが女性と口づけする写真も残されていた。
(ナレーション)
専門家を取材したマリアン。慰安施設の設置を日本政府が主導していることを初めて知った。
(テロップ)
女性たちの境遇は少なからず彼女たちに責任があると私たちが考えがちで、彼女たちの置かれた状況を理解することができていません。正直なところ最初は単なる売春宿だと思っていましたが、政府が関わっていたことを知り、心が痛みました。写真の中で彼女たちは笑っていますが、決して笑顔でいられるような状況ではなかったと思います。

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