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西田幾多郎と藤岡作太郎、ヤン・コハノフスキ、ジョーン・ディディオン、木下利玄、中原中也、室生犀星
西田幾多郎の亡児哀悼のエッセイ「我が子の死」は名文章だと思う。ヤン・コハノフスキ『挽歌』も忘れがたい。白樺派の歌人、木下利玄が「加賀(かか)の潜戸(くけど)」詣でで詠んだ歌も印象深い。
藤岡作太郎『国文学史講話』の序文を同郷の親友である西田幾多郎が書いているが、藤岡は西田と同じ頃に7歳の娘を亡くしており、同じ経験をした西田に寄稿を頼んだという。
荒木浩さんの論文 「編纂動機と逸話配列―紀貫之の亡児哀傷をめぐって―」(『日本文学』2015年7月号、日本文学協会)も読んだが、土佐日記の亡児哀傷の主題もこれに連なるものだろう。
16世紀ルネッサンス期のポーランド最大の詩人ヤン・コハノフスキは、ポーランド文学の古典の筆頭に挙げられる人物で、ポーランドの小中学教育ではどの学年でも必ずヤン・コハノフスキの詩が扱われるほどである。『挽歌』はコハノフスキ自身の幼くして亡くなった娘オルシュラの死を悼む19篇の連作詩である。
アメリカの小説家・脚本家ジョーン・ディディオン(Joan Didion)の大切な人を喪った経験についての言葉も心をうつ。2003年、一人娘のクィンターナが意識不明の重体で入院する最中、夫のジョンが心臓発作で急死。一時は病から回復したクィンターナも不慮の事故でその2年後に逝去。ディディオンは『悲しみにある者』The Year of Magical Thinking『さよなら、私のクィンターナ』Blue Nights』という2冊の本を書くことで2人の死に向きあった。Netflixのドキュメンタリー映画『ジョーン・ディディオン ザ・センター・ウィル・ノット・ホールド』Joan Didion: The Center Will Not Holdは、甥であるグリフィン・ダンがメガホンを取った。
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「加賀(かか)の潜戸(くけど)」と呼ばれる、島根半島の日本海に面した岬のところにある洞窟は旧潜戸(仏の潜戸)と新潜戸(神の潜戸)があり、特に仏の潜戸は賽の河原の伝承が残る場所で、小泉八雲が紹介して知られるようになった。
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島根県文学館推進協議会編『続 人物しまね文学館』(山陰中央新報社、2012年)によると、長男・次男を相次いで亡くした木下利玄(岡山県出身の白樺派の歌人)は加賀の潜戸を訪ねて、第二歌集『紅玉』(1919年)に収めた出雲詠71首中、「加賀の潜戸」と題した日本海詠を50首残している。
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