見出し画像

尹錫悦大統領の‘非常戒厳宣布’ 事態 12・3「親衛クーデター」失敗とその後(随時更新)

・「死ぬ覚悟で来た」…尹錫悦大統領の‘非常戒厳宣布’に抗った韓国市民、背景に民主主義の歴史
徐台教ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長  2024/12/4(水) 11:06

・K.J. Noh(アジア太平洋の地政学と政治経済を専門とする政治アナリスト、教育者、ジャーナリスト)の記事「韓国の6時間戒厳令」
2024年12月3日

戒厳令が取り下げられても、米国がこの事態をどう見てどんな干渉をしてくるかも考えると予断を許さない状況です。

・Tim Shorrock の論説「South Koreans Defy Biden's Man in Seoul」

・高井弘之さんFB投稿(2024/12/4):

「日本の植民地支配からの「解放」後の朝鮮半島南半部ーー韓国の歴史は、よく、「独裁政権に対する民主化の歴史」として描かれますが、この「独裁政権」は、元々、日本の植民地支配時代に日本の支配に協力した「親日派」勢力であり、その後の支配者・米国を後ろ盾とする「親米派」勢力でもありました。したがって、「民主化」の闘いとは、この「親日派ー親米派」権力とその背後の米日・国家権力との闘いでもありました。
それは、言い換えれば、植民地主義・帝国主義勢力に対する、反植民地主義の闘いという性格も合わせ持つものでありました。尹政権も、この「親日派・親米派」勢力の系譜の中に在りました。
したがって、尹政権の崩壊ー打倒は、この間、米日政府が、フィリピンのマルコス政権と尹政権を取り込んで精力的に行って来ていた、「対中国軍事包囲網」の一角を崩していくことにもつながっていく可能性を持つものとも言えると思います。
マルコス政権になって、米日との軍事協力関係を進め、深めているフィリピンでも、米国と一緒になって中国と敵対する現政権の姿勢を、戦争を招くものだとして反対する大きな動きがあるようです。
このような東アジアの状況を前にして。
日米NATOを中心とし、フィリピン・韓国・オーストラリアを加えた、「中国への戦争態勢ー軍事包囲網」(ーー東アジアに敷設された「戦争への導火線」)を崩し、東アジアでの戦争を起こさせないために、
現在、急ピッチで進められている日本の「対中国戦争態勢」を崩す、私たち日本の市民・民衆の闘いーー力が、いま、問われていると思います。」

・NPA-TV緊急速報【韓国情勢】尹錫悦大統領の戒厳令その後 解説;李泳采 恵泉女学園大学教授

・ハンギョレ新聞「尹錫悦大統領の戒厳暴動」が内乱罪にあたる3つの理由【寄稿】

・真鍋祐子「韓国の「戒厳令」は、なぜ一夜にして潰えたのか? 背後にある「韓国が経験してきた30年の歴史」」2024.12.04

・吉高叶さんFB投稿:

「韓国大統領による戒厳令発動事件に思うこと。
尹ソンニョル大統領は、北朝鮮との敵対関係を固定化させ、韓米、日米韓軍事連携を強めることに政治的な力点を置いてきました。
そのために、邪魔になる日韓歴史問題を凍結し(徴用工問題を日本政府と日本企業に配慮するかたちで終結させ)、韓国内の人権・平和勢力、北との対話勢力を封じ込めたり、圧迫を加えてきました。
また、ロシア・ウクライナ戦争に対しても武器供与を表明するのみならず、韓国軍の派兵まで念頭に置くことで、あの戦いの構図を朝鮮半島にそのまま導入しかねない危険を帯びていました。
そのように、世界や自らの地域にある歴史的禍根の問題や、地政学的な緊張と危機とを、解消する方向で努力するのではなく、むしろそれらを利用して政治的、軍事的プレゼンスを高めようという考えの人物、それが尹ソンニョルという人だと思います。
そのような人物は、自ずと何に結びつきやすくなるのか、どういう思考性を持つようになるのかが伺い知れます。
「民主主義を守るために」と言いながら、頭の中では民主主義を邪魔に思っており、むしろ独裁的な手法に憧れているのです。自分の支持率の低さを自省的に分析することができず、すべて野党や革新的勢力のせいにして、それらを排除・殲滅することが正義、自分のしようとしていることは正義そのものであり、そのためには権力・暴力の使用は正当であるのだ、と、短絡的に考えるようになります。考えるだけでなく思いつきでやってしまう。とても短慮で幼児性の強い姿だと言えます。
ただ、こうした人物を、「日本の歴史問題を解決した優秀な人物としてもてはやしてきた日本政府や一部のマスコミ人たち」の責任は重いと思います。
思えば、韓国民衆の大多数の反対を押し切って日韓条約締結へと焦った、時の独裁大統領・朴正煕に与して条約を締結し、戦後賠償や歴史問題を終結させようとしてきた日本政府。あの条約締結によって韓国社会の独裁体制、戒厳状態はその後20年も横たわっていきました。あの時の日本政府の対韓国観は、依然として改められることなく、今日まで続き、今回のような暴挙のスイッチを押してしまう尹大統領をつくりあげて育ててしまったと言えます。
日韓関係と韓国戒厳状態というものには、連関があるのです。人ごとのように眺めていてはならないのです。
来年、日韓条約60年という節目を迎えますが、あの条約が持っていた誤りの深部を見つめ、しっかり検証していかねばならないと考えています。
韓国社会が今回の事件によって被った痛みか癒やされるように、そして今回の事件を通して民主主義を勝ち取る民衆の力を強められますようにと祈ります。
          吉高叶」

・安田菜津紀さんのdialogue for peopleのラジオ、次週2024年12月11日(水)21時からの配信は「韓国文学と民主化」をテーマに、真鍋祐子さんをゲストにお迎えします。戒厳令と軍の国会への侵入は、ノーベル文学賞を受賞したハン・ガンさんの作品にも描かれた、あの民主化運動への弾圧を思わせた。

・弾劾不可避!流血は避けられるか?内乱罪での逮捕が焦点
詳細解説です
1:00 当日の夜はどう過ごした?
5:00 1か月前から毎週土曜日、デモに数十万人
13:10 戒厳令当日のプレイバック
19:45 無謀すぎるクーデター計画 
    ハンガン作家のノーベル賞授賞式が数日後
    映画「ソウルの春」1300万人が視聴
24:50 「たとえ今日、命を落とすことになっても」 機関銃の前にたった英雄たち
40:30 日本では報道されてこなかった…「親日」大統領は稀代の「暴君」
54:20  土曜日デモ 国会前に市民が集まり弾劾決議を!!
1:02:20 ユンソクヨル弾劾で終わらせず 「ユンソクヨル防止法」大統領権限の制限が準備中
#韓国戒厳令 #ユンソクヨル逮捕 #ユンソクヨル内乱罪 #ハンガン韓江ノーベル賞

・2024.12.07 국회의사당 앞 国会議事堂前

・【社説】尹錫悦弾劾案を廃棄させた韓国与党、歴史と国民に対する裏切りだ 2024/12/8(日) 10:44配信

・2024年12月4日、オンライン上では国会付近で一人の兵士が頭を下げる姿がシェアされた。この映像を投稿したYouTubeチャンネル「TVホ・ジェヒョン」の運営者は、「今日、抗議のために国会前に集まった市民たちに、頭を下げて『申し訳ありません』と伝えて去っていった一人の戒厳軍兵士がいた」と説明した。
「ひと目で分かるほど真っ直ぐな印象のその戒厳軍の青年。眼鏡越しに透けて見えるその澄んだ瞳を見た瞬間、私は全ての怒りが消え、計り知れない哀れみと感謝の気持ちを同時に感じた。追いかける私に何度も頭を下げて『申し訳ありません』と言ったその短い瞬間に、あなたの真心を感じた」と述べ、「どうか健康に軍務を終え、元気な青年として私たちの社会に戻ってきてほしい。本当にありがとう」と付け加えた。

・欠席の与党105議員を1面にずらり 韓国2紙、弾劾訴追「妨害」批判
『韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する弾劾訴追案が廃案となったことについて、韓国の進歩系の2紙は9日付朝刊1面トップで、7日に国会で行われた採決に欠席した保守系の与党「国民の力」の議員105人の顔写真と氏名を掲載した。
 進歩系の最大野党「共に民主党」は14日に2度目の弾劾訴追案を採決する方針。野党勢力は、与党に対する圧力を強めている。
 顔写真を掲載したのは「ハンギョレ」と「京郷(キョンヒャン)新聞」。ハンギョレは「採決に不参加だった105人の名前と顔を記録に残す」と記した。京郷は105人の顔写真、氏名に加え選挙区も記し、尹氏の弾劾訴追を「妨害した」と批判した。
 弾劾訴追案は、尹氏による「非常戒厳」の宣布を違憲として野党が提出。可決の条件は、国会議員300人のうち3分の2に当たる200人以上の賛成だった。野党と無所属議員は計192人で、可決には与党議員108人のうち8人以上が賛成する必要があった。
 与党は「反対」の方針を決め、大半が採決を欠席。3人だけが投票した。投票数が200票に満たず、弾劾案は廃案となった。【ソウル福岡静哉】』(毎日新聞 2024年12月9日)

・大統領の弾劾案再提出へ 韓国、与党造反が焦点 12/12(木) 5:17配信

・速報 大統領(尹錫悦)弾劾訴追案が可決!
朝日新聞デジタル 尹大統領の弾劾訴追案が可決、職務停止に 弾劾審判で罷免を判断へ
ソウル=貝瀬秋彦
2024/12/14 17:01

・「今日、韓国は国民の政治行動という下からの力に支えられている東アジアで唯一の民主主義国家である」元CIA分析官チャルマール・ジョンソン著『アメリカ帝国への報復』(集英社/2000年)
"오늘날 대한민국은 국민의 정치적 행동이라는 아래로부터의 힘으로 지탱되는 동아시아 유일의 민주주의 국가다." 『미국 제국의 보복』 전 CIA 분석관 차르말 존슨 저,『미국 제국로의 보복』(슈에이사/2000년)

韓国・尹錫悦大統領の弾劾可決 職務停止へ:日本経済新聞

・徐台教さん(ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長)の記事「弾劾案可決で尹錫悦大統領「職務停止」…韓国‘政治改革’に4つの好条件」
2024/12/14(土) 19:18

・第二次弾劾投票同時間帯解説(李泳采教授)
12月13日、韓国国会前では300万人が、オンラインでは世界中から多くの市民が見つめる中、弾劾投票が可決されました。その同時間帯にNPA-TVにて実況解説を配信したもの。

・NPA-TV 第4回
「奇跡的に失敗した今回の軍事クーデター。尹大統領が弾劾されない限り第二、三のクーデターを企てるだろう。その時には流血も辞さないだろう。若い軍人たちが市民に銃を向ける可能性。韓国の悲劇となる」
そうさせないために。
 第4回が公開中! 

・ハンギョレ新聞 記事「『私はいわゆる酒場の女ですが』…弾劾集会に立った女性に、韓国市民ら拍手と歓声」 2024/12/14

「ソウルの地下鉄では今でも障害者の移動の権利が保障されておらず、女性に対するDVが、性的マイノリティのための差別禁止法(の不備)が、移住労働者の子どもたちが受ける差別が、そして全羅道に向けられた地域嫌悪などが(依然として)ある」

・朝日新聞デジタル 連載:インタビュー
(インタビュー)戒厳令とたたかう 社会学者・真鍋祐子さん   2024/12/20 5:00

韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が突如宣告した「非常戒厳」は、同国のみならず世界を震撼(しんかん)させたが、市民や政治家らが映画さながらに軍人に立ちむかい、わずか数時間で撤回に追い込んだ。人々はなぜ行動したのか。できたのか。隣国の民主化の歩みを静かに見つめ、寄り添ってきた真鍋祐子さんに聞いた。

 ――「非常戒厳」の報を聞いた時、まず何を思いましたか。

 「私は韓国の民主化運動の犠牲者の遺族会と30年間、交流し、研究してきました。ニュースを見た瞬間、犠牲者や遺族らの顔が頭の中にわっと浮かんで来て、尹大統領へのえも言われぬ憤りを覚えました」

 「韓国は1987年に民主化されました。その際の6月抗争で催涙弾を受けて亡くなった李韓烈(イハンニョル)さんのお母さんが、かつて私に話してくれた言葉を思い出しました。彼女は泣きながら、こう言いました。韓国の民主化は多くの犠牲の上にもたらされた。その民主化にあぐらをかいて、何ごともなかったかのように振る舞うのは、犠牲者の命をむだに盗む泥棒みたいだと」

 「軍を使って人権を侵害しようとしたこの非常戒厳は、犠牲の上に勝ち取った憲法を破壊する行為で、彼女の言葉を借りれば泥棒そのものだと思います」

 ――幸いにも「非常戒厳」は早期に収束しました。国会には多くの市民たちがすばやく駆けつけ、兵士らともみ合いになりました。なぜこんな行動がとれたと思いますか。

 「韓国の歴史で、非常戒厳令が最後に出されたのは80年5月17日。そして戒厳軍が民主化を求める人々を弾圧し、多くの犠牲者を出す光州事件が起きました。今回すぐ国会に向かったのは、この時代を体験した人々が多かったようです」

 「戒厳令下に置かれると、市民生活がどうなるのか、戒厳軍が光州で何をやったか、自ら経験して知っているのです」

 ――国会議員も与党の一部を含めた190人が参集し、全員一致で解除要求決議案を可決し、軍は撤収しました。

 「知り合いの韓国人研究者がSNSにこう書いていました。集まった議員たちの多くも民主化の闘士で、軍事独裁の時代には投獄や拷問もいとわず運動を続けてきた。現在は保守側にいる議員もいるが、民主化運動の経験があるから、あれだけの判断力と瞬発力を発揮できた。そのころ何度も司法試験に落ちて勉強ばかりしていた尹大統領には、議員があの時間に、塀をよじ登ってまで集結するとは想像もできなかっただろう、と。私もうなずきながら読みました」

 ――駆けつけた市民と政治家のすばやい行動が戒厳令を撤回させたというわけですね。

 「いえ、実はその2者だけではありません。国会に集まった人々に、コーヒーやギョーザなどをふるまって支援している市民の存在も見逃せません」

 「光州事件では、市場のおばさんたちが市民軍におにぎりをふるまいました。韓国では『大同精神』と呼びます。行動する政治家と市民、それを支える市民という3者が存在する現在の姿に、まさに光州事件の経験が反復されていると感じます」

     ■     ■

 ――前回の戒厳令を出した全斗煥(チョンドゥファン)時代を描いた映画「ソウルの春」が韓国でヒットしたことも、今回の市民の行動に影響したのではないかと言われます。

 「私は『ソウルの春』だけではないと思っています。近年の韓国映画というのは、光州事件を描いた『タクシー運転手 約束は海を越えて』や『ペパーミント・キャンディー』など、目を背けたい過去や軍事独裁時代の凄惨(せいさん)な歴史といった現実に起きた社会問題に切り込む作品を作り続けてきました。現実を直視するエンタメがもたらした波及力も、広い意味で光州事件の教育効果だと思います」

 ――光州事件は44年も前の出来事ですが、その重みとか経験が残っているのですね。

 「光州事件は韓国社会で長くタブーとされてきました。何か触れてはいけないような。87年の民主化宣言、翌88年の事件に関する聴聞会が開かれてから、やっと語られ始めました」

 「でも事件の真相を知らせようと、事件直後の80年5月、6月とソウルでは投身や焼身による自殺が相次ぎました。一人でも多くの人にわかってもらおうとわざと人通りの多い場所を選んで衆人環視の下で抗議の死を遂げた人がいたのです」

 「今の国会議員はそんな悲惨な死を直接間接に見てきた人が多い世代です。知り合いの映画監督は、火だるまになった人が身を投げ、自分の真横に落ちてきたという体験を持っています。華やかな韓国とは別の、日本にいる我々からは想像もつかない過酷な経験をした人がたくさんいる。そんな人たちが口々に言うのは、民主化で亡くなった人たちに恥ずかしくない生き方をしよう、ということです」

     ■     ■

 ――光州事件を題材に「少年が来る」を書いたハン・ガンさんが今年のノーベル文学賞に決まったのも、どこか因縁めいている気がします。

 「光州事件は韓国現代史のパンドラの箱を開けたと言えます。権力が葬り去ろうとしていたそれ以前の事件、例えば済州島で警察などが住民を虐殺した48年の『4・3事件』や、朝鮮戦争時に起きた事件などを徐々に掘り起こしていきました」

 「ハン・ガンさんが『少年が来る』を書いた後、光州事件よりも30年以上前に起きた4・3事件を題材にした『別れを告げない』にさかのぼったのは、それを書かざるをえないと考えたからではないでしょうか」

 ――韓国では朴槿恵(パククネ)大統領も市民らが街頭を埋める「ろうそく集会」が契機となって罷免(ひめん)されました。当時と今との共通点や異なる点がありますか。

 「戒厳令の解除後も尹氏の退陣などを求め、老若男女問わず広場を埋め尽くしているのは前回と同じです。非暴力で勝てた自信と、その経験に基づく信頼感から行動するのでしょう」

 「一方、これまでとの違いも多いと思います。一つは今回、労働歌のような民衆歌謡ではなく、K―POPが流れて人々がペンライトを振る中で、若い女性が目立つことです。80年代から朴政権を倒すまでの運動は、女性が周縁化されるなど男性中心主義的で、マッチョな面が強かった。私はこれを『87年フレーム』と呼びます」

 「それが女性運動の高まりが影響しているのか、今回からは明らかに変化してきているように見えます」

     ■     ■

 ――尹大統領は「非常戒厳」の理由を「(北朝鮮に服従する)従北勢力を撲滅し、自由憲政秩序を守るため」としました。韓国では北朝鮮問題をはじめ、左右の理念対立の深刻化が指摘されてきました。

 「韓国には今も国家保安法があります。韓国政府を樹立した48年に当時の李承晩(イスンマン)大統領が、反対勢力にアカのレッテルを貼り、社会的に抹殺するために制定した法ですが、これは大日本帝国期の治安維持法を下敷きに作ったといわれます。社会の両極化を制度として正当化している側面があり、そこにはかつての日本も深くかかわっているのです」

 「両極化に拍車をかけてきた要因は、民族が分断している現状にあります。朝鮮戦争も4・3事件も、犠牲者は対米従属的なイデオロギー内戦に巻き込まれたことが、民主化を求める運動の中でわかってきた。国際情勢や大統領の性格も影響するでしょうが、分断体制が続く限り、陰謀論だなんだと言い合っても、厳しい対立を克服することはできないのだと思います」

 ――とはいえ、朝鮮半島の分断がすぐに解消できるわけではなさそうです。隣国でもある日本は、そういう韓国とどうつきあっていくべきでしょうか。

 「私は、日本のメディアが韓国の政権を『親日』『反日』の二元論で一刀両断に報じるのを見て、とても頭に来ています。日本にとって心地良い政権であれば『親日』としているようですが、これはとても幼稚な二元論です。韓国では、かつての大日本帝国に親和的で、その時代からの既得権層やエスタブリッシュメントとして享受する構造を良しとする考えの持ち主を『親日』と呼ぶのです」

 「相手の国のことを知らずに外交はできません。国際的にも韓国のプレゼンスは増してきており、いつまでも上から目線で対応し続けるわけにはいかない。歴史問題も避けて通るべきではありません」

 「喫緊の課題は、休戦しているにすぎない朝鮮戦争を米国と北朝鮮の間で終結させること。そうでなければ分断体制は続き、国家保安法もなくなりません。再び韓国で、非常戒厳が出されかねない。日本も朝鮮戦争の終結を歓迎すべきです」(聞き手・箱田哲也)

     *

 まなべゆうこ 社会学者(韓国民主化運動研究) 1963年生まれ。北九州市出身。秋田大学などを経て、現在は東京大学東洋文化研究所教授。著書に「増補 光州事件で読む現代韓国」など。

・응원봉 든 2030 여성들 향한 찬사... 하지만 이런 일도 있었다

ペンライトを振る若い女性への賛辞...だがこんなことも
尹錫悦弾劾とともに取り組むべきこと
オーマイニュース 2024.12.18 グリーンピース活動家 シン・ミンジュ

8年前、やはり今時分の寒い季節に光化門広場にいた。朴槿恵政権下でいわゆる崔順実ゲートが発覚したからだ。100万人以上の市民が集会に参加し、私はその中の「フェミゾーン」と呼ばれる区画にいた。若いフェミニストを中心に作られた区画だ。

多くの人がキャンドル集会を美しいできごととして記憶している。市民の力で民主主義を勝ち取り、100万人以上の市民が心を合わせて正義に悖る大統領を追放したイベントとして。だが、そこでは明るいとはいいがたい事件もたしかに起きていた。大半は大統領が女性だったゆえに起きた事件だった。

大勢が大統領を批判するのに差別的な表現を使った。「ミス・パク(ミス+姓の呼称は女性事務員を代替可能な存在と見なす過去の職場慣行に由来する差別表現)」、「女こども」、「アマ」など、記憶している限りでも数十にものぼる。直前で中止されたものの、女性差別表現を含む歌を作った歌手のライブが予定されたこともあった。会場で痴漢被害が発生したこともあった。その結果、会場に安全な区画が必要だという声が上がり、さらには集会そのものを安全にしていかなければならないという議論が展開された。

そこで生まれたのが「フェミゾーン」だ。フェミゾーンに集まった若いフェミニストたちは、差別的な発言をした者にヤジを飛ばしたり、SNSで抗議メッセージを送ったりして主催側に謝罪を求めた。いくつかは成功し、いくつかは失敗した。

あの空間の記憶は強烈に残っている。それは「朴槿恵退陣」というひとつの目標のもとにいかに多くの多様性が含まれるべきか教えてくれたからだ。ゆえにせっせと集会に出かけ、会場ではふたつのことを堅く信じようと努めた。ひとつは人生で弾劾集会はこれで最後だろうという点、もうひとつは、より多様な人々の尊重される社会が弾劾後に幕を開けるだろうという点だった。

なぜ女性ヘイトの動きは集会の内でも外でも繰り返されるのか

あれから8年、尹錫悦弾劾という新たな局面が訪れた。それも戒厳という、歴史書でしかお目にかかったことのない事件からすべてが始まった。弾劾集会など二度と参加したくなかったが、結局はまた集会に出かけることになった。そして8年前の集会でぶつかった問題に、またもや出会った。

集会では大統領退陣の根拠についての発言が続いた。だが、すべての発言が対等に尊重されはしなかった。若いフェミニストの活動家がステージ上で発言を始めると、一部からヤジや非難が飛んだ。

そんなさなか、蔚山での集会で10代の男が20代と40代の女性に暴行して逮捕される事件が発生した。また、性的暴行事件で2次加害の加害者として実刑を言い渡された人物が集会のお膳立てをする主要団体の代表者となり、ふたたびステージに立つ機会を得た。

会場に若い女性が目立ったことがネタとして消費されたりもした。若い男性が参加したなら、はたして「映え目的の集会参加」とか「追っかけ」とか言われたろうか。ある哲学教授は、「20~30代の男性に朗報。(集会には)うはうはいるぞ、女性が」とポッドキャストで話して炎上した。集会に参加する若い女性を個々の政治的主体として見ず男性の恋愛対象と捉える表現は、古くから数限りなく繰り返されてきた。

尹錫悦とともに弾劾すべきもの

若い女性たちの振るペンライト、国会前に流れた少女時代の歌「Into the New World」、ウィットに富んだ色とりどりの旗は、デモ文化の新たな構成要素となった。なのに差別、性暴力など、女性たちの訴える問題は往々にして軽く扱われた。

なぜこれらの問題が繰り返されるのか。いまなお、社会には重要な問題とさして重要でない問題があると思っている者がいる。重要な問題の解決を訴える場に、さして重要でない問題を持ち出す人間は我慢ならないという者もいる。彼らには尹錫悦弾劾は重要な問題だが、その他の問題はさして重要でない問題なのだ。だが実際、尹錫悦弾劾集会に参加した人々は、たったひとつの理由のみでやってきたわけではない。

弾劾されるべき理由は戒厳だけではない。国会決議に対して25回も発動した拒否権、福祉予算の削減、気候リスクへの安易な対応、各種社会問題への責任回避など。戒厳以前からすでにさまざまな問題が存在していた。さらに、一人ひとりの個人的な理由もある。高騰する物価や社会のアイデンティティ尊重意識の欠如、豊かな自然環境を求める思いなど。個人的な理由が政治にかかわるものなら、それらすべてが弾劾の理由になりうる。

それぞれがさまざまな理由で国会前に集まったなら、そこで繰り広げられるべきは「尹錫悦弾劾」だけではなかろう。誰にもそれ以上のものをゲットする権利がある。戒厳後に破壊された日常を取り戻すプロセスは、戒厳前の日々に戻るのではなく、よりよき生き方を享受しうる枠組みを整えることにある。その意味で追い出すべきは大統領でもあるが、そこで深まった不平等、後退した気候政策、女性へのヘイトや劣悪な雇用でもある。

「尹錫悦弾劾」しか認めない集会では「尹錫悦弾劾」しか手に入れられない。私たちの求める民主主義がそれ以上のものを内包すべきなら、なぜそこに集まったのか一人ひとりの理由を聞くことが必要だ。さまざまな物語を受け入れるには尊重はマストだ。平等な集会の場にするにも尊重が採用されなければならない。

多様性は民主主義の力

にもかかわらず、この集会が8年前の時間に留まっているとは評価したくない。私たちの手で変えたものも歴史の中にきちんと記憶されなければならない。平等な集会のための約束がステージで読み上げられ、多くのセクシャルマイノリティのグループや障害者差別の撤廃を求めるグループ、フェミニストたちがそこにいた。よりよい社会を目指すさまざまなアイディアも提案された。8年前に比べて、たしかに私たちは多くの変化をなしとげた。それは8年前にフェミゾーンを設けた人々と、今回ここで変化を要求する市民がいたからこそ可能だった。

12月14日、国会はついに弾劾訴追案を可決した。これからは弾劾後にいかなる社会を作るべきか、本格的に考える時期だ。その方法も集会で必ず記憶されるべきことに見出せるはずだと信じている。

仕事で集会に参加できない人々が参加者のためのコーヒー代を肩代わりし、集会の主催団体へのカンパも相次いだ。若者と一緒に歌おうと「Into the New World」の歌詞を覚えた大人たち、闘争歌も歌いたいと言う若者。わが子と集会に参加したいという親たちのために、家族旅行に当てるつもりだった資金を投じて親子で行ける貸切バスを用意した者もいた。集会では衝突も目撃したが、包摂も目にした。

民主主義の力たる多様性を広げるには排除や排斥ではなく包摂を選ばなければならない。全員が一丸とならないとひとつのことを主張できないというのは錯覚にすぎない。むしろ新たな社会を目指す個々の望みが包摂されるとき、よりよい民主主義を作ることができる。

生態系、民主主義、さまざまな生の存在を支えてきたのは、単一性ではなく多様性だった。民主主義が必要だと語るだけではなく、その先に「いかなる」民主主義が必要なのかを語るべきときだ。この時間が政治のみならず私たちの日常を変える時間になってほしい。私たちの立つこの広場は民主主義の最終目的地でなく、始まりにすぎない。

・全琫準(チョン・ボンジュン)闘争団に生きる革命伝統〔2024.12.25〕

・ソウル大学校国史学科大学院研究会の声明〔2024.12.20〕

韓国の非常戒厳と弾劾廃案について〔2024.12.9〕

・書評:愼蒼宇『朝鮮植民地戦争』有志舎〔2024.11.22〕

・ 鄭剛憲さんが翻訳された記事。戒厳令宣布による精神的副作用が発生している。急性ストレス障害(ASD;acute stress disorder)と思われる。交感神経の緊張(戦闘モード)が長く続いたためである。よく眠ることができれば良いのですが。リラックスする体操やストレッチなども。

「夜中にまた戒厳が発表されるのではないかという不安から熟睡できず、日中も疲労感が抜けない」「戒厳後、ヘリコプターの音が聞こえるだけで心臓がドキドキし、軍服を着た人を見ると警戒してしまう」「軍経験があるため、戒厳令が他人事に思えない。災害通知が鳴るたびに戒厳関連かと驚いてしまう」「戒厳によって市民に銃口を向ける事態は、戦時動員以上に避けたいことだ」

原文の記事はこちら:

・鄭剛憲さんによる記事の紹介(2025/1/10FB投稿):「尹錫悦を断固守ってきた大統領警護処の朴鍾俊処長が突然辞表提出。
JTBCニュースによると、文在寅政権時代に警護処の警護官と接してきた共に民主党の議員たちは警護官たちのことをよく知っている。MZ世代の警護官たちは、小学生くらいの子どもたちがおり、内乱罪の首魁を守っていれば子どもたちに会わす顔がないと思っているのではなかろうか。一線の警護官たちは職業倫理に従い大統領を守っているとはいえ苦しんでおり、 警護処のなかで亀裂が生じているとの見方が出ている。与えられた任務を職業倫理に従って遂行するしかない警護官たちの悩みは大きい。
息子たちが軍に服務している親たちからすると、息子たちに内乱犯護衛の私兵という汚名を着せられたくない。公務執行妨害罪を犯すために国防の義務を果たしているのではないという思いもあるのだという。」

・ 【緊急NPA-TVライブ】内乱が続く韓国 その展望第1弾!(2025年1月15日午前8時配信)
《尹氏逮捕状執行生中継》

・【緊急NPA-TVライブ】内乱が続く韓国 その展望
 第2弾!(2025年1月15日午後6時配信)
《尹氏の逮捕執行その後の状況》
解説:#李泳采(イ ヨンチェ)  
    恵泉女学園大学教授(日韓/日朝関係専門)

・Yoon’s Failed South Korean Military Coup: Implications For Korea And The World
Wednesday, January 29, 7:30-9:00pm ET
Register Now: https://masspeace.us/yoon-failed-coup

In early December South Korean President Yoon Suk-yeol announced a military coup. Given the Republic of Korea’s brutal history of military dictatorships, thousands of Koreans and opposition parties committed to upholding democracy immediately mobilized and reversed the declaration of martial law in a matter of hours. Yoon has since been impeached and arrested, but whether he will be forced from office remains an open question. Also uncertain are South Korea’s political future, the political turmoil’s impacts on the country’s alliance with the U.S. and Japan, and for the region as a whole, including China.

Francis Daehoon Lee of PEACEMOMO in Seoul has been research professor for peace studies at SungKongHoe University. He served as legal advisor to the Special Rapporteur of the UN Human Rights Sub-commission. He was the former executive director of ARENA (Asian Regional Exchange for New Alternatives, Asia-wide) and worked with several other NGOs in Korea and Asia

Tim Shorrock is a journalist and writer based in Washington, DC. He grew up in Japan and South Korea during the Cold War and has been writing about the US military role in Asia since the late 1970s. In 2015 he was given an honorary citizenship by the city of Gwangju for his reporting on the secret background roleplayed by the US government and military in the events surrounding the 1980 Gwangju Uprising in South Korea and the imposition of martial law. He was a correspondent for The Nation magazine and the author of SPIES FOR HIRE: The Secret World of Intelligence

ユン大統領の軍事クーデター失敗: 韓国と世界への影響
2025/01/30 (木) 9:30 ~ 11:30 (JST)
 12月初旬、韓国の尹錫烈(ユン・ソクヨル)大統領は軍事クーデターを発表した。大韓民国の残忍な軍事独裁の歴史を考えると、民主主義を支持する数千人の韓国人と野党は即座に動員され、数時間のうちに戒厳令の宣言を覆した。尹氏はその後弾劾され逮捕されたが、退陣に追い込まれるかどうかは未解決のままである。また、韓国の政治的将来、政治的混乱が日米同盟、そして中国を含む地域全体に与える影響も不透明である。
 ソウルにあるPEACEMOMOのフランシス・デフン・リーは、聖公会大学で平和学の研究教授を務めている。国連人権小委員会特別報告者の法律顧問を務めた。ARENA(Asian Regional Exchange for New Alternatives、アジア全域)の元事務局長。
 ティム・ショーロックはワシントンDC在住のジャーナリスト、ライター。冷戦時代の日本と韓国で育ち、1970年代後半からアジアにおける米軍の役割について執筆している。1980年の韓国光州動乱と戒厳令発動にまつわる米政府・軍の秘密裏の役割に関する報道が評価され、2015年に光州市から名誉市民権を授与された。『The Nation』誌の特派員であり、『SPIES FOR HIRE: The Secret World of Intelligence』の著者でもある。
アーカイブ配信はこちら。

・東京外国語大学国際日本研究センター 国際シンポジウム「韓国戒厳・内乱事態とその後――東アジアの危機を考える」
日程:2025年3月8日(土)13時から
対面・ZOOM開催(一般公開・事前申込必要)
対面場所:東京外国語大学・海外事情研究所(研究講義棟427)
詳細は、こちらから。

・藤永壮さんFB投稿:「憲法裁判所の弾劾裁判で、尹錫悦大統領は自分の責任を逃れるため、非常戒厳を宣布したが実際には何も起こっていない「湖上に浮かんでいる月影のようなもの」と「詩的」な比喩表現を使って弁明し、話題になりました。

この表現、最近どこかで聞いたことがあるぞ?と思っていたら、やはり「虎の翼」でした。MBCニュース(だったと思う)が、早速出所の可能性を伝えていました。主人公の父親の冤罪事件で松山ケンイチ扮する裁判官が述べた言葉ですが、オリジナルはこの事件のモデルとなった「帝人事件」です。

尹錫悦大統領が朝ドラを観ていたかどうかはもちろん分かりませんが、よほどお気に召したのでしょうか。」

いいなと思ったら応援しよう!