寺田寅彦の初期随筆の名品「団栗(どんぐり)」〜最初の妻夏子との短い結婚生活の想い出〜
寺田寅彦の初期随筆の名品と言われる「どんぐり」の朗読を二回聴いた。短い結婚生活の中で肺結核に冒され一児を遺し夭折した最初の妻夏子との想い出を綴ったエッセーである。小石川植物園に行く話が出てくる。結核患者の当時の社会での扱われ方、随筆中に2箇所も「遺伝」に関する記述が出てくる点は時代背景との関わりで調べたい点である。
「どんぐり」は淡々とした筆致で書かれているが、以下のブログ記事で、夏子と寅彦の学生結婚による若い夫婦生活のことについて詳しく書かれており、結核の療養のため夏子が高知の海辺の村である種崎に半ば隔離され、寅彦の父親の厳命により寅彦は夏子との接触を禁じられたこと、療養先の種崎村でも感染を恐れた村人たちから嫌がられ、夏子は療養先を移らねばならなかったこと、夏子と寅彦の手紙のやり取りは大量に残っているが、実際にはほとんど会えなかったことなどを知り、悲痛な思いに打たれずにはいられなかった。結核患者の当時の社会での扱われ方の厳しさを思う。