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映画『リリィ、はちみつ色の秘密』(2008)〜黒人女性たちのシスターフッド〜

2008年のアメリカ映画『リリィ、はちみつ色の秘密』(The Secret Life of Bees)を観た。描かれているのは公民権法が成立した1964年だが、まだまだ黒人差別は激しく、黒人の選挙権取得への妨害やリンチや暴力が横行している。物語がしっかりした映画だった。まだ観ていない人には是非お薦めしたい。原作はスー・モンク・キッドの小説『リリィ、はちみつ色の夏』。ダコタ・ファニングが主役の女の子リリィを好演していた。幼い頃に母を不慮の事故で亡くしたリリィは黒人の家政婦ロザリンと一緒に、飲んだくれの乱暴でガサツな父親から逃げて、黒い聖母のマークの蜂蜜を販売する養蜂場を経営する裕福な黒人三姉妹の元で暮らすようになる。この三姉妹の特徴的なピンク色の家で開かれる黒い聖母像を囲む集会が定期的に開かれているが、この黒いマリア像は、オバダイヤという黒人女性が海で発見し、黒人を救うためにやって来たのだと信じるようになったものだという。黒人女性たちのsisterhoodを根底に感じる映画だった。 それに関連して言えば、2017年に『キャリバンと魔女』の邦訳が出されたイタリアのアクティビストのシルヴィア・フェデリーチ (Silvia Federici)が『Re-enchanting the World: Feminism and the Politics of the Commons』の中で資本主義に抗するものとしてコモンズの話をしているが、コモンズ的なものを大事にするのは黒人女性たちのSisterhoodの中にあるという話はベル・フックスもずっと書いてきているし、『Black Feminist Thought: Knowledge, Consciousness, and the Politics of Empowerment』を著したPatricia Hill Collinsも、ケアの倫理だ何だというけど、あれは黒人女性のsisterhoodを真似ただけだと痛烈な批判をしている。そんなこんなを思い出させてくれる心温まる貴重な映画。

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