『超クリエイティブ』を読んで。
こんにちは、桜井です。
『超クリエイティブ 「発想」×「実装」で現実を動かす』を読んで心に残った部分と個人的な解釈をまとめてみました。
「意味を与えられる」クリエイティブディレクター
(本書より抜粋)
その先駆的な存在は、日本初のクリエイティブ ディレクターともいうべき千利休です。
茶碗という誰が見ても変わらない普通のプロダクトに、別の意味を与えることによって美術品としての価値を与えました。あるいは茶室というものをただの狭い部屋ではなく、精神を落ち着け、人と人とが親密かつ平等に向かい合う場として、わずか二、三畳の空間に大きな意味を与えまし た。そのとき茶室は、空間的な狭さを乗り越えて概念的には無限の広さを手 に入れることになります。
(本書より抜粋)
ひと昔前はそれなりに特別な外食の場だった「寿司」は、スシローやくら寿司などによる企業間競争とテクノロジーによる効率化が進んだ結果、「回転ずし」という新たなビジネスモデルを生み出し、ファミリーレストランのような誰にとっても身近な存在になりました。
前者の千利休はプロダクト自体を変えることなく、意味変することで新しい価値を与えた事例。一方で後者のスシローやくら寿司はプロダクト・サービスを変化(進化)させ続けることでより良い価値を与えた事例だと思います。
回転ずしの進化はコロナ禍でも止まることを知らず、スシローはこのご時世でも過去最高売上を達成することができているそうです。
テイクアウトの早期着手、アプリでの予約、セルフレジの導入など、ユーザーファーストの取り組みをスピード感をもって取り組んだことが奏功しているなぁと感じます。
私もいくつか飲食チェーン店のご支援をしたことがありますが、ユーザーの変化に対応する難しさを目の当たりにしました。特に何百店舗を持っている場合、キャッシュレスの導入だけでも、
【社長・経営陣の理解(まずここが難しい)】
↓
【各SV・店長への説明・理解】
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【パートスタッフを含む従業員への説明・理解】
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【各店舗へのPOP関連の制作・納品】
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(途中、社長・経営陣の確認/茶々)
↓
【ユーザーへのコミュニケーション(Web・リアル)】
↓
(途中、社長・経営陣の確認/茶々)
↓
【運用】
だけで数か月かかってしまうこともあります。
飲食店は現場が強い。特にSVや営業部長クラスの声の大きな人の意見は通りやすい傾向にあるため、売上ファースト・現場ファーストになりがちです。ユーザーが置いてけぼりになってしまうこともしばしばあります。
でも変化することでユーザーに与えられる意味が分かっているクリエイティブディレクターがいればスピーディーに実行できる、ということかと理解しました。
クリエイティビティが思想を体現する
(本書より抜粋)
アメリカのアウトドアブランド「REI」 は、1年のうちでもっとも売上が上がるブラックフライデー(11月の第4木曜日)に、全店舗をクローズしました。一体なぜか?アウトドア ブランドもまた、同業他社との差別化は容易ではありません。「パタゴニア」 も「 ザ・ノース・フェイス」も「コロンビア」も、どれもおしゃれで高品質です。別の言い方をすれば、どれか一つが飛びぬけて優れているとも言い難い。
そこでREIは、「我が社は、アウトドアを楽しむ人のことをどこよりも考えているブランドです」という思想を打ち出した。あえてもっとも売上が期待 できるブラックフライデーに店舗もオンライン ショップもクローズすることで、 「買い物をする時間があるなら野山に遊びに出かけて、アウトドア を楽しんでください」というメッセージを出したのです。
ブランドの持つ「思想」と実際の「アクション」に一貫性を持つことはとても難易度が高いと感じます。一時的にシンクロするだけではダメで、「一貫性」こそが大事だと思っています。
一貫性とは「時間(時が流れても変わらない)」と「人(ブランドをつくる側のすべての人)」の2つを指すものだと思っています。
アウトドアブランドのREIが稼ぎ時のブラックフライデーで販売をしない、というブランドアクションをとったように、時に売上・利益を失ってまで一貫性を保つ覚悟があるかどうか?を消費者は見ています。
ブランディングが生き残りを決める
(本書より抜粋)
「ブランドは名詞ではなく形容詞でもなく動詞で語られる」 。
これはグローバル企業の広告を多数手掛ける クリエイティブカンパニーTBWAの総帥ジャン = マリー・ドリューの言葉ですが、「アップルは反抗し、IBMは答えを出し、ナイキは熱く語り、ヴァージンは啓発し、ソニーは夢を見て、ベネトンは抵抗する」という。
つまり、ブランドはその行動を動詞で表現されたときにより強く消費者に イメージを喚起し、突き刺さります。「このブランドは抵抗している」「 このブランドは熱狂している」といった具合に。そんなブランドの思想に 共鳴した消費者はコミュニティ化していきます。熱烈なユーザーは「 ソニー派ですか?」「僕もなんです」みたいにつながったり、『ジャンプ』で育った人々が世代を超えて盛り上がったり、「ウィキペディアの運営にご理解、ご協力を」にみんなが寄付したり、人々の強い共感がブランドを自然 と広めてくれる。
先ほどのREIの事例のように、ブランドアクションとは時に「自己犠牲」をも厭わない覚悟を持たなければならないと思っています。
ブランドは名刺や形容詞ではなく動詞で語られる、とはすなわちブランドは消費者・社会に行動を示さなければならない、とも言いかえられるのではないでしょうか。
行動とはスタンスを表現すること。その結果、好きと嫌いに分かれてしまうこともあるかもしれません。それでも消費者のために表現することを止めないブランドのことを私は忘れないだろうなぁと思います。
ロジックを突き詰めた先にアイデアは生まれる
(本書より抜粋)
もちろんアーティストやクリエイターには直観力に優れた人が多くいますが、直観だけでは現実的な仕事において脆弱で、むしろ、ロジカルな思考や徹底的にマーケティングを積み重ねていることがほとんどです。そうしたロジカルなプロセスを突き詰めた最後に思考のクリエイティブジャンプがある。
ロジックを突き詰めた先にアイデアは生まれる。
この言葉が本書で一番グッときたし、すごい言語化だ・・・と感じました。
よく対立するのが、クリエイティブ寄りの人は「私は感性で感じるタイプだから」と言い、ロジカル寄りの人は「私はフレームやロジックで考えるタイプ」と言う。
それもそうかぁ、スタンスと特性の違いなのかな~と思っていましたが、やっぱりロジックは重要。フレームワークなくしてクリエイティブはできないよな、と改めて感じました(一部の天才を除いて)。
ファッションだって正攻法・正装が分かるからこそ「外し」が映えるわけで、クリエイティブだってロジカルに考えられるからこそ「外し」が活きるよなぁと思います。
クリエイティブの根底にはマーケティング戦略があり、アウトプットのためには戦略思考→アート思考の順で昇華していく必要があるように感じました。
「欲望のサイズと強度」が現実を切り開く
(本書より抜粋)
しかし、そもそも才能とは何でしょうか。何か目覚ましい能力がないと価値は生み出せないのでしょうか。僕は、才能よりも圧倒的に大切なのは、「欲望のサイズと強度」だと思っています。
私のまわりを見渡してみると、様々な才能のある人がいるのですが、才能はスキルやポテンシャルの高低ではなく、想いの強さ・ビジョンの多きさに比例していると感じます。
一方で、学歴・社歴はキラキラしているのに「私は人生で何を成し遂げたいのかわからない」と悩んでいる人もいます。そういった人たちはいつも何かに追われ、やりたくもない仕事に精を出しているようにも見えます。
恐らく、やりたいことがないので目の前のタスクを消化することしかできず、淡々と作業するうちにその仕事が「本当に必要なことなのかどうか」を問うことさえも怖くなってしまったんじゃないかと思います。
夢やビジョンなど、大それた話ではなく「自分がどんなことをしている時が一番楽しいか・ワクワクしているか」を考え、じゃあその状態を保つためにはどんな状態になっていればいいのか?を考えれば自ずと行動・計画が立つはずだと感じています。
アートと広告の違い
(本書より抜粋)
「アートは問題の“発見”であり、広告は問題の“解決”である」
時代の空気を、言語化できないインテリジェンスを、アーティストは“発見”し、作品としてさまざまな形で表現する。それに対し広告は、もっと手前の身近な問題に対峙する。「このカフェオレが売れていない」「会社の利益が上がらない」といった、経済的課題をクリエイティブの力を駆使して解決しようとしてきたのが広告である、と。
私もアートは問題の発見であり、時には「問題提起」までする存在じゃないかと思っています。一方で広告はもう少し実務的というか、実益的なアクションになるのかなぁといったイメージを持っています。
しかし昨今は広告であっても問題解決だけではなく、問題提起をするものも増えている印象があります。それは解決策がありふれたこの世の中で、解決策だけを提示しても見向きもされなくなってきている、ということだと思われます。
例えば今、パーソナルトレーニング・ジムの広告で「痩せられます・鍛えられます」と宣言したところで「知ってます」となるだけなので。そうではなくて、痩せられない問題はなにか?鍛えたいけど鍛えられない問題は?を突き詰めて考えて、消費者のインサイトをえぐる問いこそが求められているはずだと思っています。
「コロナでジムに行きづらい」「収入が減って通う余裕がない」などの環境・金銭的な問題はありそうですが、それは本質的な問題ではないと思っています。個人的に考えるこの問題の本質は「コロナを言い訳にして、変わりたくない弱い自分の気持ちを肯定したい」という人間の脆弱性こそが問題だと思っています。
感染リスクや月謝は「本当に変わりたい」と強く想うなら大した問題ではありません。本当に変わりたいと思えるキッカケをつくること・変われるハードルを下げてあげることこそが広告に表現されるべきではないかと思います。
人間の感情への解像度を高める
(本書より抜粋)
センスとは経験知からくる咄嗟の判断力です。
人間の感情も同じです。自分が心から感動したこと、泣いたこと、笑ったこと、その蓄積の豊かさが、ひとつのコピー、企画の良し悪しを判断させ、すぐれたクリエイティビティを発露させる。
失恋した後に見上げた空はなぜかグラデーションが鮮やかに見える、去りぎわの電車の後ろ姿が寂しい、放課後の教室の黒板はどこか懐かしい・・・そうした体の中に眠る記憶の風景が大きな財産となります。
感情への解像度を高めるために詩を書いたり、小説を書いたり、映像を撮って編集したり、一見するとポエマー(ちょっと痛いやつ)に思われてしまうかもしれないけれど、すごい大事な感性だと思っています。
私も高校~大学まで純文学にハマってしまい、相当痛い学生だったと思います。自分探しと称して意味もなく旅をしたり、空虚な自分に浸っていたりした(笑)。
でもその時に書いた小説や日記は自分の感情を表現するトレーニングになっていますし、文章を書くことが苦でなくなったことは仕事をする上でとても大きなスキルとなっています。
感情に向き合い、放置することなく表現することは尊いことで、表現する術を持っていることは誇れることだと思っています。
企画・コアアイデアを生むためのTips
ここからはGOおよび三浦さん自身が企画・コアアイデアを生む際に考えているフレームです。
ここまで手の内を明かしてしまっていいのだろうか・・・と思うけど、それだけ自分たちに自信があるのだし私はありがたく頂戴することにします。
具体的な使い方・事例はぜひ本書を見ていただきたいと思っています。
「社会」「未来」「人生」3つベクトルで変換する
(本書より抜粋)
①社会に対してどんな意味があるか
②未来で広がったらどうなるか
③自分にとって、あるいは熱狂しているユーザーの人生にとってどんな意味があるか
そのアイデアに3つのAはあるか
(本書より抜粋)
本質発見と世界の複数性を踏まえたコアアイデアを発想し、実装していくプロセスにおいて、次の“トリプルA”という企画のポイントは大きく役立ちます。トリプルAとはすなわち、アンガー(Anger)、アライアンス(Alliance)、アクシデント(Accident)の3つです。
アイデアの検証に必要な10のポイント
(本書より抜粋)
①GOAL(プロジェクトで達成すべき目標)
②Vision(企業/ブランドのあるべき姿)
③Fact(武器になる企業/ブランドの事実)
④Moment(着目すべき社会の変化)
⑤Insight(顧客の心情)
⑥Catalyst for Change(変化のきっかけになる考え方)
⑦Rule(この企画が成功する内外の条件)
⑧Action(実際の活動)
⑨Flow(実際の段取り)
⑩Image(PRの予想)
※Contract(契約条件/見積もり)
PR戦略で寛容な3つの視点
(本書より抜粋)
SNSやマスメディアが反応するような、「事件」「実験」「意見」の3要素のいずれか、もしくは複数を含んだニュースバリューのあるコンテンツを用意する。
・「事件」とは、ニュース性。すなわち多くの人が話題にしたくなる要素が含まれていること。
・「実験」とは、誰もがやったことがなく、それゆえにどんな結末になるか誰も予想できないこと。
・「意見」とは、政治も含めて、社会に対して強いメッセージを発信すること。
GOの企画可否の基準
(本書より抜粋)
GOの場合、企画の可否は主に次の5つの基準で判断しています。
①そのコアアイデアはクライアントの課題を解決し、新しい可能性を生み出すことに貢献できるか
②そのコアアイデアに基づく企画・事業は、本当にGOがやるべきものなのか
③今の社会はそれを求めているか
④GOの利益はどれほどになるのか
⑤マンパワーなど現実的な観点から、GOはそれを実行可能かどうか
クリエイティブな価値を実装できるチームとは
(本書より抜粋)
クリエイティビティの高い、よいチーム、よい組織とは何か。「アウトプットが個の能力の総和ではなく、積になるチーム」というのがよいチームの定義です。
チームビルディングにおいては次の3つのポイントを押さえます。
①チームが持つ機能と、チームに求められている目的を一致させる
②チーム内における人材の配置を正しく行う
③チームの空気を気持ちのよいものにする
(最後に)リーダーに必要な条件とは
(本書より抜粋)
魅力的な組織に必要な3要素は、チームがよく機能するためにもそのまま敷衍できる条件ともいえるでしょう。
・このプロジェクトを成功させるとモチベーション上の報酬がある(次の大きな仕事のチャンス、自分の企画を通してもらえる、仲間たちから評価される等)
・仲間と仕事をするのが刺激的な(楽しい)環境を整える。
・チームで達成すべきミッションを明確に共有する。
仕事の本質は、結局のところ、利害の異なる者どうしのモチベーションを調整し、マネジメントし、最適解を見つけ出すことだからです。その面倒さをいとわずに一つひとつをクリアしてはじめて、アイデアは具体的な形に実装できる。テクノロジーがいくら進歩しようと、そこが変わることはありません。
平成は組織から個人の時代を助長し、令和とコロナによって個人+チームの時代に変わろうとしています。
個を持ったそれぞれがチームになり、不足を補い合う。さらに強みがお互い研磨され、大きな力になる。会社間の壁も、本業も副業も一緒くたになっていく。
絵具のパレットが色ごとに分断されているではなく、ごちゃ混ぜになった絵具のパレットにグラデーションがある感じに近いかもしれません。混ざり合うことを恐れず、グラデーションを楽しめるようなスタンスでいたいと思っています。
テクノロジーは人が人との営みに時間を割くための効率化の手段であって、テクノロジーが目的になることはあり得ません。これからも人同士の営みに時間をかけ、ビジネスを楽しんでいきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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