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思い出16 幸運だった会社の遍歴とクロマトグラフィー

同族経営に対する不満から、M社長が立ち上げたこの会社は、技術と利益を公正に分配することを目指していました。
事業分野としては何でも良かったと言うことでした。
クロマトグラフィーは、前会社から受け継いだものであり、新たな分野としての挑戦でした。
この技術は海外からの技術であり、輸入品が市場を席巻していました。
当時の為替レートが1ドル200-250円であったことから、輸入品は高価であり、安価な同等の国産品があれば、使ってもらえ、老舗国内メーカーもありました。
また、ユーザーから海外技術のため、国内メーカーによる技術サポートへの需要もありました。
技術畑では無かった社長は、何も考えず、前会社から言われるままに、クロマト分野を引き継いだと聞いています。
クロマトグラフィーは、多様な企業に広く利用されており、その使い方や方法も異なり、しっかりサポートできれば、老舗や大手企業にも対抗できる分野だったと思います。
また、当時は、海外品が高価な時代であり、国内品でもそれなりの価格設定ができ、利益が得られ易く、細かいサービスをしても十分な利益が得られた時代でした。
クロマトグラフィー分野製品においては、40年前から売値は、ほぼ変化していませんが、流石に、円安で昨年あたりから、価格は上がってきています。
50年存続でき、上場企業まで発展したのは、社員に平等に利益を分配したので、一丸となって会社に貢献したと言う透明経営もありますが、クロマトグラフィーと言う分野を引き継いだと言う幸運だったと思います。
当初、本社は新宿の貸しビルにあり、クロマトグラフィー充填剤の製造販売からスタートしました。
入社した翌年、1980年に設立12年目に、新宿の土地を購入し、2階建ての本社社屋を建設しています。
その落成式の手伝いに駆り出され、この会社を紹介してくれたK叔父さんの接待もしました。
子供の頃から遊んでくれた叔父さんでしたが、落成式では社長としての対応をする必要があり、ぎこちなかった記憶があります。
落成式後に、叔父さんと飲食したのですが、その時には昔の叔父さんとの関係で楽しむことができました。
その本社社屋は、西新宿高層ビル再開発エリアに入り、設立26年目の1994年に等価交換で現在の高層ビルに移転しました。
お客様を呼んでの披露パーティの前に、社員向けの内輪のパーティは開かれていました。
まだ、備品が無い状態だったので、凄く広く感じましたが、実際に本社として動き始めて机などの備品が入ると普通の事務所でした。
私も33歳になり、初めて長が付くようになっていました。
入社した当時は周辺に地下街や地下鉄の駅がなく、不便な場所でしたが、高層ビル再開発により、便利な高層ビル街に変貌しました。
これは本当に幸運なことだと思います。
また、工場の拡大も順調に進みました。
1968年の設立当初は新宿の貸しビルが本社兼工場でしたが、1971年には住宅地のない所沢に土地を購入し、所沢工場を建設しています。
近隣には西武線の駅が開設され、都内への通勤が便利になり、新興住宅地へと変貌しました。
高騰した土地を売却し、1975年に飯能と所沢の中間地点にある工場団地に現在の武蔵工場を建設しています。
私の入社は、1979年ですので、4年しか経っていなかったですが、安普請のプレハブ工場で隙間風もあり、10年近く経っていると感じました。
ただ、工場団地の端に位置したことで、周囲に余剰の土地があり、現在では、10倍ほど広い総合技術本部になっています。
入社当時にあった建屋は、2006年には、完全に無くなっており、今の総合技術センターになっています。
近くに高速道路のインターチェンジが造られ、物流面でも優れた立地となりました。
1991年には、福島市の誘致を利用して、福島に新たな工場を建設し、消耗品の製造を移転しました。
1996年には、装置関連の製造も移転し、福島工場が製造の中心となりました。
2002年には、福島に開発を立ち上げるために、2年間、福島に単身赴任しています。
2006年には、技術は武蔵、製造は福島と両輪がうまく機能し始めたと感じました。
2011年東日本大震災が起きますが、幸運にも福島工場は地盤が固い山の上に建てられていたため、倉庫棚から製品が落下したり、壁にひび割れが生じた程度で大きな影響はありませんでした。
ただ、家の中が、無茶苦茶になったりして生活や物流に関しては苦労があったようです。
武蔵工場との間で、2日に一回チャーター便を手配でき、社員用に食料品などの物資を送ることができ、製品も武蔵工場まで配送できました。
幸運にも、お客様への影響を最小限に抑えることができました。
放射能問題が一番大変だったようです。
食品ではないのですが、食品検査に使うと言う事で、大手企業からの購入停止や中国からの輸入禁止などもありました。
全行程の放射線量を測定を行い、証明書の発行などで対応して乗り越えることができました。
一部の企業では、福島で製造しているだけで危険と言う、科学的な根拠が無いレッテルを貼られて2年間納入禁止が続きました。
直接関係の無い事業でも、このような状態でしたので、福島での食品関連事業は大変だったと思います。
基本、自然にも放射線は存在し、夜光時計や蛍光灯点灯管、煙感知器など、放射線物質が使われている物も種々もあり、部屋の中でも検出されます。
原発事故の影響ではない、ブランク数値でも検出されると右往左往して、放射線の危険を煽る報道が多かったのは残念です。
もっと、科学的な根拠に即した報道が無かったのは残念に思いました。
東日本大震災も、大きな問題はなく乗り越えました。
このように、会社の成長には、皆の頑張りだけでなく、運とタイミングも重要だと感じています。
主流となるクロマトグラフィーに関して説明します。
今流行りのChatGPTによると下記になります。
クロマト分野は、物質を分離し、その構成を特定する技術の一分野です。
クロマトグラフィーは、物質が移動する媒体として液体(液体クロマトグラフィー)やガス(ガスクロマトグラフィー)を使用します。分析対象の物質は、異なる速度で媒体中を移動するため、それぞれの成分が分離されます。この分離を行うことで、混合物中の各成分を個別に識別し、定量することが可能です。
クロマトグラフィーは、医薬品製造、食品安全、環境モニタリング、化学合成の制御など、多岐にわたる分野で重要な役割を果たしています。例えば、ガスクロマトグラフィーは、食品中の残留農薬や環境中の有害物質を検出するために使用され、液体クロマトグラフィーは、医薬品の品質管理や生体内の化学物質の解析に利用されます。
以上、ChatGPTより

ちなみに、私が初めてChatGPTを知ったのは、紗倉まなさんが出演していたAbemaPrimeでの紹介でした。
その面白さに惹かれ、翌日には無料版をインストールして使い始めました。
社内でも、実際に使い始めたのは早かったです。
普段ニュースなどは観ないので、紗倉さんが出演するAbemaPrimeだけが新しい情報の入手方法になっています。
最近、紗倉さんの出演がなくなり、視聴しなくなったので、世の中の動きについていけずに寂しく感じています。
現在では、ChatGPTの社内で使い方の規定もできており、最初の下調べ用として非常に便利です。
もし間違いをきちっと直して使うならば、素晴らしい技術革新だと思います。

このクロマトグラフィーを私の言葉で、具体的に説明します。
図のように、紫色の未確認対象物質をカラムに入れて、上から液体を流すと、まず青色の成分が最初に出てきます。
クロマト用語では、これを溶出と呼びます。
次に赤色の成分が溶出します。
紫色の物質が、赤と青に分かれて溶出したことになります。
このように、分かれることを分離と言います。
この場合、2種類の混合物であることが確認できます。
成分が溶出してくる時間を横軸にして、縦に検出強度(この場合、色の濃さ)をプロットしたのがクロマトグラムです。
そのクロマトグラムの結果から、どのような成分がどのくらい含まれているのかを確認できます。
上記の場合は、液体を流すので、液体クロマトグラフィーの1種になります。
この技術は、医薬品や食品の純度測定や体内代謝物測定などに広く使われています。
例えば、醤油中には、旨味成分となるアミノ酸が含まれており、総アミノ酸量が記載されています。
実際には、20種類のアミノ酸があります。
醤油を分析すると、種々のアミノ酸が分離され、メーカーごとや製品ごとにその組成が異なります。
その違いが各メーカーや種類による味の違いに影響してくるので、詳細な組成は各メーカーの機密事項になっていると考えられます。
食品会社は、検査基準を作成し、製造ロットごとに検査を行っていると思われますが、その方法や基準値は、各メーカーのノウハウになっていると考えられます。
問題になっている紅麹に含まれるプベルル酸も、液体クロマトグラフィーで定量できますが、検査対象成分になっていなかったため、確認できなかったと思います。
問題成分が明らかになれば、検査対象になり、製品から除去も検討できるので、二度と生じないと思います。
また、血液検査にも液体クロマトグラフィーが使われます。
血中のHbA1C量を測定することで、糖尿病かどうかを確認できます。
HbA1C濃度が4.6~6.2%の範囲内であれば平常ですが、A1C濃度が高い場合には、その程度に応じてインスリン注射などの対処が必要となります。
糖尿病は、完治することはありませんが、症状を抑えることは可能です。
検査で異常が見られた場合は、すぐに病院に行き、医師の指示に従うべきです。

妻もHbA1Cが異常値だったようですが、病院に行かず放置していたら、緑内症を併発して視野が狭くなり、車の免許を返納することになりました。
日常生活はできていますが、結構不便なようです。
糖尿病は、種々の合併症を引き起こす可能性があるため、A1C濃度が高い場合は、ぜひ医師に相談してください。
このように、液体クロマトグラフィーはさまざまな検査にも利用されています。
液体の代わりに気体を流して分離させるのが、ガスクロマトグラフィーです。
自動車排ガス分析、河川水や水道水の分析、大気などの環境分析、ドーピング検査などには、ガスクロマトグラフィーが活用されます。
これらのクロマトグラフィーを行う際の中核部分であるカラムの開発に主に取り組んできました。
基本的には、筒状の管中に固体を充填したものがカラムとなります。
ガスクロマトグラフィーでは、内径3mm、長さ3mの楕円形に成型したステンレスカラムやガラスカラムに、粒径0.2mm程度の活性炭やシリカゲル、ポリマー液体(固定相)を塗布した珪藻土粉体など(充填剤)を充填したGCパックドカラム、内径0.25mm、長さ20mの中空の溶融石英チューブに分離用のポリマー液体(固定相)を塗布したGCキャピラリーカラムなどがあります。
私が入社した40年前は、GCパックドカラムが主流で、充填剤の種類やカラムの長さによって価格が異なりましたが、1本あたり約5万円前後でした。
経済的な理由でコストを抑えたいユーザーは、充填剤とカラムを別々に購入して自分で詰めることが一般的でした。
その時に、均一に充填するために振動を与えるのですが、その際に使っていたのが、紗倉さんが大好きなバイブレーターでした。
貨幣価値は違いますが、現在でもGCパックドカラムは1本5万円前後ですが、主流は分離性能が高いGCキャピラリーカラムに変わっていきます。
40年前は、GCキャピラリーカラムはガラス製でした。
ガラスチューブを約600℃まで加熱して柔らかく伸ばし、15cmの径で螺旋状に延伸して内径0.3mmになるようにします。
順調に行けば、1時間程度で約100m程度延伸できますが、うまく円形にならず負荷がかかり途中で折れることも多々ありました。
100mの場合は何度も失敗してやっと完成するというものでしたが、主流は30mで助かったという綱渡り的な製造でした。
延伸した内径0.3mm、長さ30mの螺旋に巻かれたキャピラリーガラス管の内面に分離を行うための固定相を塗布します。
固定相としては、保湿効果があると化粧品に使われているスクワランオイルやシリコン油、洗剤などに使われているポリエチレングリコールなどのポリマーが使われます。
塗布方法は、固定相を溶解した溶液をガラスキャピラリーの中に流し込み、溶かした溶液を蒸発させながら内面に均一に塗布します。
固定相濃度、溶液の液性、流速、蒸発させる温度などがノウハウになります。
売価が1本30万円程度で、初任給以上の価格で、Oさんが主導して開発し、OJTで現場に作らせました。
それは、伸び縮みして階段を下りるおもちゃ スリンキーのガラス版のイメージです。
伸縮する方向には強いのですが、ねじれるとポキッと折れてしまいます。
お客様も折ってしまう事があるため、高度な分離が必要な場合にしか使用しませんでした。そのため、入社して3年目の1980年頃までは、GCパックドカラムが80%、ガラスキャピラリーカラムが20%という比率でした。
そのガラスキャピラリーの使い勝手の悪さを克服したのが、折れない溶融石英ガラスチューブ(フューズドシリカキャピラリー)です。
これは、大阪万博で光る繊維として紹介された光ファイバーから派生したチューブです。光インターネットや胃カメラのチューブなど、様々な製品に使用されています。
ガラスキャピラリーチューブの代わりに、中空の光ファイバーを使用して、GC用クロマトグラフィーカラムとして使用する技術が開発されました。
1979年に有名なパソコンメーカーであるHP社が発明し、特許を取得しています。
当時、HP社は分析機器の大手メーカーでもありましたが、1999年に計測機器、化学分析機器、医療機器などを分離し、アジレント・テクノロジーを設立しました。
国際特許のため、日本での製品化はできず、特許ライセンスを得ているヨーロッパのメーカーからの輸入品を取り扱って、国内で販売しています。
特許の制約により、キャピラリーカラムの開発はできませんでした。
しかし、この輸入品を販売するためにさまざまなクロマトグラムの採取や評価を行うことで、キャピラリーカラムの技術向上が進みました。
1990年代には、ガラスキャピラリーカラムが廃れ、使いやすいフューズドシリカキャピラリーカラムが主流となりました。
特許期間が終了後、自社でフューズドシリカキャピラリーカラムの開発を行い、2002年には国産品として製品化しました。
その結果、GCパックドカラムが30%、フューズドシリカキャピラリーカラムが70%の割合になりました。
現在では、自社製のGCフューズドシリカキャピラリーカラムは、輸出されています。

液体クロマト用カラム、ガスクロマト用カラムなど、何百種類もあり、少量多品種で売り上げが形成されており、変動が少ない安定しているのがクロマトグラフィー関連の会社になります。
ガスクロマトグラフィーは、石油関連事業に主に使われていましたが、食品や医薬品事業に使われる液体クロマトグラフィー市場の成長が著しく、液体クロマトグラフィーカラムが大きな市場になっています。
入社当時は、ガスクロマトグラフィーが80%、液体クロマトグラフィーとその他で20%でしたが、現在では、ガスクロマトグラフィー20% 液体クロマトグラフィー60% その他20%となっています。
分野としてはクロマトグラフィーですが、業界としては、分析機器業界に属します。
0.00001g測れる精密天秤、1200℃まで上げられる電気炉、顕微鏡、遠心分離機、光の吸収、放射、散乱などを測定する分光器、原子核の振動に関連する信号を検出する核磁気共鳴装置(NMR)、などの分析機器など クロマトグラフィー装置関連以外も含まれます。
入社当時は、分析機器業界はまだ小規模で、科学機器部門に含まれており、科学機器展などの展示会で新製品の発表が行われていました。
現在では、分析機器業界だけで年1回の展示会が開催され、分析機器工業会も設立されています。
分析機器は一般の人々からは嫌がられる有機溶媒を使用します。
代表的なものとしては、メタノール(目がかすんで見えなくなると言われています)、クロロホルム(ドラマでよく眠らせるために使用されます)、アセトニトリル(サリン事件で有名になりました)、トリハロメタン(水道水中に含まれる)などがあります。
これらの問題が起きるたびに、世間から批判を受けます。
技術的に何も分からない政治家は、点数稼ぎのために、実際に合っていない厳しい規制を
作ってしまいます。
業界全体が一丸となって、業界内基準を策定し、政府に説明し、細則規制の変更に努めて、数年に1回関連法律が変わっていきます。

紗倉さんからAV新法の話を聞いて、署名はしました。
当時者では無いので、個人的感想ですが、感じた事を記載しておきます。
一部の企業だけが熱心に動いているだけで、業界全体が一体になって動いていないように感じます。
メーカーのトップが一致団結し、業界の意見をまとめて政府に提言できる業界の集まり(協会)を作るのが先決と思います。
女優さんたちに、暗黙のプレッシャーをかけて署名運動させるよりも、トップがやるべきを行うべきと感じました。
協会で皆の意見を集約して、具体的な業界の細則を作って、それを法律に紐づけして規則化する事を提言する事が一般的な流れだと思います。
規則や細則は、毎月更新されていきますが、法律自体の改定は数年に1回が一般的と思います。
女優さんを一番に考えて、全メーカー側が納得して、守れる範囲の規則や細則を作るが肝心と思います。
具体的には、女優さんが売れるまでは、メーカー側が保障すれば良いのですが、小メーカーでは難しいでしょう。
社会保障などがあれば良いのですが、この業界では、まだ、無理なので、協会で団結して中小メーカーをバックアップして行ければ理想的と思います。
外から観ていると、メーカー側の法律への逃げばかりが目立って、AV業界をどのようにしたいか観えて来ないのが残念です。
AVは私にとって、生き甲斐なので、業界全体が健全に成長し、良質な作品を提供し続けて、少しでも永く紗倉さんが現役で居られるように願っています。

業界全体が、世間に受け入れられ、メーカーが成長していけば、そこに在籍する人たちも楽しくなります。
私が入社したG社は、業界全体も良く、会社も幸運に成長してきたので、定年退職まで楽しく仕事ができました。
第2人生がどうなるかわかりませんが、G社を紹介してくれたK叔父には、感謝しています。

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