【ヘルスケア】行動経済学の枠組み③:なぜ人は他人に親切にするのか
前回に引き続き,今回の記事はこちらの書籍を基に書いています。
過去のヘルスケア関連の記事はこちら↓
今回は人はなぜ利己的なだけでなく,利他的であれるのかを行動経済学的な特性からご紹介します。
③ 社会的選好(利他的・互恵性・不平等回避)
行動経済学では,自分自身の物的・金銭的選好に加えて,他者の物的・金銭的利得への関心を示す選好を人々が持つと想定されており,このような選好を『社会的選好』と呼びます。
社会的選好には,他人の利得から効用を得るという利他性,親切な行動に対して親切な行動で返すという互恵性,不平等な分配を嫌うという不平等回避などがあります。
社会的選好の存在については,以下のような独裁者ゲームの結果を考えるとイメージしやすいかもしれません。
独裁者ゲーム
一定の金額(例えば 1000 円)を受け取った人に,その金額から匿名の人に寄付する場合,いくら寄付するかという質問をして寄付してもらう実験。
利己的な人であれば,一円も寄付をしないことになる。
ところが,多くの実験結果では,一定の比率の人たちは独裁者ゲームでも一部を寄付することが知られている。
→ このような実験結果を説明するために,行動経済学では,人々が何らかの社会的選考を持っていると考えている。
1)利他性
利他性とは,他人の満足度が上がることで,自分の満足度を高めるという特性のことをいい,利他性には 2 つのタイプがあります。
(1)純粋な利他性
他人の幸福度が高まることが,自分の幸福度を高める。
(2)ウォーム・グロー
自分が他人のためにする行動や寄付額そのものから幸福感を感じる。
2)互恵性
互恵性とは,他人が自分に対して親切な行動をしてくれた場合に,それを返すという選好のことをいいます。
恩恵を与えてくれた人に対して,直接,恩を返す場合は『直接互恵性』と呼び,別の人に恩を返すことで間接的に恩を返すことを『間接的互恵性』と呼びます。
例えば,医療者が通常の職務以上に患者に対して親身になっていると患者が認識すれば,医療者の期待に応えたいと健康行動に積極的になる可能性があります。
3)不平等回避
不平等回避とは,所得の分配が不平等であること自体を嫌う特性のことをいいます。
自分の所得が高いことは望ましいけれど,他人よりも高いことや低いことが自分の満足度を下げてしまうという傾向です。
本日はここまで。次回に続きます。