#24「静かな東京」

高層ビルの谷間で風に吹かれて
生きている自分を確かめていた
こんなに近くにあるのに
今まで気付かないでいた
いつもいつもそう感じる
わたしは たぶん 幸せ

すれ違う沢山の人
ホテルのカフェのガラス写真
誰もわたしのことを知らない
宇宙のなかでこんなに儚い
わたしの存在なんて
あの 45階の展望室から舞い降りたなら
ひらひらと 桜の花びらのように散るでしょう

高いところから世界を見下ろすのが好き
すべてのものが ミニチュアになってる
世界征服をたくらむ悪者は
たぶん 誰よりも 世界を愛していたのだろうと
自分の心に重ねて想う

ここから見える景色は
静かな東京
あのうんざりするほどの
人込みも 雑踏も 悪意も 偽善も
なぜこんなに美しく見えるの?
狡い 魔法にかかってる
気付いているくせに
深い眠りのなかで みんな夢を見続けてる
呪いに掛かった
冷たい都

なぜ 今 ここに私がいるのかと
答えのない問いに涙が滲む
どうして?こんな気持ち

地上では 変わらぬ毎日が流れてる
OFFにしていたウォークマンのボリューム
ぎゅっとあげて 歩き出す
今日のこの気持ち
ずっと忘れない
静かな東京に流した涙は
決して嘘ではなかったから

(1995)

※【解説編】はこちら

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