初夏の稚内へ クラーク書店の閉店と日本最北端の旅
ふと初夏の一番日の長い6月の中旬に北の方面へ行きたくなり、稚内~宗谷岬を巡ってきた。JR北海道の特急宗谷にも乗ってみたかったというのもある。広い広い北海道。札幌駅を朝7時半に出発して、到着が12時42分。およそ5時間12分。読書をしたり、ノートにいろいろ記して心を整理したりといった時間を確保できるのは貴重だ。あいにくの曇り空で、稚内駅に到着したら雨が降降っていた。
稚内に行くことを決めた後に、日本最北端の書店、クラーク書店が閉店することを知った。もともと稚内に行ったら絶対に訪れようと思っていた場所であったが、もうすぐ閉店という時期にタイミング良く稚内に行くのも何か不思議な縁だろうか。これもブックハンターたる己の嗅覚のよさ(?)なのかもしれない。とはいえ、なんともショックなニュースだ。
初めて訪れた印象としては、人口3万5千人弱の街の本屋としては、床面積が大きく、そして大変充実したラインナップだと思う。学習参考書も大変充実しており、マンガから人文、科学、実用書など、あらゆるジャンルが網羅されている。ただ、閉店が迫っていることもあって、店員さんはその応対に追われていた。昨年閉店した弘栄堂書店の白石店もそうだったが、閉店する書店は新刊があまり入荷されず、売れた本も補充されないため、どんどん棚が寂れていく。クラーク書店も弘栄堂書店白石店が閉店する時期と同じような、既視感を感じてしまった。
せっかくなので、2冊購入。何を買ったかはナイショ!
このカバーも見納めか。英字はビートルズのpaperback writerの歌詞だ。書店で本を買うにあたっていいのは、紙のカバーを書けてもらえることだ。書店によってデザインが違うので、どこで買ったのか一目瞭然だ。気軽に通える距離ではないため、後日またぶらりと、というわけにいかないのが残念である。
クラーク書店の閉店も時代の流れと言えばそれまでだが、市内で学習参考書を買う場所がなくなると、地域の学力にも影響してくるのではないか。留萌市の三省堂書店のように、今後どこかの大手書店がこの場所に書店を開設することはないのだろうか,と思ってしまうものだが、書店という商売を成立させるのが本当に難しい時代になっていることをしみじみと思わずにいられない。今後は教科書販売は続けるという報道もあったが、書店は地域の文化と知を守る砦としての役割を担っているのだと痛感した。
なんとも悲しい気持ちを引きずったまま宿にチェックイン。稚内温泉童夢を訪れて湯船に浸かり、宿の近くでとんかつの定食を食べた後、宿でzoomの会合に出席していると、あっという間に夜も遅くに。慌てて就寝。
翌日はバスで宗谷岬へ。幸いにも天気が晴れた。
そういえば、稚内高校出身の友人がいるが、現在彼はどうしているのだろうかと思い浮かぶ。彼もここで高校時代までを過ごしたのだと思うとなんとも感慨深い。岬に行く途中までの道路沿いにもたくさんの民家が並ぶ。本当に日本人はどんな場所にも住んでいて生活を営んでいるのだと、宗谷地方の人たちの逞しさに思いを馳せながらバスに揺られること1時間ほど。
ようやくたどり着いた日本のてっぺんだ。
近くの売店で日本最北端到達証明書を200円で発行してくれる。実際に印字される時刻は購入時なのので、厳密に最北端に到着した自国ではないが、とてもいい記念だ。この地を訪れた間宮林蔵など、一体何人がここを訪れたのだろうか?それこそ、有史以前からもここを訪れた人がいたはずなのだ。正式な測量が成される以前に、ここが北海道という島の最北端であることを知っていた人は、どれくらいいたのだろうか?そう考えると、なんとも不思議なイマジネーションというか、妄想がかき立てられる。
宗谷岬の背後に広がる宗谷岬公園には、1878年にこの海峡を船で通過したフランスの探検家、ラペルーズの検証記念碑がある。
これは全く知らなかった。宗谷海峡は日本名だが、世界地図で言えば、ラペルーズ海峡と名付けられているのだ。ラペルーズといえば、岩波書店から『ラペルーズ太平洋周航記』が翻訳されている。不勉強にして、まさかここでラペルーズの名前を目にするとは思わなかった。早急にこの本を入手して読まなければなるまい。なぜならば・・・いや、これ以上はやめておこう。とにかく、これも単なる偶然ではない。この世で起こる事は全て意味があって起こるのだ。
宗谷岬公園は学びの宝庫だ。
公園内にアルレストランでソフトクリームを食べつつ時間をやりくりしていると弱い雨が降ってきた。帰りのバスまで雨宿りのつもりで休んでいる内に雨も止み、太陽の日差しが戻ってきた。
帰りはバスで札幌へ。今度は真冬の稚内を訪れてみたい。大変厳しい環境であることが予想されるが、四季折々の姿を見るのも旅の醍醐味だ。
さてクラーク書店のことを書いたが、名古屋のちくさ正文館書店が老朽化のため7月31日をもって閉店するというニュースも飛び込んできた。大きなショックが重なる。これについてはまた後日書いてみたい。
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