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変化を好み、臨機応変に問題解決する(インド人リーダーシップ論 #11)

インド人経営者の7つの特徴について紹介してきたが、今日の記事が7つ目、最後の項目である「変化を好み、臨機応変に問題解決する」についてだ。これまでの記事で何度も書いてきたが、経済成長まっただ中のインドではあらゆるものごとが速いスピードで変化している。時には変化のスピードが速すぎて、それまでのシステムが持ちこたえられなくなり、1から全てを再構築する場面もよくある。この目まぐるしく環境が変化していく感じは成長が鈍化している日本にいると実感しづらいし、変化に耐性がない人も多い。しかしインド人は一般的に環境変化に驚くほど柔軟で、むしろ予期しない変化を楽しんでいるように思える。

コロコロ場所が変わるインドのビザ申請所

皆さんも経験するかもしれない身近な例を挙げよう。例えばインドのビザ申請だ。商用でインドに行くためにはビジネスビザを申請しなければならないが、有効期限があるため何年かに一度ビザを更新しなければならない。私が知る限り、都内のビザの申請所の場所はこれまでに4回は変わっている。何も考えずに同じ場所に行ったら申請所がなくなっていた経験が実は2回もあった。それだけでなく申請方法、システム、プロセスがコロコロ変わっている。観光とビジネス両方でインドに行く人が増えるにつれ、それまでのシステムがすぐに機能しなくなり、その都度耐えうるシステムを構築するのである。

ユーザーからすると勘弁して欲しいといつも思いつつ、おそらくインドはスピード重視で今必要なシステムプラスα程度で再構築するから、すぐにパンクして更新が頻繁になるのだろうと推察している。これが日本政府なら、万が一の時を想定して、時間とコストをかけてでも最初からキャパの大きいシステムを導入するのではないだろうか。

毎日何かがアップデートされる

カクタスでも変化はもはや日常茶飯事だ。経営方針も、チーム構成も、ソフトウエアも、毎日のように何かが更新され、年に1度は全ての領域で大規模なシステムアップデートがある。この環境にいると変化に弱い日本人といえどさすがに3年いたら慣れてしまう。最初は「また変更?いいかげんにしてくれよ」とぶつぶつ文句を言っていたスタッフが、「今回の変更は悪くないね」と慣れた口調で話しているのを聞くと、お、とうとうインドナイズされてきたぞ、と密かにほくそ笑んでいる。

自ら変化を生み出す力と、臨機応変な問題解決力

「変化に強い」には2種類ある。自ら変化を生み出す力と、思いがけない環境の変化に臨機応変に対応する力だ。インド人リーダーはそのどちらも強いと思う。
自ら変化を生み出すという意味では、私の知っているインド人リーダーたちはそもそも変化が大好きだ。変わることに不安や心配が少なく、今あるものや仕組みに満足していない。そのため、常に「今よりもっといい方法やアイディアはないか?」と考えているのだ。既存のものを改善したり、自分が時間をかけて作った仕組みを壊すことに抵抗感がないのである。今考えられるベストをつくし、それがリリースされると次のベストを目指す。違うと思ったらアイディア自体をスクラップする。その繰り返しをすることに抵抗を感じないのだ。

思いがけない環境の変化に臨機応変に対応する力は、特に強調すべきポイントだろう。トラブルが起きた時に彼らは類稀なる能力を発揮する。インドではトラブルが常について回る。1日が何のトラブルなく終えられたら幸せだと思う程、あちこちでトラブルが起きる。停電、水の供給が来ない、インターネット回線が不通になる、大渋滞に巻き込まれる、予約サイトのシステムがダウンするなど、例を上げたらきりがない。そんな日常を経験しているインド人は、常に何か起こるかもしれないと思いながら行動しているので、身近で起きる大半のトラブルはまるで「想定内」かのように振舞う。「ノープロブレム、問題ない」。

これまでに大洪水が起きて社員の大半が帰宅出来ない事件や、顧客管理システムがダウンして納品直前のデータが消える事件など、色々なトラブルを経験した。その度に、いつも冷静に問題解決しているインド人の上司に驚かされた。我々日本人がパニックになるような事態でも、彼らは驚くほど冷静に状況把握と対策を考え始める。「なぜこんな事が起きたんだ?」という議論や犯人探しは一旦横に置き、今何をすべきかに当事者を集中させ、解決に向けて知恵を絞るのだ。

トラブルが解決したあとは改善策に乗り出す、ここからがさらなる彼らの真骨頂だ。徹底的に問題を追求して、一部の修正では飽き足らず、嬉々としてゼロベースで議論し始め、システムの総取っ替えに乗り出すのである。仮に一時的に業務に障害が出る可能性があっても、これから行う改善が最善であると思えば躊躇なく判断する。そんな場面を何度も見てきたし、影響を被ったことも1度や2度ではないが、一時的には迷惑に感じても、あとで振り返ると確かに前よりよくなっているのだ。

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7回にわたって、インド人リーダーの7つの特徴について詳しく体験談を書いてきた。まとめの代わりに、この7つの特徴を貫く、私が現代のビジネスの世界において最も重視するインド人リーダーの特徴について述べておきたい。

インド人経営者は、社員の多様性を包摂する能力が高いのだ。日本人とインド人は、人を敬う、年長者の話を聞く、和を重んじるといった人間関係を大切にする文化は似ているが、葛藤やトラブルに対応する時のアプローチがかなり違う。人は皆違うという前提に立って、考え方の違う人たちを掌握し、対話を通じて葛藤を解決するスキルに長けている。経営者として高い成長ターゲットを掲げた時には、抵抗する人を忍耐強く説得して会社の目標についてこさせる。この圧倒的なコミュニケーション能力が、多様性を重視するグローバル社会で彼らが経営者として必要とされ、成功している大きな要因の一つなのではないか、と私は仮説を立てている。

英語を何不自由なく操れることもインド人の大きな武器ではあるが、それだけではない。グローバル企業の経営者に求められるのは、高い専門性や職能ではない。人の心を掴んで動かす総合的な人間力だ。多種多様な人々が国境を越えてともに仕事をする時代に、彼らが名だたる企業のトップに名を連ねているのは偶然ではない。彼らに共通する普遍的な成功要因はなんだろう?それはどんな背景から生まれたのだろうか?日本の経営者はそこから何が学べるだろうか?

このブログでは、実際にグローバルに活躍するインド人経営者にインタビューを実施して、その謎をさらに深掘りしていくつもりだ。今後の更新をお楽しみに。

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