自分のまわりに「人から好かれる人」はどれぐらいいるだろう?
今日は『ソーシャル物理学 - 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』(著:アレックス・ペントランド)より「信頼が組織の能力を高める」を読みました。
自分が知っていること、誰かから聞いたことを共有する。グループの中では情報やアイデアの流れがありますが、ともすれば近しい人の間をグルグルと巡ってしまい、遠くまで伝わらない可能性があります。もし、その情報やアイデアを必要としている人がいて、その人に何かしらの形で伝われば助けになるかもしれません。
ネットワーク内部の情報やアイデアの流れを望ましいものにするためには、ネットワークの形を整えること、ネットワーク内部のつながりの強さを調整することの2つが重要になります。
ネットワークの形を整えるとは、適度に密で適度に粗(スカスカ)であり、かつ網の目状であること。組織構造は上から下への分岐(ツリー)をとることが多いですが、横のつながりも等しく必要です。
そして、誰かから受け取った情報を他の誰かに共有する。具体的な行動を取るためには「つながりの強さ」が重要です。つながりが強い誰かをイメージできれば「もしかしたら役に立てるかもしれない」と思えるからです。
「つながりの強さ」には「信頼」と「直接的な交流の頻度」がカギになると著者は述べています。
「社会的絆のおおよその強さを測る尺度として、社会的接触の頻度が使える」
たしかにそうかもしれません。例えば一度も話したことがない人に対して、いきなり何かのお願いをするのは、相手からすれば少なからず抵抗を感じるかもしれません。まず「自分は何者か」を相手が理解する。そこから自発的なコミュニケーションが生まれるのだと思います。
「自分は何者か」が相手に伝わるためには「直接的な交流の頻度」が重要というのは実感とも合います。直接話したことがあるかどうか。しかも仕事の話だけでなく、時には雑談などを通じて自分の多面性が伝わる。自分は何に関心があって、どのような考えを持っているのか。
信頼や交流の頻度を下支えるのは「自分をさらけ出せる環境」ではないかと思えてきます。
レッドバルーン・チャレンジは全米に設置された赤い風船の位置を最短時間で特定する取り組みです。著者は位置を特定した人物、その人物を紹介した人にそれぞれ報酬を与えることとした結果、他のどのチームよりも早く全ての風船の位置を特定することに成功しました。
「無料の宝くじを共有するような感覚」という追跡インタビュー結果は興味深く、特定の誰かに向かって発信するというよりは「受け取ってくれたらいいな」ぐらいの感覚のほうが情報やアイデアはネットワーク上を上手く流れていくのかもしれません。
「参加者が自分の友人を紹介したのは、彼らに対する好意として行っていた」というコメントを参照すれば「人から好かれる人」が多いほどネットワークの流れはスムーズになるのかもしれません。
「職場の友人や母親を怒らせたくない」
中長期的に良好な関係を築き続ける。それは決して無条件に相手に迎合することではないと思います。相手への尊敬・配慮を欠かさない中で健全に意見を交わし、個の独立性と他者への依存関係のバランスを取ること。
特定の誰かの意見に依存してしまう、すなわち意見に偏りが出てしまうと、グループとして望ましい判断・行動を取ることができません。
つかず離れず、それでいて全体としてつながっている。あらためて「人とのつながりのつくり方」に関心を持ちました。