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内省の生命性〜DNAと自己(Self)〜

誰しも一度は「DNA」という単語を耳にしたことがあるではないでしょうか。DNAは生物の存在を根幹から支える物質(高分子)で、Wikipediaを参照すれば以下のように定義されています。

デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid、DNA)は、2本のポリヌクレオチド鎖が互いに巻きついて二重らせんを形成しているポリマーある。このポリマーは、すべての既知の生物と多くのウイルスの発生、機能、成長、および生殖のための遺伝的命令を伝達する。DNAはリボ核酸(ribonucleic acid、RNA)とともに核酸と総称される。核酸はタンパク質、脂質、複合多糖と並んで、すべての既知の生命体にとって不可欠な4大生体高分子のひとつである。

Wikipedia

二重らせん構造をしているポリマー(高分子)で、その構造に様々な遺伝的情報が織り込まれている。「情報とは何か?」と聞かれると答えるのは一筋縄ではいかないと思いますが、生物や生命を紐解いてゆくと「情報=構造」という図式が浮かび上がってくる。そのことがとても新鮮に感じられます。

構造は平たく言えば「かたち」ですから、万物の「かたち」には固有の情報が織り込まれている。かたちに注目することで、物事に内在する固有性が浮かび上がるのではないか、と。そんなことを思うわけです。

「生命とかたち」

中村桂子さんの書籍『生命誌とは何か』によれば、DNAには「複製・作用(生産・調節)・変化」という三つの機能があるとのこと。

自らで自らを作る。自らが自らに働きかける。自らが自らを変えていく。
つまり「自己(Self)」が生命を下支えているのだと気付きます。

自らの状態を自ら認識し、認識した自己の状態によって新しい状態に向かうために必要な物質を自ら作り、自ら化学反応を起こしていく。その様子は、まるで「内省」のようだな…と思うのです。内省という営みには「生命性」が内在している。

慌ただしい日常の中では時間に流されてしまいがちですが、ゆっくりと静かに落ち着ける時間を作って内省する。日常に生命性を取り戻す大切なヒントを見つけました。

DNAは、「複製する」「タンパク質合成のための情報を出してはたらく(この場合、単にタンパク質を生産するだけでなく、必要な時に必要な場所で必要なタンパク質をつくるという調節のための情報もあり、これが生物を生物らしくしている)」「変わる(これには、生殖細胞での場合と体細胞での場合があって、前者は子孫に伝わって、ひいては進化につながり、後者は一個体での病気や老いに関わる)」の三つの機能をもっています。三つしかもっていないといってもよいかもしれません。

中村桂子『生命誌とは何か』

しかし、この機能がすべて、DNAという分子だからこそできることであり、しかもこれで、私たちが生きもののふしぎと感じる巧妙な現象の基本をすべてまかなっているのですから、やはりDNAは面白い物質です。くどいようですが、DNAは物質です。これが生きているわけでもなんでもない。しかしこれが細胞の中ではたらき始めると魅力的なことをやってくれるわけで、物質なのについ面白いなどという形容詞をつけてしまいます。遺伝子に生命現象のすべてを還元して説明しつくそうと研究者が張り切ったのは当然です(私も最初はそう思いましたが、今では少し考え方が変わってきています。その変わったことを伝えるのがこの本の目的です)。

中村桂子『生命誌とは何か』

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