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形と情報〜目に見える以外のかたち〜

「構造(かたち)の変化は情報である」

生物の成り立ち、仕組みを学ぶと何気なく使っている言葉が新鮮に感じられてきます。その一つが「情報」です。情報とは一体何でしょう?

「受容体」とは細胞外からの物質を受け取るタンパク質のこと。物質を受け取ると受容体の構造(かたち)が変化して、その構造が「変わった」ということがシグナルとなって、情報が細胞内に伝わってゆく。つまり、かたちの変化が「情報を生成している」ことになります。

身近であろうと、身近でなかろうと、日常生活の中で私たちは自分を取り巻く環境の変化の中にあり続けています。変化に気づくことができなければ、生活はままならないでしょう。

環境の変化のみならず、自分自身の変化にもどれだけ気づいているだろう、と自問してみると、案外自分のことなはずなのに自分がよく分かっていないこともあります。

「かたち」に注目することは「変化」に気づく一つのきっかけ。

では「かたち」とは何だろう?という問いが浮かんでくるわけです。

一般論としての「かたち」ではありませんが、「感情の揺れ」もある意味では一つのかたちかもしれません。美しいなと感じたり、何か胸騒ぎがしたり。

目に見えるものだけが「かたち」ではない。

そんなことを思うのです。

さらに、物質ではなく情報を運ぶ、受容体(レセプターともいう)と呼ばれる膜タンパク質もある。まず、受容体の細胞外に出ている部分に、物質が結合する。この、受容体に結合する物質をリガンドという。リガンドが結合した受容体は構造が変化する。その結果、受容体の細胞内に出ている部分も、構造が変化する。その構造変化がシグナルとなって、何らかの情報を細胞内に伝えるのである。

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たとえば、EGFR(上皮成長因子受容体)という受容体がある。EGF(上皮成長因子)というタンパク質のリガンドが、EGFRの細胞外に出ている部分に結合すると、反対側のEGFRの細胞内に出ている部分に、リン酸基(H2PO4-)が付加されてリン酸化される。これが最初のシグナルとなり、それから細胞内で順々にシグナルが伝達され、最終的には核内にシグナルが伝えられて、細胞分裂が起きるのである。

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細胞膜に関しては、不思議なことがある。それは、細胞膜が何十億年ものあいだ、ほとんど進化していないことだ。その根拠は、現在地球にすんでいるすべての生物が、細胞膜としてリン脂質二重層を使っていることだ。つまり、現在のすべての生物の共通祖先が生きていた遥かな昔から、基本構造が変わっていないのだ。リン脂質二重層には、よほどよいことがあるとしか考えられない。

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