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反響という言葉の奥行き〜木霊するという言葉を通じて感じる物質性と心性の統合〜

「木霊(こだま)する」

物理的な音や声が空間において何度も反響すること。

その反響は物理的な空間のみならず、時に心の中で繰り返されてゆく。

木霊(こだま、木魂、谺)とは、樹木に宿る精霊である。また、それが宿った樹木を木霊と呼ぶ。また山や谷で音が反射して遅れて聞こえる現象である山彦(やまびこ)は、この精霊のしわざであるともされ、木霊とも呼ばれる。

Wikipedia

「反響」という現象を通じて、物質性を超えた心に対してある種の「空間性」や「広がり」を見出すことができるように思われる。

反響の対象は音だけではないかもしれない。

「心惹かれる」とは物事との共鳴であると記したのだけれど、目にしたことのある風景、空間に満ちた香り、広がる味わい、ふれた物事の感触や質感。

それらもまた、心の中で時間を超えて反響する。

そして、物理的な音は反響を繰り返しながらも、やがて力強さ(エネルギー)を失い、そして消えゆくけれど、心の中に起こる反響はむしろ繰り返されるたびにその力強さ、色濃さを増してゆくように思われる。

あらためて「反響」の奥深さ、射程の広さを感じるとともに、「反響する」という言葉を用いて様々な物事を述語的に統一してゆくことができるのではないだろうか。

そのようなことを思う。

水の色に心を動かされることがある。スニオン岬から見るエーゲ海の水は、ポセイドン神殿の白い大理石とは対比的な「青い水」であった。水分子は赤い光をよく吸収し、青い光をよく反射する。故に自然光で見る深い水は青く見える。色彩を持った浮遊物は、この水色と混ざり合って、独特の水の色をつくり出す。西芳寺の池の水は苔の緑が混ざった深みのある水色を見せている。豪雨のあとの鴨川は、泥水を含んで茶色に流れる。植物や動物が水中に繁殖するとき、水色が茶色や赤色または桃色になることがあるという。吉村信吉は『湖沼学』の中で、北海道の泥炭地にあるコーヒー色の湖、フィンランドの黄色い滝、アルプス山中の赤色の血湖(Blutsee)、あるいは硫黄細菌の繁殖によって桃色を帯びた昭和一〇年の浜名湖を紹介している。

鈴木信宏『水空間の演出』

激しくぶつかって、砕け散る水は白い。『栄花物語』は、白い水を、菊の花や雪、または雲になぞらえている。「落ちつもり 淵ともならん岸近み浪間に見ゆる菊の白露」「水の色ただ白雪と見ゆるかな誰晒しけん布引の瀧」「水上の空に見ゆれば白雲の立つ紛へる布引の瀧」

鈴木信宏『水空間の演出』

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